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英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜  作者: 駄作ハル
第一章

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44話 神算鬼謀[挿絵あり]

謝辞

友人による手描きイラストあり。描いてくれた友人Kに感謝申し上げます。

挿絵(By みてみん)




 目を開けるとそこは見慣れた裏庭だった。私の右には孔明が、左には両親や歳三の姿があった。


「ほう、これがレオの家ですか。立派なものですね」


 孔明はまじまじと辺りを見渡している。


 どこか楽しそうな孔明を、じっと周りの観客は見つめている。話こそ聞いていたが、未知の男を前に誰もがたじろいでいるようであった。


「こ、孔明、皆に挨拶を……」


「これは失礼しました。どうも、私はこの度レオの軍師として仕官することとなりました、諸葛亮と申します。よろしくお願いします」


 そう言うと孔明は羽扇を袖に仕舞い、そのまま両の手をゆったりとした袖の中に隠し、顔の前まで持ち上げ軽く頭を下げた。


「わ、私はレオの父であるウルツ=ウィルフリードだ。よろしく頼む……」


「私は母のルイース=ウィルフリードよ。これからよろしくね」


 父が一人称で「私」を使うのは公式な場面か緊張している時だ。


 その一方で母は孔明を暫し観察した後に、落ち着いた雰囲気で挨拶をした。恐らくは『慧眼』のスキルで孔明の能力を見抜いたのであろう。母の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。


「私はレオくんの家庭教師として雇われているシズネと申しますぅ……」


「おぉ、この世界には様々な人間が居るようですね。これは面白い……」


 孔明は初めて見る亜人のシズネを前に、特に恐怖や偏見を抱くことなく、むしろ興味津々といった感じでシズネを見つめていた。


「───それで、俺が軍師殿よりも一足先にこの世界に呼び出された土方歳三って者だ。護衛兼相棒みたいなもんだと思ってくれりゃァいいぜ」


「成程、雲長は既に有りと言うところでしょうか。頼もしい限りです」


 歳三という英雄に相棒と呼ばれ、私は鼻が高い思いだった。孔明も歳三の事を関羽の名前と共に評していて、互いに実力を認め合えそうでよかった。


「孔明。改めて、その力をウィルフリードの為に貸してほしい。これからよろしくだ!」


「えぇ。よろしくお願いします……」


 少々不器用な父を除き、その場にいる誰もがこれから孔明という男を迎えて新たな英雄譚を築くのだとワクワクした気持ちを抱えていただろう。父も、拳こそ交えそうにはないが、時間をかけて話していくうちに打ち解けてくれるだろう。




「あ、そうだ。孔明!こちらへ来る時に何か能力を授かってはいないか?」


 例えば、歳三はこちらへ来る際に強靭な肉体を手に入れた。その肉体と剣術から織り成すスキルは父と渡り合うほどだったのを良く覚えている。


「えぇ、光の中で天啓を得ました。……これは、少々理解するまでに時間がかかりそうですね」


「その扇からビームが出たりしちゃうのか!?」


「…………その「びいむ」とやらが何かは分かりませんが、少なくとも攻撃するものではありませんよ」


「そ、そうだよな……。ははは……」


 残念ながら扇で暴風を巻き起こしたりビームを発射したりして、『()()の力で()()』はできないようだ。




「───だいたい分かってきましたよ。どうやらこれは場所も時代も問わない、戦争やその軍略の知識ですね。まるで自分がその場にいるかのように、次々に頭に浮かんできます」


 歳三が身体的な力に対して、孔明は知識的な力か。やはり私の狙った通りに役割分担が出来そうだ。


「まさに天下一の軍師たる孔明に相応しい能力だな!……名付けて『神算鬼謀(シンザンキボウ)』なんてのはどうだ?」


「ふふ、なんと呼ぶかはご自由に。いやしかし、本当に面白い……」


 孔明は目をつぶりながらぶつぶつと呟いている。手に入れたばかりの能力を馴染ませる時間が必要なようだ。




「おいレオ、そういや俺には何もないのか?強そうな軍師殿のスキルを見てると、なんだか損した気分だぜ」


 何かを出したりするスキルと違い、強化系の能力だったため気が付くのが遅れたが、歳三はもうひとつのスキルを持っていたようなのだ。いや、後から覚醒し手に入れたのかもしれない。


「いや、その驚異的な回復力と頑丈な体はスキルによるものだと思う。……そうだな、名付けて『幕末ノ志士』とでも呼ぼうか」


 その能力は、窮地に陥った時に身体能力が大幅に強化されるというものだ。旧幕側に忠誠を捧げ戦い抜いた歳三に相応しい能力だと勝手に思っている。


「なんか適当な感じがするぜ……」


「いや、私のこの『英雄召喚』も実際にやってみるまでどんな能力か分からなかったんだ。ゲームと違い、現実はそんなもんさ」


「そんなもんかァ……」


 地味に見えるかもしれないが、こういう能力が一番強い。私の『英雄召喚』と違い常に発動可能であり、何より自分自身の生存性を上げられる。


 一対一では余程のことがない限り負けない。負けそうになればその高い身体能力で逃げ出せば、生きてさえいればいくらでもやり直せる。




「レオよ、父たちを置いていかないでくれ。さっきからよく分からない単語が沢山出てきて話に着いていけてないのだ」


「す、すみません」


 ビームやらゲームやら、この世界に無いものを口に出すのはあまり良くなさそうだ。


「───お待たせしました。だいたい能力の全容を把握しました。後程、御両親へも説明させて頂きます」


「た、頼んだぞ軍師殿……」


「ですが、その前に知りたいことが山ほどあります。レオ、まずは貴方から話を聞かせてください。それと書物もあれば嬉しいですね」


「了解した。屋敷の図書室で話そう。その方が早い」


「それは良いですね。では早速……」


 皆の注目をよそに孔明はスタスタと歩き出す。私も慌てて着いていき、屋敷への扉を開けて案内をする。


「あ、とりあえず今日のところはこれで!また明日きちんとお話します!」


 私は振り返ってそう言った。それは、きっとこの世界の事やファリア戦関係の説明で長くなるだろうと見越してのことだった。


「お、おう……」


「あまり無理しちゃダメよ……?」


「ほら、早く早く!」


 困惑の表情などもはや見向きもせずに、急かされるまま私たちは図書室に向かった。

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