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46.たどり着いたのは

『仮拠点』にて一泊。

 地面に家を置いたときにはクレト様が口をあんぐり開けて「私の野営の価値観が……」などと言っていたが、ふかふかのベッドで快適に寝て美味しいごはんを食べられるとあって受け入れるのは早かった。

 ただやはり少し落ち着かないのか、朝起きるとファナさんもクレト様もすぐに起きていた。

 ファナさんは珍しく外の()で素振りをしておらず、何やらクレト様と話し合っていたようだ。


「おはようございます。ごめんなさい、起きるのが遅くなっちゃいました」


 テーブルについて、ほがらかに話し合う二人に挨拶をする。

 というか、いつになく二人の雰囲気が仲良さげなんだけど、何かいいきっかけでもあったのだろうか。いつもファナさんがひたすらクレト様を邪険にしていたからなぁ。……たぶん俺がクレト様に見とれるせいなんだろうけど……。やっとファナさんに真実の愛が伝わったのかな?

 これから旅を共にする仲間だ。仲良くなったのなら良かった。


「おはよう、マコト。クレトとお前の話で盛り上がっていたから問題ないぞ」


 ファナさんがニヤニヤしながらそう言ってきた。

 え、俺の話題……?

 もしかして俺の真実の愛が伝わったわけではなく、共通の話題があったから仲良くなれただけ?

 というか、俺の話題って何を話されたんだろう? クレト様には置いておいてファナさんには今まで情けない姿ばかり見せてきたから、何を話されたのかすごく気になる。

 一瞬のうちにいろいろなことを考えたが、その一拍は二人に伝わっていたらしい。


「そんなに怖がらなくても、ファナ様からマコトさんのご飯が美味しい話を伺ったり、マコトさんがいつも私にしてくださるお話などを話していただけですよ」


 穏やかにそんなことを言うクレト様だが、俺はピキリと固まった。

 待って、クレト様。

 俺がいつもあなたにしている話って、ファナさんが美しすぎるとか、かわいすぎるとか、優しすぎるとか、そういったのろけ話の類ですよね?

 もしかして意趣返し? 実はのろけ話をうっとうしく思っていた?


「マコト、その、私はお前を侮っていたようだ……。でも、嬉しかったぞ」


 照れたようにファナさんがそう言ったことで、俺はすべてがどうでもよくなった。

 ファナさんが喜んでくれたならそれでいい。恥ずかしいけど。


 相変わらずクレト様は穏やかに微笑んでいる。……これはわざとなのか、わざとじゃないのかわからないな。


「ファナさんが喜んでくれたなら、俺はそれでいい、うん。じゃあ、せっかくだしお褒めに預かった料理を朝ご飯にお出ししよう。俺が宿で作って来た出来立てのホットサンドです」

「やった、私あれ好きなんだ」

「ほっとさんど、ですか?」


 皿にのせてあるハムエッグのホットサンドを3セット取り出し、テーブルにセッティングしていく。

 それじゃ、いただきましょうか。ファナさんはガブリとホットサンドに豪快に嚙みついてもぐもぐ食べている。美味しそうな表情がアンビュラス。かわいい。

 クレト様ははじめて見る料理に、おそるおそる口に運んだが一口食べるといい笑顔になった。


「おいしいです、マコトさん!」

「それはよかったです」


 ちなみに神父様って前の世界で言うところの食事の戒律とかないのかなと不安になったが、そんなものはないらしい。モンスターのいるガチ生きるか死ぬかの世界では選り好みしては生きていけないのかな。


「しかし、マコトさんとファナ様はこのように快適な空間と食事をお持ちだからよく長期の遠征に出かけられたんですね」


 ハムエッグホットサンドを食べながらクレト様がしみじみと呟いた。


「そうだ。マコトはすごいだろう」

「ファナさんの戦闘能力あってこそのことです」


 二人で同時に答えると、クレト様がふふっと笑った。なにそれ尊いんだけど。


「お二人はいいコンビで、いいカップルですね」


 真正面からそう言われて照れる。そしてにこやかに微笑むクレト様がまぶしすぎる。

 思わず見惚れていたが、ファナさんから背中をつままれることはなかった。


 ◆


 そうして、空を飛ぶ、仮拠点に泊るといういつもと変わらない旅路をもう二回繰り返した時には、変化が訪れていた。


「宝玉の指し示す方向が下を向いてきたな」


 ファナさんが自分の持つ宝玉を見て言った。ファナさんの言う通り、地面と水平方向に走っていた宝玉から出る光が今は地面の方を向いていた。


「近くなってきたんですね! わくわくしてきちゃいました……!」


 にわかにテンションが上がる。空を飛んでいては、本当に宝があっても見つけられないだろう。というわけで地上に降り立ち、徒歩で移動をすることになった。


 グロッキーになっているクレト様が回復するまでしばし休憩。

 1時間程度歩いて、宝玉から光の筋が出なくなるポイントにたどり着いた。


 そこは、いかにも何かありそうな洞窟だった。



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