嫌な予感
子どもたちは何事もなかったかのようにガチャガチャ続けてる。
明季は鼻水垂らしながら回してるよ。何が出てきたのかな?
「あ、私の大好きなピンクレンジャー!」
おーそれは良かった。
ファイブレンジャーの消しゴム、略してファイ消しだな。
岳士は何が出るかな?
「俺はイエローレンジャーだよ。いらね」
なぜかカレー好きでデブというイメージ付きまとうイエローは人気ないのかな? ハハハッ。
泉はファイブレンジャーでもまた違う種類のガチャガチャやってる。
「やった! 私、銃型のライト!」
女の子なのに銃が好きなのか。こういうのはライトとしてはそんな役立たないかも知れないけど、子どもは嬉しいよな。
信二は何かブルーになってぶつぶつ言いながら回してるけど・・・。
「ったく、死ぬ所だったぜ・・・」
まさかさっきのこと、まだ根に持ってんのか?
信二は何だ?
「なんだブルーレンジャーかよ。これでもう3個持ってることになるよ」
信二、ブルーレンジャー3個も持ってんの?
お、何か丈咲の顔色変わった。
「何? ブルーレンジャーだと!」
「何だよ丈咲?」
丈咲、ブルーレンジャー好きだからなぁ。
ブルーレンジャーは2番手だけど、独自で活動する場合多くて、けっこう影から支えるからな。
仲間がピンチの時は、思ってもみない方法で助けたり。
そんなブルーレンジャーのキャラ設定が、丈咲に多大な影響与えてるな。
丈咲のスーパーボランティアは常に一人行動。おらも含めると一人と一匹か。
ボランティアチームみたいのには属さず、もちろんレスキュー隊にも入ってない。
独自に自由気ままに活動してる感じかな。
と言っても遊んでるわけじゃねぇぞ。
レスキュー隊やボランティア団体なんかの邪魔しないように、それでもなおかつ自分が行う救助活動はしっかりやる。
まさしくブルーレンジャーの如く、影から支えてんだ。
「俺のとトレードしないか?」
丈咲、トレードって、小学生と何やってんだ?
「これを見ろ!」
「むおぉぉ」
ん? 何だあの信二の絶叫。
「それはかの有名な幻の一品、ゴールデンレッドじゃねぇかああぁぁぁ」
あれはゴールデンレッド、単なるレッドレンジャーじゃなく、ゴールデンにコーティングされてて、なかなか出ないとされてる幻の一品。
マニアの間では超プレミアム価格で闇取引されてるとも噂されてる。
「えっ? えっ? それくれんの?」
「バカか? お前は? そのブルーと交換だ」
「えっ? ブルーなんかで良いの?」
「なんかとはなんだ⁉ なんかとは‼」
小学生相手にムキになるな、丈咲。
「分かった、分かった。ブルーと交換な」
「よっし! 決まりな。交渉成立」
そして丈咲と信二、がっちり握手。
珍しいこともあるもんだ。
と思ったら、信二、丈咲のケツにローキック!
「ざけんなよ、さっき危なかったんだからな!」
まさか看板ぶつけようとしたの本当だと思ってるのか?
「やられたー」
ドサッと大げさに倒れてるよ、丈咲。
「それにしても丈咲、大人のくせにまるで小学生だな。お前は永遠の子どもだ!」
信二から指差されてバカにされてるのに、ハハハッて笑ってるよ、丈咲。
まぁでもいつものことだ。信二は何か丈咲が大人のくせに特撮好きなのが気にくわないみたいだ。何か本当に丈咲のこと嫌いみたいだ。
自分はレッド好きで、リーダー気取っておきながら、生理的に受け付けない人を嫌うって、リーダー失格のような・・・。
ハハハッ。
丈咲は全く意に介してないようだけど、内心はどうなのかな?
同じ熱烈なファイブレンジャーファンどうし、仲良くなりたいはずだけど・・・。
あ、いや、小学生と仲良くなるってのも何だなぁ。
「心が純粋って言ってくれよ」
ひょっと跳ね起きる丈咲。
「とにかく退散すっからよ。じゃあな」
すげーすげーって、他の子どもたち感心してるのに、信二一人だけムスッ。
丈咲、手挙げて去ってく。
って、おい待て待て。
おらも行くよ。
「すっげー!ゴールデンレッドだぜ!」
信二すっげー笑顔。やっぱ嬉しかったんだな。
「よし、お前ら。今日は紅葉見に行くぞ」
紅葉とか随分渋いというか、まるで大人みたいだ。
ゴールデンレッドゲットして気分が高揚したのか?
なんちゃって。
「それとついでに宝探しだ」
ガクッ。多分そっちがメイン。
気分が高揚して、何かデカいことしたくなったのかな?
信二、ここらで一番高い、あの山指差してる。
「あの山だ。あの山には昔から宝が埋まってるって噂があるんだ」
うん、確かにあの山は昔山城だったらしく、昔の武将が宝隠してたって噂あるけど・・・。
「本当?行こう行こう」
岳士はだいたい信二の言うことに乗って来るけど。
「え〜大丈夫なの?」
泉は強気で、逆に信二に反対する場合多い。
「何か面白そう」
明季は素直だな。
「明季がそういうなら、まぁ行ってやるか」
本当に泉は明季のお姉さん的存在だな。
意見まとまって子どもたちノリノリだ。
でも大丈夫かな?子どもたちだけで行って・・・。
うわっ!
ゴチーンって、電柱にぶつかっちまった。
後ろ気にしながら歩いてたら。
ハハハッ。
「おい大丈夫か? パリパリ」
大丈夫大丈夫、自分に降りかかる災害は予知できないってか。
笑えないけど、ハハハッ。
う〜ん。子どもたちノリノリだけど、何か嫌〜な予感。