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47話 僕の意志

 よくわからないけど、とりあえずグアズ・シティが危なそうだってことは理解できた。魔界から魔物が攻め込んできたからみんなで対処しようって話。

 そういえば攻め込まれたズアリ村って、僕がはじめて『魔狩り』の仕事にいったところだな。


 『本部』でのみんながそれぞれ話し合っている。グアズ・シティの防衛が最優先だとか、迅速に駆除すべきだとかで意見が割れている。


「いつ終わるのこれ?」


 何があろうとも、僕は生き残れるからこの街がどうなろうと問題はない。滅びたら面倒だが、別のところに行けばいいだけだ。


「さぁね。これまでにないくらいの危機だし、時期が時期だから」


 ダーリアも僕と同じように、退屈そうにみ話し合うみんなを眺めていた。話し合いに参加するつもりはなさそうだ。


「時期? 魔物が攻めてくるシーズンでもあるの?」


 あったとしたらものすごく嫌なシーズンだ。花粉症と同じ位には嫌かもしれない。


「悪炎の王が襲来したから、みんな怖がってるんだよ。タイミングの問題だよ」


「悪炎の王? あぁ、山にいたあれのことか。あれとこの件になんか関係でもあるの?」


「悪炎の王は魔界の5王の1人なんだよ。それを私たちは氷漬けにしちゃったし、魔界側もキレたんだと思うのが普通だよ」


 原因は僕たちにあるみたいな言い方をするダーリア。

 僕たちに非はないだろうに。飛んできた火の粉を振り払っただけだろう。


「火の粉がでかすぎたんだよ」


 ダーリアはため息をついて、天井を見上げた。どうするかの話し合いに、まるで興味がないらしい。


「ダーリアは街がぶっ壊されてもいいの?」


「そりゃ嫌だけど、別にこの街に思い入れがある訳でもないし、少し困るくらいだよ」


 殺人をするのに場所なんてどうでも同じ。グアズ・シティがダメなら別の街に移動して、グアズと言う国そのものが滅びればどっかの国に移住するだけ。とにかく生き延びればいいようだ。


「そっか……やっぱアンタ、イカれてる」


「ははは、リムフィ君ほどじゃないよ」


 魔物への対処についての話は2時間を超えた。僕とダーリアは一切意見を出すことなく、退屈をどう紛らわすかに苦労していた。この街を守る気がさらさらないと、こういう集会は苦痛だ。周囲に合わせて、街を守らなくてはっていう意思がある風の演技をしなければならないからだ。退屈で尚且つ疲れる。しんどいの極み。


 結局、お昼までこの集会は続いた。どうやって魔物を迎え撃つかだけでなく、そもそも戦うか否かの話し合いから始まったからだ。逃げようって意見の人も一定数はいたみたい。

 結論としては戦うに決定。憲兵などの王国とも連携して魔物の軍勢を迎え撃つということになった。これだけを決めるために、朝から昼までかかった。


「もう午後は何もしなくてよくない? 僕たちがあの場にいても意味ないでしょ」


「同意するよ。リムフィ君と意見が合うのはなんか屈辱だよ」


 しかし一応行かねばならない。今は昼休憩ということで、僕とダーリアは『本部』から少し離れた食堂にいる。『魔狩り』は皆、『本部』で済ませるようだが、僕たちはあの場に居たくなかったからここに来たのだ。


「魔界からの軍勢って、どの位の規模なわけ? 戦力差がわからないと、これ以上の話し合いも無意味じゃん」


「……マジに話を聴いてなかったんだ。何度も話してたのに、そこまでとは恐れ入るよ」


 ちょっと固めのサンドウィッチをかじりながら、僕はダーリアに呆れられる。関心がないんだから、聴いてないのが当然だと思うけど。


「魔物の群れが推定500。こっちは『魔狩り』と憲兵たちを合わせて400くらいだよ」


「そこまで絶望的な差じゃないんだね」


「戦では数も重要だよ。100も違えば決定的。それに相手だって、ただ向かってくるだけのイノシシじゃないんだよ。魔物はそれなりに利口だよ」


 そんなもんなのか。よくわからないけど。僕が知っている戦なんて、所詮は歴史の教科書のものくらい。実体験なんてないからよくわからない。


「戦になったら、たぶんリムフィ君は前衛で突撃でも命じられると思うよ? 私は魔術で安全に後方支援でもしてるよ」


「そんなのないでしょ。突撃なんてそんな……」


「魔術だけで魔物を全滅させるのは不可能だよ。近距離戦闘は大事なことなんだから、頑張りなよ」


 励ましの言葉ではないと断言できる。この女、面白がってやがる。僕が戦でボコボコにされることを想像して面白がってやがるんだ。



 僕は戦になんて参戦するつもりはない。だが、周りがやれと言ってくる。強制的に参加させられてしまう。魔術が使えたなら後方支援もできたろうが、僕は魔術が一切使えない。

 そして戦になれば、僕の不死が露見する恐れがある。


「どうにかして戦、止められないかな」


 おお、すごく平和主義者みたいなセリフ吐いちゃった。

 自分でも似合わないとわかる。だからダーリア、そんな気色悪いものを見たような眼で僕を見るな。


「一応言うけど、戦争を止めるのは不可能だよ。相手は話の通じる奴らじゃない。国家と国家のぶつかりあいのほうが、まだ和平の道がある分マシなんだよ。相手は魔物だ」


「うーん……そうだよなぁ」


 話の通じる相手じゃない、というのがもう絶望的。いくらこちらが平和を掲げて説得をしようにも無駄。魔物は利口だが、人間ほど賢い生き物ではない。


「どうにかできればいいんだけど……」


「どうにもならないよ、戦いは避けられないから大人しく殺されまくるといいよ」


「それやられるくらいなら逃げ……あ、そうだ逃げよう」


 簡単なことに気が付かなかった。戦が始まる前にこの街から逃げてしまえばいいんだ。それが一番、戦いを回避できる楽な方法じゃないか。


「逃げるって……グアズ・シティの警備は強化されてるんだよ。逃げるのは難しいよ」


「いくら難しくても、逃げられないことはないだろう。これから始まる戦いにくらべたら、ずっと楽だ」


 戦って致命傷を負わせられて、また回復しての繰り返しなんて、絶対に避けねばならない。それなら逃亡してやる。敵前逃亡で殺されても、その場さえ乗り切れば何とかなる、一回死んだふりをすればいいだけだ。戦で執拗にやられるかもしれない恐怖よりはずっといい。


「協力してくれる?」


「するわけないよ」


「全部ばらすよ?」


「……ぜひとも死んでしまえ」


 快く引き受けてくれるダーリアに感謝。裏切らない仲間って最高。


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