いつかの景色
血と硝煙の匂いが漂う戦場。辺りに響き渡るのは兵士の呻き声とそれをかき消すような大砲や爆裂魔法の轟音。
「レ、レオ様!伝令申し上げます!左翼騎兵部隊壊滅!既に二個師団を失う大損害とのこと!至急撤退命令を!」
血と泥にまみれた鎧を纏った伝令が私に告げる。
「構うな!左翼部隊には進軍を停止するように伝えろ!その代わりに一歩も引くな!死守命令だ!この戦いの敗北は人類の敗北と思え!逃げることなど敵が許してくれないぞ!」
あぁクソったれが!何故魔物たちがこんなに統率の取れた戦いをするのだ!やはり魔王を名乗る者は──。
「皆の者!持ちこたえろ!敵の損耗も激しいはずだ!この反攻作戦さえ成功させれば敵は攻め手を失い撤退するしかなくなる!」
私は刀を抜き腕を天高く掲げる。
「全軍突撃ィィィィ!!!」
「ウォォォォォ!!!」
腕を振り下ろすと同時に周辺の部隊から鬨の声が広がる。
「……『英雄隊』、覚悟は出来ているな?」
そう言い、彼らの方を一瞥する。そこにいる誰からも、その目には絶望の文字など感じなかった。
「勝てるか勝てないか、やってみなければわからない。俺ァもう、勝敗は考えない。ただ命のある限り戦うだけだ!」
「将帥、勇ならざるは、将なきに同じ。天命は下されました」
「早く命令をくれ。このまま帰国する気にはなれない」
「吾輩の辞書に不可能の文字はない、とでも言っておこうか?」
人類は決して負けない。そう確信した。彼らと共にある限り、万に一つも敗北など存在しない。
「今こそ人類の命運を賭け、雌雄を決する時だ!」
なぁ魔王よ、見ているか?これが人類最強だ。人類は、決して負けない。
私は必ず、この世界を手に入れる。