別離と新たな危険
山に近づいて来た。まだ明るいんだけど、もうすぐに暗くなる。
子どもたちだとまだそこら辺の感覚分かんないだろうな。
まだ明るいからまだ大丈夫、あともうちょっと・・・って思ってるうちにすぐ暗くなる。
まだ子どもたちの不安な気持ち感じる。まだこの山にいるはずだ。
信二を感じる・・・。
「大丈夫。お前ら。俺を信じろ!」
「だから言ったんだよ! やっぱり不安になったから止めようって言ったのに」
泉はやっぱり直前で反対したんだな。
だいたい岳士は信二にしたがって、明季は泉にしたがうから、たいてい信二と泉の対立になる。
もう皆150メートル以上の、山城の所いるみたいだ。
信二の後に、他の3人が付いてって歩いてるみたいだけど、完全に道迷ってんなぁ。
信二は不安になりながらも、表面強気に振る舞ってる。
他の3人ももちろん不安。
これらの不安がおらに伝わって来たのか。
信二の強情なリーダーっぷりが判断を迷わせたな。
あ〜どんどん動かないで欲しい。
待ってろ! ギアチェンジだ!
ダッシュで走るぜ!
だんだん暗くなってきてる。
信二!
(やべ〜道分かんなくなった)
信二の心の声が聞こえる。
「あれ? 信二泣きべそかいてない?」
うわ〜泉余計なことを。
「ば、ばかやろー ! かくわけねぇだろっ」
でも何か目をこすってる。信二の不安な様子が見えてくる。
信二、ますます意地張んなきゃいいけど。
ようやく山城入り口あたりに着いた。
もうすっかり真っ暗。
あの子たちはどこまで行ったか・・・。
お〜い、信二たちぃー!
「ワンワン! ワンワン!」
険しい山道だってへっちゃらさ。
丈咲に訓練されてるから、ひょいひょいと障害物避けてどんどん登ってくぜ!
泉の怒り頂点に達したか。
「いい加減にしろ!辺り何にも見えないじゃん!」
「怖い・・・怖いよ〜」
明季、鼻水垂らして泣きじゃくってる。
「帰れなくなっちゃったよ〜」
岳士、うわ〜んと泣き出す。
つられて明季も鼻すすりながら泣きじゃくる。
ゴホッゴホッって咳もしてる。
「明季、大丈夫だよ。私が守ってあげるから」
泉、明季をおんぶして・・・。
あれ、信二と岳士から離れてく。
「じゃあな」
おいおい、泉と明季離れちゃったよ。
最悪のパターン。
残された信二と岳士、へたりこんでる。
岳士はうわ〜んとますます泣きじゃくる。
「うわ〜ん! お母ちゃ〜ん」
あれ、信二も泣いちゃった。
本当は弱虫だったのか。
泉と離れたことで、張りつめてたもんがプチッと切れちゃったか?
もう意地張る必要ないもんな。
泉、明季をおんぶして、例の銃型ライトを照らしながら、ゆっくり山下ってる。
「あいつらくたばってろ。明季、安心しろ。すぐお家帰るからな」
おいおい、夜の山道真っ暗だからちょー危ない!
頼むから二人とも戻ってくれ〜。
ん? 泉と明季の近くに何か嫌〜な感じ。
あれは! ツキノワグマ!
どんどん泉たちに近づいてく。
クマへの対処法、知らないだろうなぁ・・・。
泉と明季が危ない!
急げ! パリパリ号!