最大の恐怖
即席テントから信二出て来た。
ツキノワグマと鉢合わせ!
信二はよくわかってない様子だ。
「ん? 何かいる?」
「どうした信二?」
岳士も出て来た。
岳士は気付いたか?
「まさか・・・クマだ!」
泉も出て来た。
「クマ?」
「ごわいよ。ごわいよ〜」
岳士、泣きべそかきながら逃げてった。
あ〜最悪の状況。
ツキノワグマは大型。爪や牙の一撃は致命傷になる。子どもだったら・・・考えたくない!
「ワンワン! ワンワン! ワンワン!」
急げ! おらの足、史上最高速度出してくれ!
「怖い怖い怖いよ〜」
岳士、顔を強張らせ、必死に逃げてる。
クマは岳士追いかける。
クマに対して最もとってはいけない行動。
「うわっ」
!?
岳士の気配消えた?
岳士に嫌〜なものが襲っている感じ。クマとは違う、別の何か・・・。
まさか・・・
壁の部分とは逆方向の端・・・
そっちは逆に切り立った崖になってるんだ!
そっちに落っこちたな!?
信二も何か気付いたようだ。
「あれ、岳士?」
クマが今度は信二に近づいてく。
信二、恐怖で硬直してる。
クマが近づく。
泉はじーっと見てる。
「・・・・・・」
何か考えてる様子。
信二は固まって動けないみたい。
本当に恐怖感じた時、こうなるんだろう。
「信二!」
信二は固まったまま。
「信二!」
「え? 何か・・・呼んだ?」
「お前、まさか私のこと好きなの?」
は? こんな状況で何言ってんだ、泉?
「え?」
信二も戸惑ってるよ。
「クマやっつけたら・・・キスしてやるよ!」
「は? な、何言ってんだ?」
ていうか、最近の小学生・・・。
「お前! ここで怯んでたら、学校行った時、信二はクマに出会ってしょんべん漏らした弱虫野郎だって言い触らすぞ!」
いや、クマに出会ったらそうなるのもやむを得ないような・・・。
「バーカバーカ!弱虫弱虫!」
「な、なんだと・・・?」
「バーカバーカ! 何しょんべん漏らしてんの?」
信二、次第に怒りにぶるぶる震えだす。
「きたねーんだよ! 二度と近づくんじゃねぇよ!」
それは酷くないか?
「バーカバーカ! 弱虫弱虫!」
「ざけんな泉!」
お、良いかも知れない。
今だ信二! 必殺の特ソンだ!
「バンバラバンバンバン!バンバラバンバンバン!バンバラバンバン! バンバラバンバン! バンバラバンバンバン!」
あれ、クマがなんとなくしかめっ面。
クマ逃げて行った。
クマも嫌がるほどのスーパー音痴・・・。
「助かった〜」
信二、へたれ込む。
「良かった〜」
泉もへたれ込んで、表面強気ながら、やっぱり怖かったんだな。
「岳士・・・岳士は?」
「信二、今はしょうがない。即席テントの中で待ってよう」
「岳士・・・まさか死・・・」
「そんなわけないだろっ」
「死んでたらどうしよう」
「だから大丈夫だって」
信二、うっうっと泣き出す。
次第にしゃくりあげて・・・。
泉も下向いて泣き出した。
「俺の責任だ」
信二、うわ〜んって、大泣き。
待ってろ、おらが絶対岳士見つけ出す!
「ワンワン!」