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渋谷スクランブル交差点を強襲する・上

 おはようございます。

 場面転換の関係で短め。

 ラポルテ村を見下ろす丘に立った。


 ヴァンサンの飛竜でパレアまで運んでもらって、パレアでまたあの商店の店主さんに交渉してハンマーを借りて、その後はハンマーでここまで来た。


 パレアには特に戦火が及んではいないけど、戦争中ということで人通りもまばらで空気が重たかった。

 多分後方での撹乱工作もしているんだろうなという気がする。


 普段は探索者と商人で賑やかなラポルテ村も静まり返っている。彼らはどうしたんだろうか。捕まっているのかどうなのか。

 村には武装した兵士が、渋谷への門がある教会の広場や路地にいるのが見える。


「敵は40人ほどです。此方には気づいていないようで、特に警戒している素振りはありません。」


 セリエが使い魔ファミリアでの偵察の結果を教えてくれる。

 40人か。司教憲兵アフィツィエルがいないといいんだけど。


 通信機で知った情報をもとに飛竜と車で移動してきたから、あの最初の報告から半日少ししかかかってない。

 流石に僕らがここにいるなんて思いもつかないだろうな。


「夜を待つ?」


 都笠さんが聞いてくる。

 いまは三時ごろだ。もう少しすれば日も落ちるけど。


「いや……少しでも早い方がいいと思う」


 万が一、僕等の動きが報告されたら目も当てられない。

 それに、夜に仕掛けるとしても、ハンマーで突撃するならエンジン音とライトは隠せないから奇襲にならない。 

 暗さは必ずしも僕等だけにとって有利じゃないし。

 都笠さんが頷いた。


「足を止めたら囲まれるしあいつらを全員相手にするわけにはいかない。

一気に教会まで行くわよ。準備いい?」


 都笠さんが言う。

 

「いつでも」

 

 荷台に上って応える。


「ご主人様、お手を頂けますか」


 手を差し出すとセリエがきゅっと手を握って指を絡めてくる。

 握り返すと、セリエがちょっと恥ずかしそうにはにかんで、すぐ真剣な顔に戻った。


「【彼の者の身にまとう鎧は金剛の如く、仇なす刃を退けるものなり。斯く成せ】」

 

 セリエがいつも通り手を抱くようにして防御プロテクションを掛けてくれた。

 白い光が体に纏いつく。


「かなり乱暴な運転になるわ、絶対に振り落とされないでね」

「了解」


「じゃ、行くわよ!」


 ハンマーが甲高いエンジン音を立てて飛び出した。



 静寂を切り裂くようにハンマーが猛然と緩い坂道を下った。

 荷馬車を通す関係で、渋谷への門がある教会への道は結構広くて整備されているけど、それでも荷台を下から突き上げるような衝撃が来る。


 エンジン音を聞いた兵士たちが槍や剣とかを構えて道に飛び出してきたけど、クラクションを鳴らしながら猛スピードで突っ込むと兵士が悲鳴を上げて道を開けた。

 さすがにこれの前に立ちふさがる奴はいないか。


「敵襲!」


 声が聞こえて警報のような笛の音が鳴り響いた。

 見慣れたラポルテ村の道を走り抜けたハンマーが横滑りしながら広場に飛び込む。

 門のある教会と、周りの屋台とか倉庫用のカラフルなテント。

 その周りには何人かの兵士たちの姿が目に入った。


「ご主人様!右です!」


 セリエが叫ぶ。 

 そっちの方を向くと白装束の一人の上に大きな火球が浮かんでいた。魔法使いか。


「貫け!魔弾の射手デア・フライシュッツ!」


 銃口を向けて引き金を引く。黒い光弾が兵士の肩口に命中して吹き飛んだ。


「燃えちゃえ!」


 ユーカが叫んでフランベルジュを振り回すと、切っ先から長く炎が伸びた。 

 炎が赤い蛇のようにうねって空を照らす。炎を見て兵士たちが慌てて飛びのいた。

 ハンマーが教会の方を向く。


「風戸君!」

「分かってる!【新たな魔弾と引き換えに!ザミュエル!彼の者を生贄にささげる!】」


 銃口を教会の入り口の向けた。兵士たちが慌てたように左右に散る。


「焼き尽くせ!魔弾の射手デア・フライシュッツ!」


 光弾が飛んで教会の入り口に着弾する。

 鈍い爆発音がして教会のドアと壁の破片がばらばらと飛び散った。あれならハンマーのサイズでもくぐれる。

 エンジンが唸りをあげてハンマーのタイヤが空転して土ぼこりが上がった。


「しっかり捕まってて!セリエ、ユーカ!」


 都笠さんの声がして、二人が身を竦めて荷台の縁に捕まる。

 一瞬遅れて、ハンマーが教会に向けて突進した。白い壁が一気に迫る。

 低い石段を駆け上がった。巨体が跳ねて、車幅ギリギリの穴を抜けて教会に飛び込む。


 左右に揺れた車体がぴたりとまっすぐ向いた。

 正面には見慣れた渋谷への門が見える。兵士が二人その前を守るように立っていた。

 エンジンが吠えるような音を立てて絨毯の破片を散らす。


「突っ込むわよ!」


 門に向けてハンマーが疾走した。門の前の兵士たちが慌てて横に飛びのく。

 黒い幕をくぐるいつもの感覚があって、視界が開けた。



 あと一話。続きは昼に。

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