再び襲い来る危険
即席テントの中、岳士と明季を真ん中に、信二と泉が挟んで休んでる。
泉に見守られ、隣にいる明季。明季は熱出したのか、息荒くて苦しそう。
「明季、大丈夫? バリバリのヤツ、明季の状況分かってるかなぁ」
こんばんワン! おらパリパリ。
今、丈咲のいる高齢者施設に戻って来たんだ。
自動ドアなんだけど、ご利用者さんが勝手に出ないように、鍵閉まってる。
でもドン、ドンとおらが鼻で叩くと、丈咲が出て来てくれることになってる。
「お、パリパリ。ご苦労さん」
丈咲が鍵開けてくれ、おらは中に入る。丈咲はまた鍵閉める。
厨房に移動した。
「よし、あとは食料だな。コンビニおにぎりくらいしかないけど。インスタントだけどスープ作っといたから、保温できる水筒に入れて。シェラカップ4つ」
「ワンワン!」
丈咲は、ここの所長さんの理解得て、非常食とか防災グッズとか置かせてもらってんだ。
「それとこれだ!」
丈咲がまた何か出した。
「エマージェンシーシート! 毛布やシュラフだと、パリパリが4人分持ってくのは不可能だ 」
確かに。
「そこでこのエマージェンシーシート。これは極薄素材で出来てる。だけど防寒、防風、防水に優れ、毛布3枚分くらいの保温が可能!」
「ワンワン!」
それは凄い!
「薄いから折り畳んでコンパクトにできる。携帯便利で保温効果抜群の、かなりの優れものなんだ!」
「ワンワン!」
「これなら4人分持ってけるな!」
「ワンワン!」
「でもあと下に敷く毛布は1枚持って行こう。毛布は丸めて、その上にさらにビニールシート丸めて持ってけば大丈夫だな。このビニールシート下に敷いて、その上に毛布敷けば良いからな」
「ワンワン!」
あと、これだ!
高ーくジャンプして、おらの鼻を丈咲のおでこにくっつける。
「分かった。熱出した子がいるんだな?」
「ワンワン!」
明季が熱出して苦しんで、皆心配してる様子はなんとなく伝わって来てた。
それに明季は鼻水出したり咳したり、風邪の諸症状あったし。
それと、明季からは何か嫌なものが襲って来る気配はあったんだ。
「解熱鎮痛剤、冷却シート、天然水ペットボトル、あと懐中電灯とかタオルとか」
「ワンワン!」
「毛布以外全部非常用持ち出し袋に入れるから、持ってくんだ。パリパリ!」
「ワンワン!」
非常用持ち出し袋は、最近はオシャレなリュックタイプのもあるみたいだけど、おらが持ってくのは、よくある銀色の、体操着袋みたいなヤツだ。その方が、紐の部分を口で加えて引っ張って、おらが持って行きやすいからね。
毛布を縛った紐に、さらに長い紐結んで口に加えやすいようにして、非常用持ち出し袋と両方口に加えて持ってくんだ。
「それとエマージェンシーシート、これは蒸れやすいって欠点もあるから、特に熱出してる子、汗冷えしないように注意してくれ」
がってんだ!
「ワンワン!」
待ってろ! 皆。パリパリ号再々出動だったか、何回目か忘れたけど、とにかく出動!
「ワンワン!」
皆、即席テントの中で休んでるな。
「パリパリまだかな?」
「信二、少し見直したよ」
「え?」
「リーダーシップ取ってんじゃん」
「なんだ泉、俺に惚れたのか?」
「はぁ? バカかお前? 冗談言ってる状況? 殺すぞ!」
「いやでもバカバカ来てくれたおかげでホッとした」
「だな。岳士」
「信二・・・兄ちゃんと、泉・・・ねえちゃんお似合いだと思う・・・」
「ちょ、明季何言ってんの!冗談言ってると熱上がっちゃうよ」
「明季、悪かったな。皆も悪かった・・・。俺がこんな所に連れて来たばっかりに・・・」
明季、首振って
「こんな冒険出来て良かった」
泉は明季の頭撫でる。
ミシッ。
「ん?」
「どうした信二?」
「泉、何か聞こえなかった?」
あ、あれは!カンタムの上にさっきのツキノワグマ!
何だかおらのことバカって言ってた気したけど、そんなことより急げ!
「ワンワン!」