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英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜  作者: 駄作ハル
最終章

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232/263

228話 新時代

 いつからこれらを施行するか。そこまで決めてやっと世界会議を終えることができた。

 全て終えるまで五日間かかったが、今後数百年の命運を左右する会議にしては短いものかもしれない。


「私の仕事はここまでだな。……後は頼んだ孔明」


「世界政府議長としての初仕事、お見事でございました。……了解しました。仔細お任せを」


「ありがとう。ではよろしく」


 孔明からお褒めの言葉を貰った私はスタスタと会議室を後にした。

 まだ書類作成や国際条約の公布、それに対応した国内法の整備などやるべきことは山積みだ。まあその辺は孔明とナポレオンがどうにかしてくれるだろう。







「私たちはこちらをやろうか。歳三、ルーデル」


「おう」

「了解した」


 私は二人を呼び別室へ移動した。

 この二人の役職──陸軍大臣と空軍大臣──を考えれば分かるだろうが、これからするのは軍事会議である。


「まず考えるのは軍の編成だ。貴族たちの軍を接収したから大規模な改革が必要になる」


「つってもよ、結局今各領土にいる兵は動かさないんだろ?」


「そうだ。例えばリーンの兵を皇都に配置して、ファリアの兵をエアネストに配置するなんて無駄なことはしない。基本はその領土の兵士はその領土に駐屯という形にする」


 結果として重火器を各領土に渡すことになるが、背に腹は代えられない。軍事力強化が最優先だ。


「なら考えるべきは有事での指揮系統だな」


「それも基本は貴族たちに引き継いで貰うこととする。その方が貴族にとっても兵士にとっても抵抗は少ないだろう。……ただし、貴族であっても指揮官の歳三やナポレオンの命令には従うようにするがな」


「それがいいぜ。勝手に突っ走られたら困るからなァ?」


「こっちを見るな。……だがこれは俺も賛成だ」


 ルーデルは肩をすくめるが、もう少し自重して欲しいものだ。


「ちなみにワイバーン竜騎兵や宮廷魔導師なんかはまだ使うのか?」


 ルーデルは私の考えを察したのか話を変えてきた。


「使えるものは使う。だがワイバーン竜騎兵はどうしようもなさそうだ。宮廷魔導師は絶賛各地域の魔法学園なんかに講師として出向き魔導師の育成に努めている」


 ワイバーン竜騎兵は所詮野生生物を従わせているだけなので竜人と比べれば戦力は劣る。更に爆弾の搭載もほとんどできない。


 宮廷魔導師は、そもそも技術の発展とともに魔法の使い道が広がっているので、そのプロフェッショナルとして彼らに寄せる期待は大きい。

 私の暗殺を防ぐために防護魔法なんてものを影で使ってくれている担当者もいるそうなので、実はいつもお世話になっている。


「ちなみにだが竜騎兵って名前、少しややこしくねェか?」


「そう言われるとそうだな。……だが地上はそのまま竜騎兵、空を特別にワイバーン竜騎兵で問題ないだろう」


 竜騎兵とは本来、馬の上から銃を放つ兵種のことだ。弓騎兵の銃バージョンという感覚でいい。

 銃が火を吹く様子が竜のようだから竜騎兵なのだが、こっちでは本物の龍(竜)がいるのでややこしい。


「呼び方はどうでもいい。装備の一新について考えるべきだ。特に軍服などは利便性や士気に関わる」


「となるとデザイナーや服飾職人と相談が必要になるか」


 銃器の発達により鎧が陳腐化し、布地の軍服が制式装備となるだろう。

 ただ、魔物やモンスターへの対抗手段を考えると、既に戦法が確立されている騎士や冒険者の戦い方も完全に捨て去る訳にはいかないので、多少は元の装備も残しておく。


 その軍服のデザインも拘るべきだ。ルーデルが言っていたように士気に大きく関わる。

 たかが服だろう、利便性が良ければなんでもいいだろうと思うかもしれないが、実はそんなことはない。


 日本でいうと、海軍飛行予科練習生、通称予科練では元は水兵と同じ軍服であったが、エリートであるパイロットの卵たちが一般の兵士と同じ軍服であることに不満を募らせちょっとした騒動があった。よって軍部は急遽例の「七つボタンは桜に錨」のデザインに急遽変更したということがあったのだ。


 またルーデルの出身、ナチス・ドイツの軍服はかのヒューゴボスがデザインしたものだ。

 漆黒の軍服には人々を支配するための威厳が込められており、また美大志望であったヒトラーの美的センスも影響していると言われている。


 そんな訳で私たちにも相応しい軍服や制服が必要だ。


「まあ黒を基調に私たちの国の旗に用いられる紫と金を使うといいだろう。また靴もしっかりとした革の軍靴を用意してやろう」


「いいセンスだと思う。更に指揮官向けにコートや帽子、護身用の拳銃なんかもあるといいな」


 今日はルーデルがやけに乗り気である。自分の所属していた近代的な軍に私たちの軍が近づいているからだろうか。


「俺からは軍刀の配給を要望するぜ。指揮刀とかな」


「まあ日本軍では刀も拳銃もあったが……」


 なんだか欲しいものが山盛りになりそうな雰囲気だったが、孔明出すの予算やデザイナー、技術者たちとの折り合いでどうするか後から考えればいい。


 私たちはああでもないこうでもないと言い合いながら、これからの軍組織について計画を立てていった。

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