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英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜  作者: 駄作ハル
最終章

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231/263

227話 世界会議

『人類共同世界政府』設立の宣言後から数日は緊張の走る日々であった。


 しかしルーデルの心配は杞憂に終わった。

 大規模な反乱は発生することなく、一部の過激派や反体制派によるテロ事件などは起きたがすぐに保安局によって鎮圧された。


 それからまずは点数稼ぎの時間であった。


 勝利に酔いしれる帝国民はともかく、王国と協商連合の人々は敗北と国体の崩壊に絶望していた。

 そこで戦禍に巻き込まれた街には帝国の最先端技術の粋を集めた工業製品を支援として送り、破壊された建物の代わりに工場などの建設を約束した。もちろん、それらと並行して経済的支援を行い、賠償金請求などは行わない。






「──孔明、準備はできているか?」


「はい。全員到着されています。書類に書記官も既に」


「では行こうか」


 前の世界で世界政府と呼べるシステムを備えた組織はEUだけだったが、国連もそれに準ずる役割を果たしていた。

 そして国連では世界人権会議のような、「世界会議」を行い世界各国と共通の理念や考えの擦り合わせを行っていたのだ。


 それと同じく、我々も世界規模での会議を行わなければならない。


 私は臨時の世界政府組織を皇都に設置した。まあ世界征服したのだから異論はないだろう。


「……おはよう諸君。朝早くからお集まり頂き感謝する」


 皇城の中に他国の人間がこれ程集まるのは歴史上初めてではなかろうか。会議室の巨大なテーブルの円周を全て人間で埋めつくしている。

 各国の代表はそれぞれトップ二十人前後で招集した。つまりざっと八十人はいる計算だ。


 トップ二十人という内訳は我々でいうところの各省庁の大臣クラスの人間である。

 ちなみに本格的な問題がありそうな敵国のトップはサクッと戦時中に暗殺しているので心配ない。


 ちなみに亜人・獣人の国々の代表では、竜人のハオラン、ドワーフのザークとシフ、エルフのシャルフなどが帝国の代表と重複しているが、あくまで向こうの代表という形での参加として。

 つまり実質的には帝国側の人間の割合が高いことになっている。


「では会議を始めさせて頂こう。……議長は私で良いかな?」


 帝国と亜人・獣人の国々の人間はもちろん、王国と協商連合の代表もしぶしぶといった様子で頷いた。


「ありがとう。それでは本題に入ろうか。まず最初に考えるべきはこの世界政府及び世界会議の運営についてだ。……世界政府のあり方を決めるために会議の進行について先に決めよう。基本は個人が自由に意見を出し合い、それについて議論を深め、最終的には多数決で決めたいと思う。それでよろしいか?」


「──いや、それでは人数の多い帝国側が有利ではないか。全会一致が妥当だろう」


 王国の代表の一人が私に異を唱えた。


「それでは話が進まない。あくまでも国という概念を捨て、個人の良心に従い投票して欲しい」


「…………」


 どうにも煮え切らない様子だが、ここで争うのも時間の無駄だと諦めてくれたようだ。


 全会一致とはつまり裏を返せば全員が拒否権を持つということだ。

 拒否権を一人でも持っていれば会議が全く進まず、そもそも会議すら開かれない。そんなこの世の終わりみたいな状態を見てきた私には全会一致などという選択肢は鼻からなかった。


「では話し合いを始めようか。まずは世界政府の予算についてだ。これは各国の一年間における収入から一定割合を供出という形にしようと思う。金額の大小ではなく、同じだけの重さを支払うのだ。……反対意見はあるか?」


 誰も口を開かなかった。

 帝国と王国という大国と、亜人・獣人の国々や協商連合各地域という小国が同じ金額は出せない。割合ならば公平でいいだろう。


「では賛同ならば挙手願おう。……ありがとう。では多数決の結果、全会一致で一定割合での供出という予算形式にしていこう。では次にその割合についてだが──」


 といった具合に、私たちは一つ一つ足元を踏み固めるように世界政府という組織を組み上げていった。


 重要な所は国際条約にまとめられている。

 亜人・獣人の差別禁止。(特に王国における)奴隷制の廃止。紛争に対する平和的な手続き。……等々、主に人権に対する部分がかなりのウェイトを占めている。


 そして最も議論が荒れたのが元の世界でいう「国連軍」についてである。

 対魔王領や紛争の解決に軍事力は必須であるが、強制的に他国の兵士を徴集するというのはこの世界では全く新しい考えであった。


 正直に言って王国は我々が征服したのだから、彼らの軍隊は全てこちらの思うままにもできるのだが、それではあまりに乱暴である。

 そして帝国の軍隊──元の国有軍に貴族の私兵を加えた数──百万全てが実質的な国連軍であるが、国連軍の役割的に帝国を抑えるだけの兵力が必要となる。


 最終的に帝国から五十万、王国から五十万、協商連合各地域から合計三十万、亜人・獣人の国々から合計二十万で国連軍とすることになった。

 そしてこの計百五十万の国連軍は、この世界では「世界軍」と名付けられた。


「……では次に経済連携協定についてだ。現在は戦後復興の意味で帝国が技術や資金提供を行っているが──」


 こうして会議は連日に渡って続いた。


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