大きなおともだちが
「「おかえりなさいませ」」
いつもの部屋に戻るとメイドさんと執事さんに出迎えられた。びっくりした。
「た、ただいま?」
「ご主人様の使用人ですね?」
「はい、執事長のセバスとメイド長のメアリー、そして執事とメイドが各3名ずつお仕えさせていただきます」
アリスがいつもやってくれるから忘れていたけど、そういえば最初にキース様にはメイドがいるって聞いてたよね。
魔王様のメイドさんも見たことなかったから、聞き間違いかと思ってた。
「今日からアドニスになったライラです。よろしくお願いします」
「「ライラ・アドニス様、よろしくお願い致します」」
ペットのお世話係に8人も人をつけるなんて、魔王様はペットを飼ったことがないのかもしれない……私、住処と餌だけあげとけばある程度は生きていけるよ?村でも何年も一人暮らしだったし。
それではお支度を、とメイドさんに連れられるままお風呂へ向かい、軽く入浴し、あれよあれよの間に普段がより質の良い部屋着に着替えさせられる。
部屋に戻るとランチの準備が整っていた。
「ご主人様おかえりなさーい」
先に座り手を振るアリスの向かいに執事さん椅子を引かれ座る。
「アリスがいつものアリスだ」
「あれは威嚇など用ですから」
威嚇してたのか。まぁたくさんの美しい魔人さん達よりアリスのがキラキラしていて綺麗で美しかった。
「アリスの羽すっごく綺麗だったね」
「本当ですか?!やったぁ嬉しいです!!!」
「……妖精の皆様は羽を褒められる事が1番誇らしいと言われています」
いつにも増して喜ぶアリスが可愛いなと思っていると、スープを配膳していたセバスさんがそっと教えてくれた。
なるほど。普段は羽がないから褒めた事なかったね。
「ご主人様、明日はキースが城の中を案内するのでしたよね」
「予定ではそうだったね、こんなに広いから周るのは大変そうだね」
今日の移動だけでも一苦労だったし。迷ったら大変そう。ただこの部屋に戻ってくるのは簡単で、1番高い塔のある、1番上の階の端にこの部屋はある。
他に私が知っているところだと、
私が最初に来た日の入口になったバルコニーは、魔王様の執務室で、下の階の真ん中あたりにある。
キース様は別の塔にある、城に勤める人のための貸部屋で寝泊まりしているらしい。
これとは別にキース様の執務室もあり、そこに日々書類が届いたり誰かが報告に来たりするんだとか。
ここ数日はお仕事どうしてたんだろう?
ま、いっか。
今日の私のやる事は終わったことだし、午後はいつも通りキース様に借りている本を読んで過ごそう。
広すぎる部屋の中が、メイドさんと執事さんのおかげで少し暖かくなったような気がする。
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「疲れた」
「お疲れ様です」
そして夜、ふらりと寝室の内扉から入ってきた魔王様は珍しくお疲れの様子。とはいえ表情も椅子に座る姿も普段と変わらないけども。なんとなく雰囲気が疲れている感じだ。
魔王様がきた事で、アリスは鐘へ戻りメイドさん達はいなくなった。
晩餐会は朝まで続くなんて事はなく、いつもと同じ時間に魔王様はやってきていつもと同じく特に何をするでもなく寝室の机の前の椅子に座っている。
お披露目用のドレスから着替える時にも外さなかった魔王様からもらった薔薇のネックレスは、今も着けている。
いつものように、お茶を入れたポットを机まで運び魔王様にお湯を入れてもらう。
それからお茶を蒸らしている間に、メイドさん達が補充していてくれたらしいお菓子を何種類か机にもってくると、魔王様の向かいの椅子に座った。
夜のお茶会の時間だ。




