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英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜  作者: 駄作ハル
第四章

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204話 銃は剣よりも強し

「……じゃあ、()()()()は見ていかれませんか?」


「いや、そちらも見るよ。……綺麗事だけでは人々を救えないのもまた事実だ」


 ミラの口振りからすると、例のものとは兵器であるようだ。

 ルーデルやナポレオンがどんな兵器を発注しているのかは私も把握しきれていない。どんな兵器がどこまで再現されているのだろうか。


 ヘクセルはまだまだ魔導具について語っていたが長くなりそうなので、後は量産化を頼むと言い残してそっと切り上げた。

 それから私はミラの案内で製造産業局に繋がる渡り廊下を抜け、試作兵器のある工房へ向かった。








「……やあシフ、ザーク。調子はどうだ」


「こいつァ陛下、こんな薄汚い所へどうしたんですかい」


「危ないから離れてくださいよ!」


 工房というより小さな工場程もある規模の製作所では、至る所からトンテンカンテンという子気味良いハンマーで鉄を叩く音や爆発音が聞こえてきた。


「例の兵器の進捗を見に来たんだ。どこにある?」


「ああ、銃と新型の大砲だな。両方試作品は出来ている。銃は隣で射撃実験中だ」


 銃と大砲……。それなら恐らくナポレオンのリクエストだろう。

 先程から聞こえてきていた爆発音の正体は銃だったのか。


「どれどれ……」


「──はっ、これはレオ様!」


 5mぐらい先に置かれている鎧を着せた木のマネキンに銃を構えていた兵士が私に気が付き敬礼をする。

 何となく見覚えのあった彼はタリオの部隊にいた弓兵だっただろうか。


「鎧に向けて実験中か。どうだ、仕上がり具合は」


 以前歳三の提案で銃を試作した時は、生産と実験の施設が小規模であったこと、火薬の技術が発展段階であったことなどが理由で威力が中途半端なものしか作れていなかった。

 あの時は頓挫した計画だが、今の財力と大量のドワーフたちの技術が合わさればどうだろうか。


「はい。二種類試しているのですが……」


 まず彼は元から手に持っていた銃を私に手渡してきた。


「こちらは安定した威力を目指したものです。全金属製のフルプレートアーマーは抜けませんが、そちらの的にしている革の胸当てなどなら容易に致命傷を与えることが出来ます」


「これでも以前よりは威力も上がっているんですよ」


 ミラがそう補足するこの銃はフリントロック式のマスケット銃のようだった。

 ルーデルの時代の現代的な銃は諦め、ナポレオンの時代の銃にしたようだ。確かにこれは以前までの火縄銃よりは幾分かマシなものになっているだろう。


「……撃ってみてもいいか?」


「はいもちろんです! ではまず構え方からお教えしますね──」


「いや大丈夫だ。それより、これはもう装填されているのか?」


「え、あ、はい。後は引き金を引くだけですが……」


「ふむ……」


 私は銃身に手を添え、的、銃口、視線が一直線になるように銃を構える。

 そしてゆっくりと息を吐きリアサイトとフロントサイトが的に重なった瞬間、引き金を引いた。


 撃鉄の先に付けられたフリントが、カンッと火蓋の上に落ちると、シュボボボと伝火用の火薬に点火し、間もなくズバン! と派手な発砲炎を出しながら弾丸が発射された。

 反動はそこまで強くない。


 煙が晴れて的が見えるようになると、弾丸は革の胸当てをしっかりと貫通し、中身の木のマネキンの中心がバキバキに砕けていた。


「お、お見事ですレオ様……」


「次はあのフルプレートに撃ってみよう」


 楽しくなってしまった私は射的感覚で次の的を要求した。


「ダメですレオ様。あの鎧の中心に凹みが見えますか? この銃ではあれが限界なのです。そして鎧に弾かれると弾が跳ね返って危険なんですよ」


「……まあ確かにこの室内で跳弾したら危ないな」


「ですのでこちらのより威力の高い方を使います。ですがこれは暴発の恐れもある諸刃の剣ですので、レオ様の身に万が一があってはいけません。私が実演するので少し離れて見ていてください」


「なるほど。ではそうしよう」


 私がそう言うと彼は手際よく一回り大きい大きい銃に火薬や弾丸を装填し始めた。

 前装式である上に火薬や魔石粉末配合の発射薬などを一々手作業でやらなければいけないので、連射性能は全く期待できない。手馴れた様子の彼でも一分近くかかっている。


「……ではいきます。耳を塞いでいてください──」


 言われるがままに私が耳を塞ぐのを確認すると、彼はフッと顔付きが変わり鋭い視線で的を捉えた。


 そして彼が引き金を引いた瞬間、先程とは比べ物にならないほどの轟音と爆炎が私に襲いかかってきた。

 思わず顔を逸らし、数秒経ってからまた前を見ると黒く焦げた銃と、ボロボロになった手袋を脱ぎ捨て煤まみれの頬を払う彼の姿があった。


「……これは……常用するには危険すぎるな」


 銃から放たれた弾丸はフルプレートアーマーに巨大な穴を穿ち、内部の木を木っ端微塵に吹き飛ばしていた。


「これは至近距離だからこんな大袈裟な威力ですが、通常の交戦距離となれば最低でも逆にこれだけの威力がなければ敵に致命傷を与えるのは難しいです」


「……弓の代替品としてはこっちの威力の低い方で十分だな。その大きい方はそのうち暴発しそうだ。……まあ詳細はまたナポレオンやルーデル、歳三と話してくれ」


「おう。まだ色々ドワーフの間でも話し合ってみる」


 とは言え昔ファリアで作ったものよりは確実に完成度が高まっている。マスケット銃兵による戦列歩兵が見られるようになる日も近いかもしれない。

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