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娘はとても純粋で


いなくなったキース様に首を傾げつつ、小さな妖精さんと共に元の位置に戻りお菓子をつまむことにした。

あの短い会話で何かを察していなくなったキース様は優秀なのだろうな~


「あの騒がしい男はご主人様の旦那様ですか?」

「違うよ飼い主の部下の方」

「ご主人様の……飼い主?」


あ、そういえば説明してなかったっけ。


「さっき持ち主は私ではないって言ったでしょう?」

「はい」

「ここは魔王城で私はさっきここに連れてこられたところなの」

「…?はい」

「だから私の持ち主も貴女の持ち主も魔王様なの」


しばらくの間が空き彼女なりに私の言葉をかみ砕いてくれたらしい。ごめんね!説明下手だよね!

うーんと考える姿勢で首を捻る様子はとってもかわいいよ!


「……ご主人様は本日こちらに攫われていらしたのですね?」

「そうよ」

「攫った賊の正体が魔王で」

「ええ、正確には運んだのは別の魔の者でしょうけど」

「賊の頭が魔王でご主人様はこの部屋に囚われてらっしゃる」

「そうね、軟禁状態で飼われているわ」


また首を捻って何かを考えている様子で私を凝視していること少し。


「ご主人様どうしてここから逃げないのですか?」


確かにそういう疑問わきますよね。

「方法がないからよどっちへ行ったらいいかもわからないもの」

空路の半分以上は気絶してたし。


「私がお連れいたします」


ぎゅうっと両手を握りしめて言われてしまった。

ん~こまったなぁ。

逃げたいと思わないわけではないけど、魔王様と顔を合わせた時に逃げられないって本能的に察してしまった時にそういう希望は無くしてしまったみたいなんだよねぇ。

この子の申し出はありがたいけど、この子の持ち主は魔王様だし。私が攫ってしまうわけにはいかないし。何より逃げたら追いかけてくる気がする。いや、食用ネズミの一匹逃げたところで放っておくかな?いやいや彼女は魔石の鐘の妖精さんだからきっととても貴重な存在だろうからやっぱり追いかけてくるわ。



と、ぐだぐだ考えている間にキース様が戻ってきたみたい。



*******



さて、走っていなくなり、恐らく走って戻ってきたであろうキース様がスマートに私たちを案内した先は魔王様の執務室。さっきまでいたところですね。部屋に入れられ机に向かう魔王様に呼ばれるまま進み頭を下げる。


「頭は下げなくていい。で、何だ」


頭は上げますけど、何かは知らないです魔王様。キース様に聞いてください。

あ、わかったお嬢さんの名付けの件か。


「部屋にあった鐘を鳴らしたら彼女が来てくださって名前が欲しいと言われたのですが鐘の持ち主は魔王様でしょう?勝手にそんなことをするわけにはいかないと思って…?」


どうすればいいんだ?話の落としどころがわからん。

尻すぼみに小さくなる語尾をそのままに首を傾げつつ魔王様のそばに立つキース様に視線を向ければ片手で顔を覆われていた。あ、呆れられている、のか?


「魔王様、言葉が足りませんよ!」


あ、私に対してではなさそう。


「む…鐘はお前のだから構わん」


っということは小さい妖精さんをいただいて良いということ???魔王様太っ腹ですね。


「魔王が許可を出さなくとも私のご主人様はすでに決めている」

「と、本人も言っているしな」


お嬢さん、怖いもの知らずですね………魔王様たちを睨むのはやめようね。

魔王様は怒ってないみたいでよかったけど、キース様はそうでもないみたいだからちょーっと静かにしていてね?



「ライラ殿、あの鐘は鳴らすものを自ら選ぶ代物なのです。ですから彼女は貴女以外には仕えませんよ」

「そうだったのですか……では私が名付けても?」

「構わん」

魔王様が頷いたのを確認してから小さな妖精さんに向き直り、視線を合わせるために膝をつき向かい合う。


「ご主人様……」

「私を選んでくれたのね?」

「はい」

「ありがとう、貴女の名前つけてもいいの?」

「ご主人様から名前が欲しいです」


さっきまでとは一転して笑顔で私に応えてくれる彼女に名前をあげないと。

実は一目見た時から浮かんでいる名前があったりする。


「‶アリス”貴女の事をそう呼んでもいい?」

「はい、ご主人様!私アリス何処までもご主人様について行きます」


アリスが返事をくれた瞬間に何かが彼女との間に結ばれたような感覚がした。自分の中の一番深い部分が熱くなるような脈打つようなそんな感覚。


「問題なく済んだみたいですね魔王様」

「だから言っただろう」

「魔石のミスがないわけではありませんから」


さっきまでよりも強く存在を感じられるようになったアリスの頭を撫でつつ魔王様たちに目を向ける。


「ご主人様がお望みならこの者たちを攻撃しますよ?」

「あ、アリス物騒なことは最終手段に取っておいてね??」


この子ほんとに怖いもの知らずなんだけど!ハラハラするぅ~


「威勢のいい精霊だな」

「私を加工したのは魔王だろう」

「そうだが」


私以外に対する突っかかり具合が見た目のちびっ子さからしてお父さんに反抗するお子様みたいで可愛らしいな、なんて現実逃避に勤しむことにする。というか魔石を鐘に加工したのが魔王様なの?魔王様があの綺麗な鐘を作ったのか。センスがいい上に手先が器用だなんて魔王様何ものなの、魔王か!知ってたわ。


「しばらくで魔王様の仕事も終わりますからそうしたら食事の席に呼びます。それまで先ほどの部屋に戻られますか?」


食事の席に呼ばれるのか。ついに私が喰われる時がくるわけだ。アリスがせっかく慕ってくれているのに申し訳ないな。


「ご主人様が悲しんでいるキースとやら何をした」


またたきの間に私とキース様の間に割り込んだアリスの後ろ姿が激おこしている。

なるほど、アリスの感情が何となく私にも伝わっているのはお互い様ってことか。


「え、ライラ殿どうされたのですか?」

どうも何も……そんな困った顔で聞き返されたら答えづらいじゃないか。


「お前デリカシーというものがないのかご主人様が困っている察しろ」

ん?その言い方だとあらぬ誤解も生みそうなのだけど。


「あ、魔王城の食事はヘルシー仕様ですから大丈夫ですよ」

「デリカシーがないどころかお前の目は節穴か!!ご主人様は落とす油がないほど細い!」


根本的に何かが食い違っている気がするのは気のせいかな???


「いくぞ」

「あ、はい」


そんなこんなしているうちに魔王様の仕事も終わられたみたいだ。さっさと扉に向かわれているし。

とりあえず後をついて行くことにする。


ヘルシー仕様か~揚げ物にはならなさそうだ。






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