表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

それがお前のやり方か!!①【プリシラ視点②】

次話、ベルナルド視点は約2時間後、9日0時に更新です。

 ベルナルドはそれからも私の前に現れた。


  「やぁ、仔猫ちゃん(笑)」


 ヤツは女の子と見れば『コイツの脳ミソ甘味でできてんじゃねえのか、ゼリーとか』と私に思わせる程、イチイチ甘い台詞を吐く。そのせいで私は気色の悪い想像をしてしまい、ゼリーを食べられなくなった。非常に迷惑している。


 しかも私への甘ったるい台詞には、小馬鹿にした臭いがプンプンする。

 それでも一応それっぽい台詞を吐くのは、多分ヤツの仕様に違いない。


  「ご機嫌よう、馬鹿ぼっちゃま」


 最早私も隠すことなくぞんざいな台詞で返す。


 コイツのお陰でモブキャラだった筈の私の、学内でのイメージは『仔猫』どころか『仔ゴリラ』だ。

 嫁の貰い手に不安が凄い。

 なんとか『眼鏡をかけてくださるナイスミドルの後妻』くらいには収まりたいところ。


  「全くつれないお姫様だ。 少し笑顔を向けてくれるだけで、僕も満足するんだがね?」

  「生憎スマイルは売り切れですの。 他をあたってくださらない?」

  「厳しい言葉も刺激的だな。 僕が見たいのは君の笑顔だ」

  「クソうざですわね。 やんわり言ってるうちにさっさと失せろあそばせ?」

  「既にやんわりじゃないよね(笑)」


 端から見るとベルナルドは、私を口説いている風に見えないこともない。だが実際は、このふざけたやり取りを楽しんでいる様子。

 正直なところ、私ももう彼のしたことをそんなには気にしていない。どうせ私の好きな眼鏡様はいらっしゃらないのだし、もともとモブレベルの人間だ。むしろ自由に振る舞えるようになったとも言える。


 まあコイツがあんまりうざいときは怒るくらいで。




  「で、君いつも何してるの?」


 日がな図書室に通う私に、ベルナルドがそう尋ねるので、溜め息を深く吐いた。


  「私にもよくわからん……」


 お前こそ何しに来るんだ、というツッコミも出ないほど、私は無力さを感じていた。



 サッパリわからない。

 どうすれば皆が眼鏡をかけてくれるかが。



 最初は眼鏡に魔力付与を行い、装備として使う……とか考えたのだが、魔力を上げる日常の装備は、結局のところ目立たないのが基本。

 それに私の微々たる魔力を付与したところでたかがしれている。


 私の『全人類眼鏡化計画』は早くも暗礁に乗り上げていた。



  「何を悩んでるのか知らないけどさ、気晴らしに美味しいものでも食べにいかない? 甘いものとか」

  「女子が皆甘いものが好きだと思うなよ! 安直極まりない!!」

  「じゃあ辛いもの?」


  「……ちょっと、静かにしてくださらない?」


 図書室なのに騒ぎすぎてしまった。


 注意をしたのはボリュームのあるピンクベージュのお(ぐし)をふわふわと揺らせた美しいご令嬢……


 アッカーソン公爵家御令嬢、ジェラルディーン様。

 王子妃候補と囁かれる方である。


 ……実に眼鏡がお似合いになりそうな、理知的な美少女だ。


  「これはジェラルディーン様。 失礼を」

  「静かに学ぶ気のない方はここには相応しくありませんわ」

  「そうそう……出よう、プリシラ。 ではご機嫌よう、アッカーソン嬢」


 何故私も出ねばアカン、お前だけ出りゃ済むだろ……とは思いつつも、ここで揉めたら迷惑の上塗りなので仕方なく出る。




  「……しかし流石、モノホンの美少女は違うな!」


 イケメン・美少女が多い中でも、ジェラルディーン様は別格である。小説でいうところの『悪役』という名のヒロイン令嬢に相応しい。


 彼女ならどんな眼鏡もなんなくかけこなすだろう。野暮ったい眼鏡は彼女に愛らしさと親しみやすさを与え、スタイリッシュ眼鏡は彼女の知的さと高潔さを増すに違いない。


  「なに? プリシラは女の子が好きなの? ……ホラ、美形なら目の前にいるじゃない」

  「すげぇ自信だな……」


 呆れたが、確かにベルナルドもモノホン美形だ。

 私に顔を近付けたベルナルドを、改めてまじまじと眺める。


  「プリシラ? どうしたの、見とれちゃった?」

  「ベルナルドの目って、不思議な色してるね。 綺麗」


 青とも緑とも言えるような、そんな色。

 多分、碧とか翠とか……そんな表記で表すに違いない。


  (シンプルな銀縁眼鏡……細いタイプが良いだろうか。 いや、いい意味でチャラいというか、敢えてハズシにかかって丸、というのも……何気に髪と同じオレンジのグラサンもいいかもしれない。 昔のレイバンの様なティアードロップ型も、コイツならシャープかつ、ゴージャスな印象に……)


  「…………プリシラ」

  「なに? ふぐっ……!」


 気が付けば廊下の柱の陰。唐突に私は唇を奪われた。



 ──ファーストキスだった。



 ファーストキスは眼鏡の方と決めていたのに!

 2回目は眼鏡が邪魔で外す、というシュチュエーションが憧れだったのに!!



 私は再び、ベルナルドのボディにワンパンお見舞いした。

余談ですが、ゼリーを冷凍庫で固まらせると、脳ミソ感がアップする場合があります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 余談ですが、 冷凍庫で固めた一口大のゼリーが、私は結構好きです。 今年も冷たいものが美味しい季節がやってきましたね!
[良い点] ゼリーの種類によって色々変わりそう! ……じゃなくて! 唇を奪ったぁ!? そいつはいかん! イケメンだから許されると思ったら大間違いだからな! 世が世なら社会的に抹殺ですよ! ……でも…
[良い点] ベルナルド! それはアカンやろーーー! あああ、きっとアレやね、プリシラちゃんが 「瞳がきれい」 とか言うから、なんか勘違いしはったんやねぇぇ……www 2人のやりとりが面白すぎます! …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ