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戦いの幕切れ・下

 おはようございます。今日は朝更新

 数日後、ラポルテ村でダナエ姫とバスキア公に会うことになった。

 都笠さんやセリエ、ユーカ達も一緒だ。

 

 ラポルテ村はあちこちが壊され、門のある教会の周りのテントや屋台とかも滅茶苦茶にされていた。村の人にもかなり死者が出たらしい。

 その葬儀と復旧で慌ただしい雰囲気で、あちこちから木を切る音や掛け声が聞こえてくる。


「今回はよくやってくれた。本当に助かったぜ」


 村の広場で、まだ鎧姿で前線から直接やってきたって感じのバスキア公が言う。

 ダナエ姫も普段の豪華な着物をマントのように羽織った姿じゃなくて質素な白黒の袴姿で皮の鎧を着こんでいた。珍しい格好だな。


「今後はあいつらと戦後処理の折衝だが、今回の戦いではお前の戦功が一番だ。何か望みはあるか?」

「お主がどう考えておるか分からぬがの……戦功に対しては然るべく報いねば貴族や騎士たちの秩序が乱れるのじゃ。この場合、謙虚は美徳では無いぞ」


 二人が言うけど……今一つ思いつかない。ただ。


「何か考えておきます。でも一つお願いがあります」

「なんだ、何でも言え」


「ソヴェンスキの騎士、レオニダードと言う人の奥さんと娘さんを保護してください。奥さんはアンナさん、娘さんはクリステルさんです」

「……よくわからぬな。なぜそのようなことを望むのじゃ?」


 ダナエ姫が不思議そうな顔でバスキア公と顔を合わせた。

 ソヴェンスキの領内で起きたことを簡単に説明すると二人が納得したように頷く。

 ただ、ダナエ姫が心配そうな顔で僕を見た。

 

「じゃがの……恨まれるやもしれぬぞ、スミト。お主が手を下したのじゃからな」

「別にかまいませんよ、そんなこと」


 あの人が見逃してくれなければ、都笠さんのところまで辿り着けなかった。

 自己満足かもしれない。偽善かもしれない。でもこの約束は守らないといけないと思う。


「まあ、お前がそう望むなら必ず実行する。安心しろ」

「よろしくお願いします」


「だが、それだけじゃ足りないぜ。金でも領地でも構わねぇが、何か考えておけよ」

「……そうですか、ならあとは……サヴォア家の話を進めておいてください」


 そう言うとユーカが嬉しそうに抱き着いてきた。

 お金はある方が良いのは間違いないけど、僕個人が領地を貰っても正直言って困る。

 ただ、サヴォア家の旧領復帰の話は進めてほしい。

 

 あの話が出てからヴァンパイアと戦ったり、戦争に巻き込まれたりで今一つ進展が無いんだけど。

 これで少しは話が進むことを期待したい。

 バスキア公が頷いた。

 

「しかし……強くなったな、お前。あの時、俺やジェラールに突っかかってきた時とは天と地の差だぜ」

「うむ……英雄と呼ばれるに相応しいの」


 バスキア公が言うけど。 ダナエ姫がしみじみと言うけど、そう言われても今一つピンとこない。


「……全然そんな気がしないんですが」


 今回も死にかけたし、楽に勝ったことがほとんどない気がする。

 バスキア公が分かってないなって顔で苦笑いした。


「普通の奴は司教憲兵アフィツィエルと斬り合ったらまず生きて戻れねぇよ、それだけで大したもんだぜ」

「スロット武器での斬り合いなら、お主はわが国でも屈指であろうと思うぞ。まあ妾には及ばぬがの」


 ……そういうもんか。

 なんか全然強くなった気がしなんだけど、戦ってる相手が悉く強いだけなのかな。


「そして、この度の戦……我らは四大公家の枠組みを超えて事に当たった。お主のおかげじゃ、スミト」

「……そうなんですか?」


「お前がいなければ……あのスズを救出する作戦が無ければ、バスキア家とブルフレーニュ家が共同で何かをするなどありなかっただろうよ」

「妾とてこの度の戦いで、勝手に増援を出すことには躊躇したであろう。

バスキア公家の要請無しでブルフレーニュ家が勝手に手勢を率いて戦うなど、古きしきたりからすれば到底許されぬことゆえにの」


 ダナエ姫が言う。バスキア公が横で頷いていた。

 四大公家はそれぞれ縄張りがあるらしいけど、僕が想像する以上にこの辺の敷居は高いらしい。


「しかし、さすれば北の戦線が崩れイーレルギアの侵略を許したであろう。ソヴェンスキとの戦線も如何になっていたか分からぬ。

塔の廃墟も抑えられオルドネス公が捕らえられることもあり得たじゃろう」


「あの救出はそんなこと意図したわけじゃないんですけどね」

「まあなんじゃ、これはそう、怪我の功名……という奴じゃの。違うか?」

「良く知ってますね」


 そう言うとダナエ姫が静かに笑った。籐司郎さんから教えてもらったんだろうな。


「ともあれ、感謝するぞ。スミト、それにスズ。そしてセリエ、ユーカ。お主らはまごうことなき英雄じゃ」

「事後処理が片付いたら盛大に戦勝祝いをする。王にも謁見することなるだろうからな。心構えはしておいてくれ」


「あの……でも私たちは……」


 セリエが何か言いかけて口ごもるけど。


「奴隷だろうが何だろうが、戦功は戦功だ。お前らの立場は分かるが、誰にも文句は言わせねぇよ。つまんねぇ卑下はするんじゃねぇ」

「ではの。皆、また会おうぞ」


 そう言って、二人がラポルテ村から立ち去っていった。



 連投は此処で終了です。 

 続きはもう少しお待ちください。書き始めてるのでそこまでは時間はかからないはず。

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