機銃掃射vs風
こんばんワン! おらパリパリ!
今えっちらおっちらと例のカンタム看板運んでる。丈咲に頼んで両端に穴開けてもらい、紐通してもらったんだ。おらはその紐を口に加えて引っ張ってる所だ。ちょうど犬ゾリ引っ張ってるみたいな格好だな。
この看板のこと思い出して、これを風避けにしようかと思ったんだ。
他にも食料とか持って来ようかとも思ったんだけど、おら一匹じゃ全部いっぺんに持って来るのは厳しいし、何よりもまず一刻も早く風を防がないと。
まずは看板をそのまま口に加えて、丈咲のいる高齢者施設までうんしょうんしょと、看板口に加えて引っ張って持って行ったんだけど、これが大変だった。
丈咲に報告して、丈咲は4人の親御さんや警察に連絡してもらった。
まずはこの風避け持ってかないと。
えっさえっさ。
あ、何か強烈な嫌〜な感じが襲ってる。
皆ぶるぶる震えだしてる。低体温症の危険性!
子どもは寒さに弱くて低体温症になりやすい。
急げパリパリ号!
「ワンワン! ワンワン!」
おーい! 信二!
皆の体擦るとか何か・・・。
そうだ、お前の好きな特ソンでも歌って!
皆で歌歌ったら暖まるかな?
「ワンワン! ワンワン!」
おーい!
お、信二に通じたかな?
「ガチガチガチ。何か感じたような・・・ガチガチ」
あ〜歯が震えて無理かな。
「でも何か特ソン歌いたくなってきた。ガチガチ」
良いぞ信二。
「ガチガチ。え? マジ?」
何か泉凄い嫌そうだけど。
「ガチガチ。バンバラバンバンバン!」
うわーって、泉、岳士、明季が耳押さえてる。
まさか信二、究極の音痴?
「皆歌おうぜ!」
皆歯をガチガチさせながら首振ってる。
明季はゴホッゴホッって咳してる。
待ってろ、皆!
「ワンワン!」
「バーラバラバンバー!」
お、実際に歌声聞こえてきた。
大分滑らかに歌えるようになってきたな。
やった、到着!
「あ、パリパリ来た!」
お待たせ信二、皆!
「あれ、何でカンタムなんか
・・・」
これを風避けにするんだ。
「ワンワン!」
首を凪ぎ払うように、何回も振って・・・「一旦どいて」って言ってるんだけど、わかるかな?
「どくんだな?」
そうそう、さすが信二。
皆どいたところで・・・看板立て掛けた時の滑り止めのため、細長い溝を掘るんだ。壁の上の部分と、下の地面両方に。
ガッガッと、おらの手の爪で掘るぞ。
よし、この看板を斜めに立て掛けて欲しいんだけど、皆わかるかな?
「分かったぞ! このカンタム立て掛けるんだな」
さすが信二!
「よし皆立て掛けるぞ」
信二と泉でそれぞれ両端持って・・・。
ガシッ!とはめる。
倒れないか確かめるぞ。
ライダーキィック!
斜めに立て掛けられてる看板に向かってジャンプし、足から体当たり!
バン! バン!
特に上と下の方。バン! バン!
よし、これでしっかり食い込んで、多分大丈夫。
「ワンワン!」
「こん中入るんだな」
分かってるじゃないか、信二。風を防ぐんだ。即席テントだな。
これで大分風は防げると思うんだけど、まだ両端から多少入ってくるかも。
でもこれでカンタムの機銃掃射が、風を凪ぎはらってくれるぜ!
皆中に入ったら、また引き返して食料とか持ってくる。
大きくジャンプしてぇ。伏せの体勢で着地。
「分かってるよ。待ってりゃいいんだろ」
信二には完全に通じてるみたいだ。
「ワンワン! ワンワン!」
また皆で歌でも歌って、意識しっかり保ってて欲しい。
「ん? 何だか特ソン歌いたくなってきた」
凄い信二! これも通じた。
「それだけは全力で阻止する!」
って泉。信二はよっぽど音痴だったのかなぁ。
中は狭いけど、皆、中に入って肩寄せ合って固まっててくれ。
「うわ〜中暖かい」
暖かいか? 岳士?
良かった。こうして風防ぐだけでも大分違うからね。
とにかく早く行かないと。
ダッシュ!
「ワンワン!」
泉にも通じてるみたいで安心して行ける。
「なむろあみえちゃんの歌でも歌おう? 明季」
「はぁはぁ」
「明季? 何か息荒い」