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美しい娘がおりました


扉の前で考えることしばらく。

部屋の中から物音も何かがいるような気配もしないのでとりあえず部屋の中に進んでみることにした。見渡す限り無人だしね。これでクローゼットの中から誰か出てきたりしたらそれはもう想定外の出来事だしなるようになるでしょ。

着の身着のままここまで連れてこられたわけですることもないし、どうしたものかね。

薬草を積んで入れていたポーチは腰にあるけど薬草くらいしかはいっていないし一緒につり下げてある小ぶりのナイフは現状役に立ちそうもない。イノシシが痺れる程度のマヒ効果がある一般市民には少々お高いナイフなんだけどな~


「それにしても広い部屋ね」


クローゼットも化粧台も立派なこと。こんなに大きな鏡一体いくらするんだろう?割ったら一生働いても返せなさそう。左の壁にある扉は対の部屋につながる扉っぽいけど反対側の奥にあるのは…?


「お風呂か!!!!」


これまた広いバスルームへの扉だった。洗面台には柔らかそうな真っ白いタオルが備え付けられているし、こっちはトイレでこっちは浴槽ね。………豪華すぎませんかこの部屋。


何故この部屋に連れてこられたのか謎は深まるばかりですな。


元の部屋に戻り入り口の扉から正面にある大きな窓の向こうはバルコニーが見えている。外に出てみれば、なるほどバルコニーもお隣の魔王様の部屋と続きなのね。ここは重要だ覚えておこう。


で、部屋の探検もあらかた終わったしやることがなくなってしまった。


窓辺のテーブルの上にある澄んだ桃色のガラス?で出来た小さな鐘がキース様の言っていた呼び鈴だろう。こんな小さなもので聞こえるのかな?振ってみたい。しかもメイドさんが来てくれるんでしょう?メイドさん見てみたい。前に一度行ったことのある領主様のお館がある町で泊まった宿の食堂にいたお嬢さんみたいな感じかな?気になるな~でも用事もないのに呼ぶのはな~メイドさんって言っても人のメイドさんじゃないだろうしぃ……


___チリン


振ってしまったぜ。好奇心に勝てなかった。

澄んだきれいな音が鳴ったけどこれでは部屋の外には聞こえないのではないかな?


「お呼びですか?ご主人様」

「ふぁぃ!??!」


声がしたのは私の真後ろ。い、いつの間に………

飛び上がり返事を返すのと共に振り返れば、手を伸ばせば届きそうな距離に桃色の髪をした小さな女の子が頭を下げていた。


「あ、頭を上げてください!すみません呼んでしまって」

「いいえ、呼んでいただけなければ鐘の中から出られぬままでした。お呼びくださってありがとうございますご主人様」


言葉と共に深々と頭を下げたメイドさんはゆっくりと頭を上げると目を合わせて微笑んでくれました。私の胸ほどしかない身長の幼い容姿をした彼女は水色のワンピースに白いエプロンをつけ桃色の髪にも白いカチューシャ?をつけてとても可愛らしい。(後からこれはヘッドドレスというのだと訂正された)


「鐘の中にいたの?」

「はい、私の宿った魔石を元に作られていますから」

「そ、そう」


ガラスじゃなくて魔石だったらしい。


「ご主人様?私に名前をつけないのですか?」

「名前……?持っていないの?」

「はい、名前を付けていただく事が契約の成立条件となります」


契約…してもいいのだろうか?この魔石性の不思議な鐘の持ち主は私ではなく魔王様だろうし私はこれから食べられる身であるから契約してしまうのはこの子に申し訳ない。一時でも主従関係になり名づけられた相手が死ぬのはトラウマになってしまうかもしれないし……


「そう、名前をあげたいのだけど貴女の持ち主は私じゃないから勝手に契約を結んでしまってもいいかわからないの。だからもうしばらく待っていてね」

「…?かしこまりました」


さて、ちょこんと立っているこの子と私ではやっぱり暇なこの状況に変わりはない。困った。さっき見つけたお菓子でも食べてみようかな。水差しと共にあったカップとお菓子を窓辺のテーブルまで持ってくる。部屋を移動する間メイドさんはちょこちょこと後ろをついて歩いてたんですよ可愛い。テーブルに座り向かいの椅子へ促せばしばらく迷った後座ってくれた。ちょっとテーブルが高いね、クッション持ってこようか?


「ご主人様お茶を飲まれるのですよね?」

「お茶を入れるための火がないから水になってしまうけどいい?」

「お湯がわかせればいいですか?」

「そうね、紅茶の葉は向こうにあったと思うし…」

「かしこまりましたお湯にします」

「ありがとう!魔法が使えるって便利ね」

「……?いえ、お礼を言われるほどのことでは…」


首を傾げる彼女がお湯にしてくれている間に紅茶の葉を取ってくるかな。

お茶の用意があるのにお湯を作る設備がないのは魔の者は魔力が使えて当たり前だからだったか。なるほどね。


葉をもって戻れば彼女が紅茶をいれてくれた。いい匂いですねーこれもまたお高いんでしょう?知ってましたーー


「お待たせいたしました、どうぞ毒なども含まれていないようですから安心してお召し上がりください」

「ありがとう、貴方も飲んでね?暇だからお話しましょう?」

「ありがとうございます、お暇でしたら何かいたしましょうか?」

「なにかって?」

「ご主人様は魔法を見慣れていない様子でしたから簡単な見世物でもいたします」

「実は近くで見るのは初めてなの!見てみたいな」


そんなにお湯を沸かしてるとこガン見してたかな?恥ずかしいわー


では、と一言告げるのと同時に彼女が両手を顔の高さに上げ指揮をするように手をふるった途端テーブルの上がキラキラと輝く小さなもの達のステージになった。角砂糖二つ分ほどの大きさをした半透明に輝く動物がカップやクッキーの周りを動き回る。うさぎにクマ、イノシシの親子や鹿。小さな小さな動物が動き回る様子はとても綺麗で可愛らしい。


「すごい!!貴女凄いわねー」

「お褒めの言葉光栄です」


テーブルの上の動物たちを動かしながらほほ笑んだ彼女もとても可愛らしい。

それからしばらく彼女が小さな舞台の上で見せる可愛らしい劇に見入っていた。


*******



っと、扉の向こうから声がする。小さなメイドさんが扉に向かうのと同時に机の上にあった小さな世界が消えてしまったので少しもったいないような気がしたけどしょうがないか!私の立場的にそんなに悠長なこといてられないのだったわ。


訪ねてきたのはキース様だったようで、何やら扉のところで揉めているから私もそっちに向かうことにする。


「ですから!貴女はここで何を…ライラ殿!」

「あ、ご主人様すみませんお騒がせしました」


おおう、揉めてる揉めてる。

これはあれかな誰だよ!!ってことだろうね。うん。私しかいないはずだもんね。


「キース様この子は鐘を鳴らしたら来てくださったメイドさんです」

「まさか!この者はメイドではありませんよ」

「そうですご主人様私はメイドではないです」

「え!?そうなの??」

「だから貴女は誰なんだと先ほどから…」


小さいメイドさんがメイドさんではなかっただと……

ってことはこの子は妖精さんか何かなのかな?魔石に宿ってたって言ってたし鐘の精かな?

鐘の精かぁ可愛いなーよしよし。自己完結の後彼女の頭を撫でればきょとんと見上げられた可愛い。


「この子に名前はありませんから誰といわれても答えられないのかと思います」

「名前がないってそんな……あ」


あ?


「ライラ殿、少々ここでその者とお待ちくださいね、すぐに戻ってまいりますから」

「え、はい」


走り去ってしまわれた。キース様って落ち着いた大人のイメージだったんだけど気のせいだったみたいだ。






小さいお嬢さんの正体と名前決定まで行きたかった…長くなったから分割。

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