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現実はいつも夢から  作者: aciaクキ
14/35

14 夢汰とりなと司と七海と

 目を開くと目の前には小さな社があった。右手には本を持っていて、左手にはほのかなぬくもりが感じた。左を向くとこちらをを見つめる玲奈と目があった。急に顔が赤くなって顔をそむけられる。


「どうしたの?」

「な、なんでもない!」

「恥ずかしがり屋だなあ」

「う、うるさい!」


 そっぽを向いた横顔が赤く染まっていたのを見逃さなかった。小さな幸せに浸っていると、ふとなんとなしに感慨深くなった。


「……ちゃんと戻って来れたね」

「そうね。それにしても本当に時間がちょっとしか進んでない」

「ホントだ。やっぱりあの空間すごいな」

「この後どうする?夢汰くん」

「どうしようかな。時間はまだまだたくさんあるし」

「あるし?」

「デートの続き、しようか」

「で、デートって…もう」

「いや?」

「嫌じゃ、ない」

「決定!ここにいても時間が過ぎるだけだ。今すぐ行こう!」

「ちょちょ、わかったから引っ張らないでー」


 本を社に戻して走り出す。デートとなれば時間が惜しい。早く行かないとな。


◇◆◇◆◇◆


「はーあ。楽しかった」

「うん!とっても楽しかった」


 時間は6時を回っていて、そろそろ帰る時間になっていた。相談した結果、夜ご飯は家で食べることになった。

 玲奈を家まで送っていた。


「なにげに玲奈の家に行くの初めてだな」

「あ、本当ね。でもマンションだからそんなに広くないよ」

「そうなの?」

「そうよ」

「今度家に入っても良い?」

「うーん、考えとくわ。お母さんにも相談しないとね」

「お母さんって入院してるんじゃ?」

「それはだいぶん前の話よ。今は元気に仕事もしてるし、家事もしてくれてる。私が今こうして笑っていられるのもお母さんと夢汰くんのおかげなんだから」

「照れるな」

「えへへ。あ、着いたよ」

「ここが玲奈が住んでるマンション?」

「そ、ここよ。ここからは一人で大丈夫よ」

「そう?わかった。あー明日もKのとこに行きたかったんだけど、行けないわ」

「どうして?」

「能力家族会議を開くから」

「ああ。なら、仕方ないわね。じゃあ、明後日ね」

「ああ。また明後日な」

「ばいばい!」

「じゃあな!」



「おっそーい!!」

「ぐはぁ」

 

 帰宅するやいなや、妹による攻撃をもろに受けてしまった。ぶつかってくる瞬間が気づかなかった。原因は帰宅時間の遅さだった。時間は7時を大きく回っていた。


「ごめんよりな」

「どうせ彼女さんとイチャイチャしてたんでしょ。ふん!」

「そんなことないから機嫌を直してくれ、な?お土産買ってきてるから」

「そんなお土産で……か、か、かすてらー!」

「ああ、りなが好きなカステラを買ってきたぞ。これで許してくれるか?」

「ま、まあ仕方ないわね。次はないからね!」


 可愛らしい捨て台詞を聞いてゆっくりと家に入る。正直疲れたからこのまま布団にダイブしたかったが、ご飯をたべないわけにはいかないから、着替えてリビングに入っていった。


「おかえり、夢汰。随分楽しんできたのね」

「うん。楽しかったよ」

「夢汰、どうだった?」

「うん、話を沢山聞けたよ。それについて話したいことがあるんだ」

「わかった」

「それもこれもご飯を食べてからよ。樹紗弥きさやのことだから大体の話は想像できるけどね」

「樹紗弥?」

「七海、それは言ってはいけないことだよ」

「え?はっ、そうだったわ!」

「樹紗弥ってもしかして、Kのこと?」

「し、しらない!関係無い人じゃない??」

「……まあ、そういうことにするよ」


 相変わらず美味しいご飯を完食した。もう夜遅いから話は明日することにした。もともとその予定だったけど。


◆◇◆◇◆◇


「りなーこっち、おにいちゃんの方においで」

「あーうあー」


 はいはいしながら近づいてくる天使の姿があった。一度、二度まばたきをするうちに徐々に近づいてくる。


「ほーら、あとちょっ、と?」

「あう?」


 首をかしげるりなの姿があった。それも自分の腕の中でいつの間にか抱きしめられていた。


「おーはいはいはやいなーりなは」

「きゃっきゃっ」

「よーしよーし、かわいー」


ガチャ


「あ、パパママおかえりなさーいー」

「ただいま、夢汰。りなと仲良くしてた?」

「うん!」

「うあ!」

「そう、それなら良かったわ」


 お父さんがりなを持ち上げる。


「よーしよしよしかわいいなあ、りなは」

「ずるいわよパパ。私にも抱っこさせて頂戴」

「はいはい、ママもりなが好きだなあ」

「当然でしょ」


 はい、とお父さんがお母さんにりなを手渡そうとする。まばたきのうちにりなはお母さんの胸に抱きついていた。お母さんが腕を丸めるのと、りなが胸に抱きつくタイミングがあってなかった。突然のことに驚いていたものの、特に疑問に思うことなく抱っこする。


「かわいいなあ、りなは」


 みんなして、幼くとても愛らしいりなを甘やかし続けた……



「そんなことがあったのか。相変わらずだなKは」


「俺の能力はな……」


「そんなの扱ってたの!?」


「私の能力はねぇ……」


「いままで黙ってたんだけどね……」


「どうして言ってくれなかった……」


「俺たちもなんとかしないと……」


「……できないじゃない……」


 酷く断片的な、これほどまでに影響が出ているのか。予知夢の能力がなくなるのも時間の問題だと思った。



 朝、今日も変わらず癒やしの妹が起こしに来てくれた。これでしか目覚めれない体になってしまったかもしれない。

 朝食をとって、食休みをする。今日は日曜日、一日中家の中に引きこもる予定だ。それ以外に、家族会議を開かなくてはいけないが。

 時間はあっという間に過ぎていく。朝起きるのがいつもより遅かったからだろうが、お昼がすぐに来てしまった。お昼ごはんを食べたら家族会議を開きたいと、みんなにはもう言ってあった。もうすぐでその時間がやってくる。


本題へと移ろうとする。全員でテーブルを囲み、俺の話す内容に耳を傾ける。


「まずは、昨日あった出来事から話すね」


 社からKのいる場所まで行ったこと、ラボでのこと、自分の今の能力のこと、昔の能力が戻りつつあること、詳細を細かく説明していった。もちろん、玲奈も能力については言わなかった。

 誰一人として口を挟まずに最後まで聞いてくれた。この中で一番事情を知らなさそうなりなも、静かに聞いてくれた。


「とまあ、昨日はこんなことがあったんだ」

「大変だったな。おつかれ」

「ほんとうね。あのKだもの。でも夢汰の能力をここまで分かるなんてすごいわね。成長したのね、Kも」

「だな」

「お兄ちゃん、お疲れだったね。そんなことがあったなんてね」

「ああ。ほんとだよ。りなにも聞きたいことがあるんだけど、先に二人に聞くよ」

「なあに?」

「父さんと母さんは、Kとどういう関係なの?」

「……どうしましょう。話す?」

「うーん、Kは教えてくれなかったんだろ?だったら…」

「あ、じゃあ、こうしましょ。夢汰が無事に完全記憶能力を復活させれたら教えてあげるわ。それでいいかしら?」

「わかった。そうするよ。他に聞きたいことがあるんだ」

「だいたい想像出来るけど、なんだ?」

「父さんと、母さんの能力を教えてほしい」

「………わかった。七海、いいかい?」

「私は良いわよ」

「わかった。じゃあ父さんたちの能力、教えるよ」

「ありがとう」


 話し出す前にお茶で口を湿らす。きっと、長い話になるのだろう。


「まずは父さんの能力から。父さんの能力は、触れた物の時間を早める能力だ」

「どういうこと?」

「例えば、植物に触れると、その植物は一気に成長する。成長しきると最終的に枯れてなにもなくなる。例えばこの机、触れると何年も使われて劣化したようになって、最終的にぼろぼろになって崩れる。これが父さんの能力だった。

 これを人間に対して使えば、成長の過程を見ることが出来る。出来るが最後には寿命が来て亡くなってしまう。簡単に人を殺せてしまうような危険で強大な能力を持ってたんだ。

 父さんが能力を使う時はたいてい最後まで使わずに途中で止める。そうしたらいい感じに成長する。子供の時、植物を育てたときとかはよく能力を使って一気に成長させてた。夢汰が七海のお腹にできたときに能力が消えたのは相当ビビったけどな。おかげで、過激な思想を持った父さんはいなくなった。それで今の父さんがあるって感じだな」

「そんなの扱ってたの!?」


 確かに強大な能力だった。生物だけでなく物の寿命まで縮めることが出来るのだ。いや、縮めるのではないか、時間をかけて成長させるもののはずが、ものの数秒で無となる。よく言えば成長させる能力、悪く言えば殺すための能力。


「じゃあ、次は私ね。私の能力はねぇ、触れた対象の時間を巻き戻す能力なの。すごいことに、本当に偶然なんだけど、パパと能力の効果が真逆なのよ。相性が良かったから互いに惹きつけられて結婚したのかもしれないけど。

 能力の効果はね、例えばそうね、パパと被るけど植物。成長した植物を能力を込めて触れるとだんだん小さくなって最後には種にまで戻るのよ。テーブルとか、他のものに触れるとだんだんできたてのようにキレイになって、行き着く先は材料に戻っていくの。でもやりすぎなければ材料まで戻ることは無いわ。

 人に使ったら、赤ん坊にまで戻るわ。それに更に使い続けたら、おそらく細胞分裂する前まで戻ると思うわ。私の能力には際限が無いもの。だからいい感じのタイミングで止める必要があるの。

 でも、悪いことだけじゃなくって、上手に使ったら怪我を治すこともできるし、若返ることも出来るの。その分身長も縮んじゃうし、それまで蓄えてた知識や経験も全部なくなってしまうのが難点ね」


 本当に父さんとは逆の能力だった。こんなことがあるのか。母さんの能力も使い方次第では助けにもなるし、人を殺すことも出来る。悪く言えば、すべてのものを際限なく分解し、消滅させる能力。良く言えば、破壊から救う能力。

 二人共恐ろしい能力を持っていた。けど、父さんだけ言って母さんがいっていないことがあった。


「お母さんは、今能力は使えるの?」

「あら、気づいたのね。パパは言ってて私は言ってないものね。ええ、能力は今の私でも使えるわ」

「そうなの!?」

「ええ、でも昔みたいにはできないかしらね」

「母さんの能力って、もしかして死者の時間も巻き戻せるんじゃないのか?つまり生き返らせるというか」

「……出来るわよ。もっとも、使ったのは一回だけだけど」

「死者を生き返らせたの?」

「生き返らせたわ。でもすぐに可愛そうになって、パパに協力してもらって、また亡くなってもらったのの」

「死者の復活はよっぽどじゃない限り使わない方が良いな」

「そうね、それをあのとき決めたの。死者蘇生は最終手段ってね」

「そうなんだ……」


 二人からの話が済んだ。あんなにすごい能力を持ってるなんて正直驚いたけど、自分の能力がすごいと言われているから当然なのかもしれない。

 次は、とうとう妹のりなだ。俺は彼女に能力を持っているか聞く必要がある。今すぐに決心しないといけない。心のなかで反芻させる。聞け、と。


「次は、りなに聞くけど、いいね?」

「……いいよ」

「りなは、能力は持ってる?」


 少し間を置き、口を開く。正直、能力を持っていようがいまいが、現実を聞きたくなかった。今すぐにでも耳を塞ぎたかったけど、頑張って聞く。しっかりとりなの目を見つめて。


「……もってるよ」

「…それは、どんな能力?」

「瞬間移動」


 何故か心の何処かでやっぱりという声が聞こえた気がした。おそらく何処かで想像していたのだろう。りなには能力があり、それは瞬間移動だ、と。

 夢で、過去を見ていた。あの当時は幼かったからわからなかった。ただの見間違えだと思っていた。けど実際には本当に瞬間移動していた。気づけば自分の腕の中にいる。知らないうちに別の場所に行っていた。今考えると、能力持ちだと真っ先に思っただろう。りなも、あの子供の頃は、能力なんて無意識のうちに使っていたのだろう。


「いつから自覚があったんだ?」

「………詳しくは覚えてないんだけど、何年か前に瞬きして目を開けた瞬間に知らない場所にいたことがあるの。その時はすっごく焦ったんだけど、目を瞑ってさっきまでいたばしょを想像してたら、いつの間にか戻ってたんだ」

「周りに人はいたのか?」

「居たかったよ。今は人がいる所にも移動するけど不思議に思う人は誰もいないよ」

「そんなこと…」

「あるんだよ。何回も人が目の前にいる状態で瞬間移動したりしたし、皆の前で使ったことがあるよ」

「ほんとに?」

「ほんとほんと。皆全然気づかないんだもん。ちょっとおもしろかったよ。けどお兄ちゃんに気づかれそうなときが何回かったからその時はちょっと焦ったかな」

「え、そんな事あったっけ?」

「あったあった。あのときはめちゃくちゃビックリしたけどね」

「多分、夢汰の能力のせいじゃないかしら?」

「やっぱり?さっきの話聞いててそうかもって思ってたんだ」

「能力が戻ってきたことで、りながそこに居なかったっていう事実を覚えてたってこと?」

「たぶんね。けど私達は全然疑問を抱いてなかったもの」

「なあ、りな。今ちょっと能力使ってくれないか?」

「いいけど、なんで?」

「どんな風に認識が変わるのか知りたいし、俺の能力がどれぐらい戻ってきてるか知りたいし」

「そういうこと。良いよ。じゃあ、ここからそこのソファまで跳ぶね」


「あれ?」

「どうしたの?夢汰」

「い、いや、さっきまでりながここに座ってた気がするんだけど」


 自分の隣にある椅子を指差しながらお母さんに問う。


「そんなことを無いと思うんだけど……ねぇ」

「ああ、そうだな。りなはさっきからずっとソファに座ってたぞ」


 テレビの前に置かれたソファを向いて、りながさっきからそこにいるという風に答える。


「え、でも」

「お兄ちゃんが正解だよ。お父さん、お母さん」

「そうなの?」

「そーだよ。さっきお兄ちゃんの隣からここに瞬間移動したんだよ」

「ほんと?」

「ほんとだよ。これが私の能力。私がそこにいたって記憶ないでしょ?やっぱりお兄ちゃんは違和感を感じたみたいだけどね」

「ああ、ちょっとな。でも違和感程度だけどな」

 

 さっきまで隣で能力のことを話していたような記憶が薄っすらと残っていた。その記憶が本物なら、りなが瞬間移動したことにも納得がいく。誰の記憶にも残っていないから、りなの能力を証明するのは不可能に近い。周りからしてみれば自称しているだけだ。


「なありな、今度一緒にKのところに行ってみないか?」

「いいの?」

「Kだったら多分能力のことなら大歓迎だと思う」

「そうかもねぇ。あのKだし」

「そうだ、そうしてもいいだろ。次はいつ行く予定なんだ?」

「……明日」

「明日!?」

「りな、いける?学校の帰りに直接寄ろうと思うんだけど」

「う、うーん。多分大丈夫」

「じゃあ、明日学校終わったら迎えに行くよ」

「わかった。じゃあそうするね…………彼女さんと?」

「いや彼女じゃないけど、まあ玲奈と迎えに行くよ」

「……玲奈、さん」

「どうした?」

「いんや、別に?」


 りなの様子がおかしいのは少し気にかかるが、これで一通り話し終わっただろう。

 これにて家族能力会議は終了。

最後まで読んでくれてありがとうございます!次話もよろしくおねがいします!

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