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第9話 孤独な心、見つけた大切なもの

大変長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

今回はこの物語初となるシリアスです。

ですから、コメディとしては全く面白くないと思いますが、どうぞお付き合い下さい。

では、どうぞ!

「それでは、真琴さんはもうお家に帰ってください」


「えっ!」



 私がそう告げると後ろで真琴さんが驚いたような声を出した。私は更に後ろを振り向かず、言葉を紡ぐ。



「今の白羽学院は非常に危険です。ついさっきだって、何があったかは知りませんが、真琴さんだって恐い思いをしたはずです。これ以上、ここにいては駄目です。今日あったことは忘れて、早く帰って下さい」



そう、真琴さんはこれ以上ここに居てはいけない。万が一何かあったときに、私には彼女を護る術が無い。だから、真琴さんは早く帰るべきなんだ。



「………な、何をいってるの? どうしてよ! どうして、私がここに居ては駄目なのよ!!」



 私が話して、少し間が空いた後、真琴さんが後ろで大きな声をあげた。尚も私はそれを後ろを振り向かず答える。



「言った筈です、ここは危険だと。貴女だってそれはわかっている筈です。ですから、早く帰って下さい。理事長だって心配している筈ですよ」


「イヤよ! 冗談じゃないわ!! 私は危険を承知でここに居るのよ!! 私は絶対にひとりで帰ったりはしないわ!!」



つくづく強情な人だな………



 私は密かに苦笑を浮かべる。



「危険を承知しているなら、尚更早く帰って下さい」


「イヤだって言ってるじゃない!! あなたにだけ危険な目に合わせる訳にはいかないの!!」



 私は今の真琴さんの発言にとても驚かされた。だって、今の彼女の発言はまるで―――



―――まるで、これから私が何をするのか知ってるような口振りだったから。



「真琴さん………あなたはこれから私が何を――」


「知ってるわよ」



 真琴さんが私の言葉を遮るように言葉を上から被せる。



「私………聞いたのよ。今日の昼休みにヒカリと母さんが話しをしているのを………」



 私はそれを黙って聞いている。



「盗み聞きしていた事は謝るわ。でも、そうすればきっと、あなたの事をもっと知れる気がしたの。………答えが見つかる気がしたの」



 私はそれを聞いて思わず笑ってしまった。



「あははは。一体、私の何を知りたかったんですか? それに答えって何ですか?」


「うるさいわね!! 今はそんな事はどうだっていいのよ!! 私は――」


「だったら」



 今度は私が真琴さんの言葉を遮る。



「だったら猶の事、早く帰って下さい。さっきも言いましたけど、ご家族の方々だってきっと心配していますよ。特に理事長なんか『もう、真琴ちゃんはまだ帰らないのぉ〜!』って言って、フグみたいに頬を膨らませて怒っているはずですよ」



 私は少しため息混じりで言った。自分で言った言葉の中に少し寂しさを感じながら……

 しかし、それでも真琴さんに帰る気は全くないようだった。


「何度も言わせないでよ!! 私はまだ帰らないの!! あなたを一人で行かせたくないの!!」


「いい加減にして下さい!!」



 私は思わず強い調子で怒鳴ながら、後ろへ振り返る。そして、真琴さんと向き合い、正面から彼女の目を見据えた。



「何度も何度言わせないで下さい!! 今の学校は危険なんです!! 貴女が今日の昼間に聞いた話は全部本当です。ですから、私の事を心配する必要はありません!! 早く帰って下さい!! それに、こんな事言いたくありませんが………貴女が居ると―――」



 ここで私は大きく息を吸い込む。


 これを言ってしまったら、彼女に嫌われてしまうかもしれない。


 これまでのような会話は出来なく成るかもしれない。


 それでも、私は真琴さんを護りたいから。


 さっきのように助けられず、彼女に恐い思いをさせたくないから。


 二度とあんな悔しい思いをしたくないから。


 今回の敵は今までとは格が違いすぎる。このまま、真琴さんと一緒に行けば彼女を危険な目に合わせるだけでなく、命を落としてしまうかもしれない。


 だから、例え嫌われて、関わりを断たれようとも、私は今真琴さんに言わなければならない。


 彼女を………初めて出来た友達を失いたくないから。


 私の勝手な思い込みかもしれないけど…………それでも、少なくとも私はそう信じている。



 だから―――



「――足手まといなんですよ。はっきり言って仕事の邪魔です。貴女がいると出来るものも出来なくなります」



 ―――私はそう言い切った。



 私の言葉に真琴さんは一瞬、はっとしたように大きく目を丸め、その後顔を俯かせてしまった。見ると、真琴さんは身体を小刻みに震わせ、両手を強く握り締めていた。その手は力一杯握り締めているせいか白くなっている。


 私はそんな真琴さんを見て、強く胸を締め付けられる。罪悪感の波が次から次へと襲ってくる。けれども、後悔はしていない。否、していないと思い込む。これで良かったんだ、と自身に何度も何度も言い聞かせて―――



これで良かったんだ。こうすれば、真琴さんは安全に家に帰ることが出来る。



 でも、何度も自分に言い聞かせても、やっぱり辛かった。否、違う。本当は恐いんだ。これで、真琴さんが自分から離れて行ってしまうんじゃないかと思い、恐いんだ。初めて、こんな私を毛嫌いせず、皆と同じように接してくれた人を失くすのが恐いんだ。………また、独りに成ってしまうのが恐いんだ。



 私は思わず唇を強く噛む。そうする事によって、私自身の気持ちにケリを付けようとした。



 しばらくして、気持ちも少し落ち着き、普段の調子で話しかけるよう注意しながら、俯いている真琴さんに話しかける。



「それでは帰って下さい。校門までちゃんと送りますから」



 私はそう静かに告げると、真琴さんの返答も待たずに下駄箱のある元いた校舎―――つまり、渡り廊下を走ってきた方向へ向かってゆっくりと歩き始めた。



「………それでも」



 私が真琴さんを二、三歩通り過ぎた時、突然、真琴さんはとても小さく、囁く様な声で呟いた。私はその声を聞いて、後ろを振り返り、後姿の真琴さんを見詰める。


 すると、真琴さんは不意にこちらへ振り返り、さっきとは比べものに成らないくらいの大きな声で―――まるで何かを懇願するように―――叫び、私を強い瞳で見据えた。未だに身体は震えているままだった。その姿からは普段の、あの強気な様子は微塵も感じられない。



「それでも私はあなたと一緒に行きたいの!!」



 私は思わず、目を大きく見開いて、驚いてしまった。



どうしてこの人は、私なんかと一緒に行きたがるんだろう? あんなに酷い事を言ったのに………



 私は不思議でならなかった。次から次へと頭の中に疑問が湧いてくる。



「何故ですか? どうしてあなたはそこまで………」



 気が付けば、私そう真琴さんに尋ねていた。自分でもどうしてこんな事を言ったのかわからない。ついさっき、真琴さんに嫌われて関係を断たれても構わないと思っていたはずなのに。自分の気持ちにちゃんとケリを付けたはずなのに。


 でも、それと同時にそれを望まない自分がいた。



初めて私の事を知っても、態度を変えることなく、周りにいる人達と同じ様に接してくれた人。


初めて母上以外、親族でさえ呼んでくれなかった、『光』と言う私自身の証しを呼んでくれた人。


初めて、本当の嘘偽り無い自分を知ってもらいたいと思えた人。


初めて心の底から、失いたくないと思った人。


そして出来た、初めて友達だと呼べる人。



 いつの間にか、真琴さんは私にとって掛け替えのない存在になっていた。


 これまで親族からは『忌み子』だとして忌み嫌われ、周りの人達からは変態と蔑まされてきた。


 真琴さんは私を、そんな暗く冷たい孤独の中から助け出してくれたんだ。


 だから、本当は真琴さんに嫌われるのは恐い。このままずっと友達でいたい。

 そう思っているから、きっと無意識の内に少しでも真琴さんとの友人関係を保とうとして、思わず尋ねてしまったのだろう。



「嬉しかったの!! だって、あなたは私の事を初めて『白羽』じゃなくて『真琴』と呼んでくれたから!! 初めて『白羽』の名前に捕らわれず、私を見て、普通に接してくれたから!! 家族以外で初めて私の事を『白羽真琴』、一個人として認めてくれたから!!」



 真琴さんが私に向かって、前へ一歩踏み出しながら叫ぶ。身体のすぐ横にある両手を握り締め、私を見据える目には、うっすらと涙が滲んでいる。


 私は予想外な内容に暫くの間、固まる。



「な……なんですって……」



 大きく見開かれた目を閉じる事が出来ない。



「真琴さん……それは一体……」



 真琴さんは何も答えてくれない。ただただ、さっきのように下を向いている。その姿は弱々しく、今にも壊れてしまうんじゃないかと思えるほど、朧気おぼろげだった。



「……私ね」



 真琴さんが俯いたまま、とても小さな声で話し始める。



「今まで一度も家族以外に『真琴』って呼ばれたことないの……」



 私はそれを黙って聞く。



「大人の人達は私の事を『あの白羽さんのお嬢さんか』って苗字ですらまともに呼んでくれない。先生なんて論外。あんなの私の立場を恐れて、私の発言をろくに考えもせずホイホイ従ってくる操り人形みたい。それに、同年代の人達の殆どのは、私の事を『白羽様』って呼ぶの。それかしくは名前を呼ばないわ。何人かの多少は親しい人達には『白羽さん』って呼ばれているけど、ほんの少数………ううん、それだけじゃないわ。殆どの人達は私に話し掛けたりしない。関わろうとしてくれない。私が話し掛ければ、身体をびくびく震わせて、見たくもない作り笑いを浮かべ対応してくる。私の機嫌を損ねないよう、早く会話が終わるようにね」



 真琴さんは未だに俯いたままで、語り続ける。

 私は何も言うことが出来ない。私の中で未だ渦巻く痛みが、真琴さんの言葉に合わせて動き出す。



「それに、向こうから話し掛けてくれる人達の殆どは、何らかの形で私に気に入られたいと思っている人ばっかり………どうしてだと思う?」



 私は何も答えられない。答えなんて分かりきってる。


 真琴さんもそれを分かっているようで、私が何も言ってないのにまた話し始める。



「それはね………私が“白羽”だったからなの」



 そう話す声は震えていた。



「……真琴さん」



 掛ける言葉が見つからない。何を言えばいいのか分からない。


 不意に真琴さんは私のもとへ駆け寄り、両手で私の胸倉を掴んだ。



「ねぇ! どうしてよ! どうしてみんな私が白羽というだけで、私を特別扱いするの?! どうしてみんな普通に友達として接してくれないの?! どうしてみんな私を――真琴としての私を見てくれないの?! どうして………私はみんなと違うの……」



 喉が詰まり次の言葉が出てこない。私の胸倉を掴んだ真琴さんは、両目から涙を流しひたすら叫ぶ。



「本当は生徒会長にだって成りたくなかった!! でも、周りの人達が私に期待をしてくれたからしないわけにはいかなかった!! 私は“白羽”だから、みんなの期待に完璧に答えなければいけないの!! それが普通だから!! 白羽の後継者である私には出来て当然の事だから!! だから、勉強だってスポーツだって、真琴という私を偽って、必死にみんなの期待に答えるために今まで努力してきた!! けれど、それを家族以外に私を認めてくれる人なんていなかった!! みんなはそれが当然だと思ってるから!!」



 真琴さんは顔を歪ませ、今までずっと胸の内にしまい込んでいた想いが、涙とともに溢れだしていた。


 そして、私はこの時初めて知ったんだ。



―――彼女が――真琴さんは私とよく似ていると………そして、同じ想いを持っていた事を………


 私も真琴さんも、それぞれ自分ではどうしようもない事を抱えている。


 私は呪いを………真琴さんは社会的地位を………


 それは自分の力ではどうしようもないものだった。


 私がそうであったように、真琴さんもまたきっとそうだったに違いない。



「私は本当は、みんなが思っているような立派な人間じゃない!! 本当は我が儘だって、イタズラだって、意地悪だってしたい!! みんなと同じように自分の気持ちをハッキリいったり、泣いたり、笑いあったり、ふざけあって、そして時には思いっきり喧嘩しあって、ちゃんと仲直りして………私はそんな極々普通な生活を送りたいの………」



 段々と小さくなっていく声。これが真琴さんの本当の気持ち、願い。


 以前は私もそう思ってた。


 けど、今はもうあまり思わない。


 もう、疲れたから。叶うはずのない願いを追い求めて、やっぱり叶えることが出来なくて、自分自身をもう傷付けたくないから。



「……本当は私にはどうせ叶えることが出来ないものだと思ってた………でもね。ヒカリと出会ってから気付いたの。私にもまだ望みがあるんじゃないかって。………ねぇ? 私がどうしてあなたに私の名前を無理矢理にでも呼ばせようとしているか、知ってる?」


「………わかりません」



 私にはわからない。どうして彼女が、これほどまでに私が彼女の名前を呼ぶことに執着していたのかなんて。



「本当は私にもよく分からなかったの。でもね。私は今まで会ったこともないあなたを見つけたとき、すごく嬉しかったのを覚えてる。理由は分からなかったけど、すごく嬉しかった。

普通、今まで会ったこともない人に会ってもそんな事思うはずがないのに。だから、私はあなたに私の名前を呼んで貰いたいと思ったし、それが普通のことだと思ったわ。自分でも、どうしてそんなこと思ったのか分からないけど、あの時確かにそう思ったの。………そして、わかったわ。思い出したから。あなたと本当に初めて会ったときの事を。私があなたに対して思ったことを」


「………それはもしかして」


「えぇ、そうよ。あの時………あなたと本当に初めて出会った、あの路地裏の時のことよ」



 私はとても驚いた。


 なぜなら、私はあの時確かに真琴さんに術を施したはず。別に自慢するつもりはないけど、私は私自身の使う術には絶対の自信を持ってる。

 それが彼女があの時のことを思い出したということは、つまりは私の術が破られたということ。



でも、どうして? どうして普通の人のはずの真琴さんが私の術を破ることが出来たんだ?



「あの時、あなたは私の名前を呼んでくれた。例え、私の名字を聞き逃していたとしても、私は嬉しかった。だから、私も知らず知らずのうちにヒカリに対して家族と会話している時みたいに自然に会話をすることが出来た。………それにね。これは私が勝手に思ったことなんだけど、私はヒカリが私と似ているような気がしたの」



 驚愕の表情を浮かべる私をよそに、真琴さんは会話を再開する。その表情はさっきまでと違い、少しだけ普段の真琴さん――いや、ひょっとしたら普段以上に穏やかな表情だった。


 そして、不意に、フッ、と微笑んだ。


「――って、これじゃまるで、私がただ単純にヒカリを私の都合のいいように思っているだけね。本当はもう独りでいることに耐えられなくなって、誰でもいいから仲間を作りたかっただけなのかもしれないわ。………それでもね、ヒカリ。これだけは分かってもらいたいの。あなたは私にとって、初めて出来た友達なの。だから、そんな大切な存在のあなたが、これから危ない目に会うと分かっているのに、みすみすハイそうですかと言ってこのまま帰るわけにはいかないの」



 そう言うと、真琴さんは一度涙でクシャクシャになった顔で私が今まで見たことのない、日だまりのような笑顔で笑った。


 その笑顔を見た瞬間。私の中からなんとも言えない、暖かい――本当に暖かいものが溢れだしてきた。


 そして、分かったんだ。私だけが真琴さんを友達だと思っている訳じゃないんだって。


 自然と顔が綻ぶ。さっきまでの不安が嘘のように遙か彼方へ吹き飛んでいった。


 心が暖かい。今までに感じたことのなかった、本当に優しい何かが私の奥深くから溢れ出して、私を包み込む。



 私も真琴さんに笑いかける。



「ズルいですよ、真琴さん。そんな事言われたら、一緒に連れて行かない訳にはいかないじゃないですか」


「当然よ! この私がここまで言ったんだから」



 そう言いながら、真琴さんは私の胸元から両手を離すと、そっと涙を拭った。

 声の調子もいつもの強気な感じに戻っている。



 私はそれに気付き安心した。


 しかし、次の瞬間。緩みきってる頬を引き締めると、真琴さんに尋ねた。


 どうしても真琴さんに聞いておきたいことがあったから。



「………真琴さん。一つ、聞いてもいいですか?」


「うん。何かしら?」



 私の真剣な表情を見ても真琴さんは動じることなく、私に微笑みかけた。


 私はそんな彼女を見て再度緩みそうになっている、頬を一層引き締めると、言葉を続ける。



「真琴さんが私と一緒に行きたい理由は分かりました。ですが、私と一緒に行くと言うことは、これから危険の真っ直中に入るということです。それでもいいんですか?」



 そう言うと、真琴さんは可笑しそうに腹を抱えながら笑った。



「あはははは、なぁ〜んだ。なにかと思ったら、そんなこと?」


「そ、そんなことではありませんよ!! 本当に分かってるんですか? もしかしたら、命を落とすかも知れないんですよ!」



 私は笑いながら、呑気にそんな事を言う真琴さんを驚いた調子しで言い返す。

 すると、真琴さんは笑うのを止めて、首を左右に振りながら両手を顔の横に水平に置くと、やれやれといった感じでため息をついた。



「そんなの関係ないわ。私が行きたいから行くの。危険? そんなの知ったことじゃないわ。それともなに? 本当に私のことを邪魔だと思ってるの」



 そう言うと、少し流し目気味に目を細めて私を見る。



「そんなんじゃありませんよ!! 私はただ、真琴さんを危険な目に合わせたくないだけです!!」


「そんなの問題ないわ。だって、ヒカリが私を護ってくれるんでしょ?」



 真琴さんはさも当然だと言わんばかりに、しれっ、っと返す。



またもや無茶苦茶な事をこの人はさらっと……



「そ、それはそうですけど………でも、私には真琴さんを護りきれる自信がないんです」


「大丈夫よ! それに私を誰だと思ってるの? みすみすやられたりしないわ」



 そう言って、自慢げに胸を張る。


 私は最早反論する気にもならず、ハァ、と一息つくと真琴さんに右手を差し出す。



「わかりました……それじゃ行きましょうか、真琴さん」



 真琴さんはそれを見ると、笑顔で私の右手を握り返してくれた。



「もちろんよ、ヒカリ」



 私たちはお互いに笑いあう。



 暗く明るい神秘的な月光の下、私たちはしっかりと手を繋ぎあっていた。









カラカラカラカラ―――



 不意に私たちのいる渡り廊下に、空洞の空いている物が落ちたときのような軽い乾いた音が、私たちのすぐ側で聞こえてきた。


 驚いて手を離し音のした方へ顔を向けると、月光の光を浴びて青白くなっている無数の棒状のものが当たり一面に散らばっていた。

 よく見ると、辺りに散らばっているのは棒状のものだけでなく、大きいものや小さいものといった具合に実に様々な形、大きさをしたものもあった。



 突然、目の前に上から黒い丸い形をした物体が降ってきた。



 それは、カラン、というやはり乾いた軽い音を立てると、こちらに向かってゆっくりと転がってきた。

 そして、それは顔をこちらに向けたところで転がるのを止め、ぽっかりと空いた二つの暗いくぼみから、私たちをじっと見詰めた。


 私たちは突然の事でお互いに声も出ずに、食い入るようにこちらに向かってきた丸い物体を見詰め固まっている。



カタカタカタカタ―――



 それが喧しくアゴを打ち鳴らす。辺りには虫の音も聞こえず、更には渡り廊下にいるために音が壁に反響して至る所から音が聞こえ、辺りの空間を不気味に包み込んだ。



カタカタカタカタ―――



 それ――人間の髑髏がけたたましくアゴを打ち鳴らす度に、頭が地面から跳ね上がる。



 神秘的な月の光が、怪しげな光へと姿を変える。さっきまでお互いの息遣いまで聞こえていた無音の空間に不気味な音が鳴り響く。見詰める感情の無い二つの黒い窪み。息を呑んで、金縛りが有ったかのように身動きが取れない私たち。



 それはまるで、永遠に続くかと思われるほど長く感じられた。



ここまで読んでいただき有り難うございます。


もう、この後書きにグダグダと言い訳は書きません。全て僕の責任です。


ただ、前回の後書きの続きを書かせて頂くのならば、それはズバリ、「シリアスだったから!」です。


本当に今回は悩みました。

それで、この結果ですからつくづく自分の文章力のなさに嫌気がさしてきます。


話は長くなるし、真琴の思いを語る下りなんか僕の想像を軽く上回って、自ら真琴に「お前、そんなに悩んでたのか」と突っ込んでしまうほど。更には、真琴が全く理解出来ない様な事まで言う始末。


本当に今回は色々と勉強になることが沢山ありました。


前書きにも書きましたが、更新がこんなにも遅くなってしまってすみませんでした。もう、気長にお待ち下さい、とお願いするしかありません。


一応、自分の中で一つの山を越えたつもりなので、次回は比較的早く更新できるかと思われます。(あと、余談ですが、もう一度シリアスな場面が入る予定です。もしかしたら、またそこで更新するのが遅くなるかも(汗))


感想・評価、お待ちしています。どんな小さな事でも構いませんので、是非ともお願いします。真面目にモチベーションが上がるんで……


それでは、改めましてここまで読んでくださり有り難うございました。


次回は、今回の反動で少し暴走するかも知れませんが、どうぞ宜しくお願いします。

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