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14話 ダーリアとゴブリン退治へ

新展開。

 はい、リムフィです。なんとゴブリン退治です。場所は前と同じような森の中らしい。

 前回のズアリ村よりもグアズ・シティから離れている。行きの馬車で5日かかった。


「遠い! 遠出嫌いだ僕は!」

「知らねーよ、『魔狩り』は旅する職だよ。リムフィ君みたいな引きこもり思考さんには向かない職だよ、やめちまえ」

「楽に稼げるから嫌なこった」


 昔から遠足や旅行などが嫌いで、家が一番楽しかった。社会に出てからも、仕事に対する責任感など微塵も生まれなかった。

 生まれ変わっても変わらない。それが僕の性だ。


 今回ゴブリン退治を依頼してきたのは、ネイスという街の教会だ。教会の神父が直々に『魔狩り』に依頼したそうだ。


 もちろん教会と言っても、キリスト教とかではない。ネリアス教という、グアズ王国内で信仰が深い宗教の教会だ。ネイスの街はグアズ王国の中で最も信徒が多いらしい。

 なんでも、ネリアス教の聖地が近いからだとか。


「ダーリアはこんな綺麗な街に来たことあるの?」

「なんだその言い方。あるけどそれがなにか」

「1秒だってこの街の地面を踏んでいい存在じゃないだろうに」

「仕事以外では来たことないよ。私にはグアズ・シティ性に合ってる。あの埃っぽい街じゃなきゃやりにくいし」


 ネリアス教が信仰しているのは水を司る女神らしく、あちこちに川が流れている綺麗な街だった。

 生まれ変わり以前に写真でみたことがある、オランダのアムステルダムみたいだ。まさに水の都。グアズ・シティの土っぽさとは全く違う。ワイルドさが足りてない。


 そんな神聖な街に、神聖という言葉に唾を吐くような、人のかたちをした悪魔がやってきてしまうとは。


「ようこそ、遠路はるばるネイスへ。私はネリアス教司祭、ベリア・ニューストンです。お見知りおきを」


 教会に訪れていきなり、白い礼服を着た初老のおじいさまにこんな自己紹介をされた。

 すでに伝書バトによって来ることは伝えられていたらしい。きっと前回もそうだったのだろう。『連盟』も色々持ってるな。


「はじめまして、私はダーリア・モンド。『魔狩り』の仕事でやってまいりました。位(くらい)は……」


 どうせやる気なんか大してないくせに、外面だけはいいんだから。この女の素性をぶちまけてやりたくなる。ぶちまければダーリアの人生は終わりに向かうだろう。


「いえいえ結構、もう伝えられております故に。『4』の位を持つお方に来ていただけるとは嬉しい限りでございます。そちらが、リムフィ・ナチアルス様でよろしいので?」


「あ、はい。位は『9』ですが精一杯がんばります」


「ありがとうございます。立ち話も疲れますから座りましょう。この時間は信徒も少ないですし」


 教会内は空いていた。時刻は昼時。皆仕事とか昼飯の時間なのだろう。

 ベリア司祭に言われるがまま、僕たちは祭壇の近くの長椅子に座った。ベリア司祭は僕の隣に座った。ダーリアとベリア司祭に挟まれる僕、なんか不安。


「いやはや、此度は本当にありがとうございます。私めの依頼を受けていただいて……低賃金で申し訳ない限りです」


「いえ、私たちは『魔狩り』ですから。魔物を狩ることが使命なのです。報酬のためではなく、人々が安心して生活ができるように魔物を狩るのです」


 中身が違うんじゃないかと疑うほどに、ダーリアは似合わないことを言った。本性を知ってる僕からしたら、ひたすらに気持ち悪い。


「素晴らしい心がけでありますな、感激です」


 白髪が生え始めている薄めの頭を下げて、ベリア司祭は僕たちに感謝をしてくれた。ダーリアが抜かしたのは確実に本心じゃないから感謝されてもって感じだけど。


「そんな大層なことではありません。申し訳ありませんが、そろそろ依頼内容の確認をしたいのですが……」


 ベリア司祭は「ああ、そうでした」と笑う。にこやかなのはきっと営業スマイル。聖職者もそういうのあるでしょう。


 そして僕はちょっぴり後悔する。この神父のお話で。この依頼をしてくれたこの神父に後悔する。


「このネイスという街はネリアス教徒の街と言っても過言ではありません。何せ聖地ネリアス・タワーが近いですからね……。あぁ、依頼というのはですね……」


 1時間ほどだらだらと話すベリア神父。ネリアス教の成り立ちとか、主神ネーリアが主役の神話だとか話が脱線しまくり。


「ゴブリンがネーリア休息の地である社を穢しているというのは、ネリアス教の信徒として見過ごせないのです。どうか、ゴブリンという魔物からネーリアの社を救っていただきたく……」


「……あっはい」


 話が終わったのは1時間後。


 ダーリア、今絶対途中から話聴いてなかった。上の空になりかけてたもん。僕が言えたことじゃないけど。


 このベリア司祭は話が下手くそなのだろう。


 要約すると……タワー近くの遺跡にゴブリンの群れが住み着いて、色々と迷惑だから退治してほしい……ということだろう。

 こちとら仕事、主神ネーリアの休憩スペースのことなど知ったことではない。

 とにかくゴブリンを殺しまくればいい。それだけだ。


「……事情は理解できました。明日にその遺跡に向かい、ゴブリンを狩ろうと思います。狩ったという証拠をお見せするためには、どうしたほうがよろしいでしょうか?」


「魔物を狩った後日、我々が遺跡に向かいますので。その日まではネイスに滞在していただけると……」


「わかりました、その調査には同行させていただきます。全て狩り尽すつもりでいますが、調査の時にもしもがあってはなりませんので……」


「わかりました、お手数をおかけします。どうかよろしくお願いいたします」


 そういうことで、僕たちはベリア司祭と別れて教会を後にした。

 ダーリアに仕事丸投げしてるけど、心など痛まない。むしろもっと働いてもらおう。僕、できないし。任せるしかないんだけど。


 教会を出てからやることは、今夜の宿探しである。

 何故今すぐ狩りに行かないのか? 

 ダーリア曰く、ゴブリン狩りは早朝が望ましいとのこと。夜行性だから奇襲をかけるなら朝が一番らしい。


「宿探しか……教会にどこか手配してもらえばいいんじゃないの? 僕たちが選ぶよりもイイ場所を提供してくれるかもしれないし」


「それでもかまわないけど、私は自分で探すよ。信心深くない人からしたら、教会の手配した宿なんて気味悪くていられないから」


 そう言って、ダーリアは「朝8時までにこの教会前に集合にしよう」と言って僕のもとを離れていった。そんなに教会の手配した宿が嫌なのか。


 逆にそんなにダーリアが嫌がるような宿が気になってきた。僕はもう一度教会に入ってベリア司祭に宿を紹介してもらうことに。


「あぁ、この街の宿でしたら中央噴水広場を先に行ったところにある、『宿屋ネイスハウス』がおススメにございます。行かれるのでしたら少しお待ちを……」


 ベリア司祭は奥の部屋に行って、紙に何かを書いてきたようだ。

 渡してくれたのは紹介状だった。


「そちらを渡してくだされば、料金はこちらが負担いたしますので……」


「ありがとうございます! 助かります!」


 ラッキーだと思って、喜びが前面に出過ぎた。もっと慎ましい態度を心がけねば。


 それでベリア司祭の言う通りに、噴水広場の先に向かう。言っていた『宿屋ネイスハウス』がすぐにみえてきた。割とイイ感じの建物だ。レンガ造りで洒落ている。

 ネイスという街自体が結構オシャレというか、優雅な雰囲気の都という感じだから、レンガ造りの建物も珍しくはない。しかしこの宿屋は緑の装飾にセンスを感じる。


 扉を開けて、僕は中へとお邪魔した。

 中は素朴な雰囲気でアットホームな民家のようだった。店員らしき女の人がこちらを見て微笑んでくる。


「あら、いらっしゃい」


「あぁ、あの僕……これ貰って、ここで見せるようにって言われたんですけど……」


 初めての場所は緊張する。僕はそれが少しひどい時がある。スゴイ言葉がしどろもどろになってしまうのは悩みのひとつだ。


「あぁ、司祭様からのね。わかりました、こちらへどうぞ」


 女店員さんは僕を二階へと案内してくれた。三つある部屋の内、一番奥の部屋が僕の部屋らしい。民宿みたい。


「こちらの部屋をお使いください、夕食はこちらでもご用意できますがいかがいたしますか? 外でお召し上がりになりますか?」


「あぁ、じゃあこっちでごちそうになります……料金のほうは……?」


「お気になさらず。教会の方でお支払いいただけるので……ではご夕食は時間になったらお持ちいたしますので、ごゆっくりお待ちください」


 『魔狩り』始めてからの食事って、昨日の村でごちそうになったスープとパンだけか。

 常時空腹であることに慣れているから食欲もそんなにない。けど食べるのは人間らしさのためには重要だと思うから食べる。

 食べれば美味しいって思うだろうし。


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