表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実はいつも夢から  作者: aciaクキ
16/35

16 夢から覚めて

「許さないっ!許さないっ!許さないっ!!ああああ!」


 夜、電気もつけていない暗い暗い部屋の中、母親に心配そうな眼差しを向けられながら近所のことも考えずに叫びちらしていた。

 元凶はあの男、竹浦司を名乗っていた私の父親を殺した殺人鬼でもあり母親をたぶらかした人間のクズ。今すぐにでも殺してやりたい憎しみに溺れかけていた。

 お母さんは無事に退院し、ようやく精神も安定してきていた。それでも私の腸は煮えくり返っていた。竹浦司を許さない、ただ殺すだけじゃ足りない。不幸の絶頂に落としてやらないと気が済まない。


「そうだ」


 とてもいいことを考えついた。あいつが大切にしているものを壊していけばあいつも絶望してくれるだろう。それにはまずは


「子供を殺そうかな……」

「玲奈いまなんて?」

「ん?なんでもないよ」


 うっかり声に出ていたらしい。聞かれなくてよかった。


「顔洗ってくる」


 とにかく今は一人でゆっくり考えよう。洗面所につき鏡を見る。


「はは、酷い顔」


 さっきまで許せなくて吠えていた人間とは思えないほど、邪悪な笑みを浮かべていた。これはもはや狂気と呼べる有様であった。きっと、果たす道が見つかったからだろう。

 顔を洗ってその足で自分の部屋に戻る。その勢いでベッドに倒れ込むとどうやって探そうかと思索にふけた。ただ単にネットで調べても無理だろう。やはりここは、お母さんから聞き出すのが手っ取り早いだろうか。

 そう考えながら、意識が段々と遠のいていった。

 目が覚め、居間に行くとお母さんがテーブルに突っ伏していた。手元や周辺には日本酒やビールなど沢山のお酒が無造作に置かれていた。私の席の前にはあ母さん作ってくれたのであろう夜ご飯が置かれていた。


「あれだけお酒は飲まないでって言ったのに」


 やけ酒しないとやってられないと言われているようだった。まだマシにはなったものの、それでもやはりダメージは計り知れない。

 夜ご飯を食べようと自分の席に座る。


「ねえ、お母さん」

「ん……」

「あの男が住んでる場所知らない?」

「………」

「お母さん」

「……」


 答えてくれないようだ。寝ているのか、教えたくなくてわざと黙っているのか、言いたくないだけなのかわからない。おとなしく食事を始めようとすると


「……横浜」

「え?」


 心地よくなさそうな寝息を立てながら完全な眠りについたようだった。酔って無意識に答えたのだろうか。


「横浜か……」


 私達が住んでいるのは千葉だ。気軽には行けない場所だった。それでも全く何もできないわけじゃない。都道府県名で言われなかっただけだいぶ絞れたから良かった。


「ありがとうお母さん」


 ボソリと、自分にしか聞こえない声でつぶやいた。

 これで明日からの行動の方針が決まった。明日からはどれだけ時間が掛かるかわからないがあの男が住んでいる場所を特定する日々が待っている。引っ越すのは、特定後だ。

 考えを巡らせながら、ベッドの上で意識が途切れていく。


「んん」

「あ、玲奈。おはよう」


 声がする方を向くと、自分の右隣で微笑みかけてくる夢汰がいた。その姿に安堵し、自然とこちらの頬も緩んでしまった。


◆◇◆◇◆◇


「きゃっ!」


 突然視界が変わって驚いた。さっきまで教室でお勉強をしていたのに瞬く間に知らない場所にいた。座った体勢だっから尻もちをついてしまった。


「いたた、ここどこ?」


 直ぐ側に川が流れていた。考えるまでもなく河原にいるのがわかった。何処の河原なのかはわからないが、教室から知らないうちにここに来ていたのは紛れもない事実だった。

 これがもう少し成長していたら、現状を整理して落ち着いて対処ができのかも知れない。しかし今は小学生。不安と恐怖に心が一瞬にして満たされ、目から涙があふれるように出てきた。


「ううう、わあああん。わああん。んぐ、ひぐ」


 大きな声で、周囲に人が居たのなら必ず聞こえるはずの声量だった。にもかかわらず、誰も様子を見に来ようとも、来る気配すらしなかった。今ここにはりな以外誰もいないかった。

 散々泣いて落ち着いた頃、ようやく現状の打開を考え始めた。けど、原因も理由も何もかもわからない中、どうやってもとの場所に戻るんだと悩んだ。

 

「よし」


 何もわからない今、自分が出来ることは周囲に探索だ。何があるか分からない以上下手に動くのは得策じゃないかもしれないが、何もせずにじっとしているのも危険な気がした。

 とりあえずは川に沿って歩くことにした。しばらく歩いた後、後ろを振り返るとある違和感に気がついた。


「ここって」


 なんとなく見たことがあるような気がした。けどこんな場所には来たことがない。必死に記憶を弄っていると、ストンと心に落ち着くような結論に至った。


「資料集の写真」


 ここに来る前は理科の授業だった。ちょうど内容が河川で、資料集で河原の写真を見ていたときだった。そして、今見ている光景はその写真と全く同じだった。


「もしかして……」


 子供だからこそできた柔軟な発想。非現実を、非現実と割り切ることなく本気で考えるその考え。この河原の写真を強くイメージしたからここに来たのではないかという可能性がよぎる。そこから行き着く解決法は、教室を強くイメージしることだった。

 可能性があるならやってみるに限る。目をつぶり、元いた教室の情景を思い浮かべる。リアルなものにするために動作をつけて想像したりする。

 足の感覚が変わったように感じ、恐る恐る目を開けてみると、河原ではなく教室にいた。突然居なくなって、突然現れたらクラスの人も先生もびっくりするだろうと思ってキョロキョロと周りを見渡すと、誰もこちらを見ておらず、先生の話をしっかりと聞いているようだった。

 私が居なくなって戻ってきたのに気が付かないわけがなく、少し不気味さを覚えた。


「ねえ、私居なくなっていたよね?」


 たまらず隣の席の人に聞いてみた。


「ん?ずっとそこに座ってたじゃない。なあにい、寝てたのお?」

「え?」


 想像とは違った返答に呆然とした。確かに見知らぬ河川へ行っていたはず。資料集を開いて写真を探してみると、やはり同じ写真が写っていた。

 知らず知らずに寝ていたのだろうか。それにしてもとてもリアルな夢だった。とりあえず今は夢を見ていたことにして、後で色々と試してみようと思った。

 授業が終わるチャイムが鳴り、それぞれが思い思いに立ち上がる。私もトイレに行こうと立ち上がった。


「りなちゃん」

「どうしたの?」


 呼び止めたのは友達だった。


「服、お尻のところ汚れてるよ?どうしたの?」

「え?」


 首を後ろに向けて服を引っ張り、汚れを見ようとする。触ってみても、少し湿っていて、汚れているのがよくわかった。

 この汚れは、最初に尻もちをついたときに付いた汚れだった。


「本当に……」


 本当にあの河原に行っていたのだった。

 視界は暗転、ぐるぐると頭をかき乱されるような感覚に陥り吐き気がした。直後、瞼に光を感じて目をゆっくり開ける。視界の先にはお兄ちゃんと玲奈とKとか言う男が椅子に座って話していた。


「りな!」


 お兄ちゃんが真っ先に気づいてくれて、少しうれしく感じた。いつもなら見ない懐かしい昔の思い出。それを夢で見た。その話をするべきか少し悩みながら椅子から皆のいるところへ立ち上がっていった。


◆◇◆◇◆◇


 起きた直後に隣で夢を見ている玲奈の方に目を向けじっと見つめていると、まるで視線に気がついたように玲奈が目を開けた。そしてゆっくりとこちらを見る。少し気恥ずかしさを感じたけれど、無事に起きてくれたことに安堵し、微笑みかけると、玲奈の方も微笑み返してくれた。


「おはよう二人共」

「あ、おはようございます。K」

「おはようございます」

「うんうん、二人共いい夢は見れたかな?」

「わざと言ってます?」

「いやわざとじゃないけど、寝起きはそういうのが定石かなってさ」

「いい夢じゃ、なかったですよ」

「私もです」

「ま、モニタリングさせてもらってるから内容は大体分かるけどね」

「こんな会話前回もしましたよね」

「したね」


 毎回こんな事をするのだろうか。テーブルに移動し後ろを向くと、りながすやすやと寝ていた。


「りなちゃんはまだ起きてないみたいだね。そんなに心配かい?」

「はい、自分の妹ですから」

「いい兄弟愛だね。心配しなくても目をさますよ」

「そうですね」

「そういえば助手さん、髙野さんはどこにいるんですか?」

「彼は別室で研究しているよ」

「そうなんですね」

「この部屋は僕専用の部屋みたいなものだしね」


 パチンとKが指を鳴らすと、テーブルの上にお茶とお菓子が出現した。


「便利ですね」

「だろう」

「「じゃあ、いただきます」」


 お茶とお菓子に手をつけ始めると、Kが話し始めた。


「今回も、夢汰くんの能力の影響を受けたみたいだね」

「はい。過去を見ました」

「夢汰くんはいつも通り過去と未来を見たのかな?」

「はい。今回も未来は少し先のものだと思います」

「そうみたいだね。そこらへんの話も、りなちゃんが起きてからしようか」

「はいって、りな!」

「噂をすれば、だね」


 後ろを向くと、りなが目を覚ましていた。急いでかけより、大丈夫かと声をかける。ゆっくりとテーブルの方に移動し、Kにお茶をお願いする。


「さて」


 りなが落ち着いたところでKが切り出した。


「君たちそれぞれの話をしようか」


 その言葉を皮切りに、第二回能力調査結果が公表された。

最後まで読んでくれてありがとうございます!次話もお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ