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現実はいつも夢から  作者: aciaクキ
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13 人為的能力と潜在的能力

 じっと私を見つめるKの考えが読めないまま、時間だけが過ぎていく。こちらから話しかければいいのか、あちらから話しかけてくるのか分からず硬直していると、Kが口を開いた。


「さて、何処から話したものかな。けど、君は夢で大抵のことをは思い出したんじゃないかな?」

「はい。思い出しました」

「まだ情報不足な部分もある。僕が説明を付け足そう。と言いつつも、夢汰くんほど詳しいわけじゃないんだ。だから、そこは了承してくれないか?」

「大丈夫です」

「ありがとう。君の能力は、二重人格、いや多重人格だよね。それって、生まれつきの能力かな?」

「……違います」

「そうだね。君の能力はあとから埋め込まれたものだ。多重人格という能力は、単に人格を増やすためだけじゃないんだ。能力が埋め込まれるってことは、自分の存在定義が増えるということと同義なんだ。だから、能力を増やしたりすると、能力関係なく人格が別れたりする可能性があるんだ。その分多重人格という能力は、能力を埋め込まれたという事実を隠せる能力なんだ。

 実際、記憶を消されたとき、人格は別にあるのは生まれつきだと思っていただろう?人格が2つ以上あったうえで別に能力があったらどうしても不自然に思ってしまう。けど無能力者に多重人格能力を与えて、能力を与えたという記憶さえ消せば、あたかも生まれたときから能力を持っていると思ってしまう。それが、あいつらの狙いなのさ」

「ファミナル…いや、特殊能力研究機関」

「そ、あいつらの目的はわからないけど、君に能力を植え付けたのは紛れもなく機関の人間だ」

「私、能力を得たあの日、方元さんに会ってたんです」

「ほう」

「お母さんの病室に、方元さんと、一人の男性がいて、彼女たちが私を攫って能力を埋め込んだんです」

「片元か……」

「あの、片元さんとはどういう関係なんですか?」

「ごめんね。それも言えないんだ」

「そうですか……」

「話の続きをしよう。君の能力は、人為的に作られたもとだからか、君自信に対する欠点が非常に多い。まず第一に、自由に体の主導権を変えられない。綾川さん自身で別人格に切り替わろうとしても、別人格が応えてくれなければ変わることができない。もっとも、変わろうと思わないだろうけど。ともかく、こちらからのアクションで帰ることができなくて、別人格が自由に体の主導権を握れる。でも、不思議なことにあまり積極的に変わろうとしない。なにか代償があるのか、条件が必要なのか。そこまでは申し訳ないがわからなかった。

 2つ目は、別人格が体を動かしているときに、本当の君は気を失ってしまっているということだ。これの何が問題かと言うと、自分の知らないところで体が何かをしているという恐怖がある。それは別人格も同じではないか、と思いそうなんだけど、実は別人格はそうでもないかもしれない。今も君の目を通して景色を見ている可能性は高い。だから、君が何をしているのかが分かる。

 3つ目に、自我の喪失の危険がある。多重人格の能力は、2つ以上の人格を作り出すことが出来る。3つでも、4つでも、5つでも、いくらでもね。とはいえ、生まれつき多重人格能力を持っていたとしても人格を作りすぎると危険だけどね。けど、後天的能力の場合は、3つ作っただけで危険になる。生まれつきなら、ある程度脳や心が耐えられるようになっている。けど、後からだと自我が能力に適することができずに保てなくなる可能性がある。

 能力を得た時点で多少なりとも適合はしているものの、3つ以上の人格に耐えられるほどの脳じゃない。だから、これ以上人格を増やしてはいけない。もし増やしてしまうと、脳死してしまう可能性も否定できない」

「わ、わかりました」


 改めて自分の能力の恐ろしさを痛感した。あとひとつ人格を増やすだけで生きれなくなってしまうかもしれない。いつ別人格が出てくるかわからない。怖い。ただただ、怖い。


「…まさかね」

「どうしたんですか?」

「ああ、何でもない。ところで、検査してて疑問に思ったことがあったんだけど、聞いていいかな?」

「は、はい」

「玲奈さん、本当に生まれたときから無能力だったかい?」

「え?どういうことですか?」

「さっき言ったように、今の君の別の人格はいつでも変われるのにあまり積極的に変わってないって言ったでしょ?それと、二人が寝ている間に集めた情報を比べてみたんだ。そうしたら、ちょっとおかしいところがあってね。君は、もしかしたら、もともと能力があったかもしれない」

「えっ?」


 今まで能力なんて使ったことがなかったし、能力を持ってる感じは一切しなかった。自分で自分の能力に気づかないなんてことがあるのだろうか。


「君がもともと持っていた能力、あるとすればそれはおそらく、無効化能力かな」

「無効化?」

「そう、対象の能力を無効化させる能力。これは、実際に能力を掛けられないと確かめようがない。だから、今まで気が付かなくてもなんらおかしくないよ」

「で、でもそれじゃあなんで記憶を消す能力の影響を受けたんですか?」

「そう、それが一番の矛盾点なんだ。憶測の域を出ないけど、一応可能性として一つだけ。君が無意識のうちに君自身に能力をかけていたという考え。ただ、少しこじつけがましい考えだから違うかもしれないけど。

 さっきから言っている通り、能力はアイデンティティの一つだ。だけど、子供のときに自覚できなければ、後々能力を使いこなすのは難しい。だから、君の能力発動条件は本当に自身に危険が及んだときだと思うんだ。それも無意識に。能力は、記憶を消される程度なら能力を発動する必要はないと判断したんじゃないかな?」

「そんな、そんなことってあるんですか?」

「ない……とは言い切れないのが能力というものだ。数十年と能力の研究をしてるけど、まだまだ謎が多い。その分、片元の方は、能力を人為的に作り出せるほど能力の研究が進んだということになるな」

「K?」

「ああ、すまない。さっきの考えだが、無理やり感が否めないが、あながち間違いというわけでもないと思う。ただ、後から来た多重人格能力の影響が強すぎて、検査をしても正確につかめないだろう。けど、さっきの解析で、多重人格能力とは別の能力の反応が出たのも確かだ。君に元から能力があった可能性は0ではないはずだ。信じるかどうかは君次第だけどね」

「私は……」


 そう簡単に信じられるものではない。多重人格の能力が後天的なのもさっき思い出したばかりだ。それだけでもお腹いっぱいなのに、そこにさらにもともと能力があったなんて言われても困ってしまう。

 けど納得できる部分もある。別人格が好きなタイミングで体の主導権を変えられるなら、もうとっくに変わっていてもおかしくない。もし私の本来の能力が多重人格能力を押さえつけてくれているなら、話がつながる。


「Kさん」

「なんだい?」

「多重人格能力を消す方法はありますか」

「それは、自分にもともと能力があったということを信じるってことかな?」

「それは……まだ、よくわかりません。でも、信じてみる価値はあると思いました」

「……そうか、わかった。多重人格能力を消すには君の能力を使うのが一番手っ取り早い。君の能力で、多重人格能力を相殺する。けど、君はまだ自分の能力を無意識レベルでしか扱えていない。だから、ちゃんと使えるようにならないといけない。それには少し時間がかかる。だから、明日から二人でここに来ると良いよ。予定が空いている日でいい。まあ、空いていても空いてなくてもこの空間に入れば時間なんて関係なくなるけどね」

「いいんですか?」

「もちろん。僕の方も能力の研究になるし、君たちも能力向上につながるだろう?夢汰くんは本来の能力を取り戻し、玲奈さんは能力を消す。それが最終目標だ。この空間にいる間は安全だから、いつでも来ると良いよ。二人で来れるときにね」

「「わかりました!」」


「今日はありがとうございました」

「ありがとうございました」

「こちらこそ、君たちの助けになれたなら嬉しいよ。じゃあ、また」

「はい!」

「また来ますね!」

「帰る方法はさっき説明した通りだから気をつけてね」


 その言葉を最後に、不思議な空間の家から出て、本を使って元いた場所へと戻っていった。

最後まで読んでくれてありがとうございました!次話もお楽しみ下さい✨

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