第7話 嫌われた?
奇跡的にこんなに早く更新することが出来ました!!
今回は前回の話の最後、真琴が悲鳴をあげる少し前から始まります。
「真琴さん!! 何処に居るんですか?! 返事をしてください!!」
真琴さんの夜の白羽学院を切り裂いくような悲鳴が聞こえた直後、私は真琴さんの悲鳴が聞こえた方向へ向かってひた走っていた。
バンッ!!
私は別校舎へとつながる全長約400メートルにもなる超巨大な渡り廊下へのドアを押し開け、さっき感じた霊の痕跡を追って走る。この痕跡を辿った先に真琴さんが居るに違いない。
そう確信した私は、私の出せる最高時速で走る。
ただ………
なんですか!! この異様にクソ長い渡り廊下は!! 一般常識完全に無視じゃないですか!!
もう息が上がってしまった。体はこれまで走ってきた疲労で上手く動いてくれない。けれど、ここで立ち止まるわけにはいかない。
きっと、今この瞬間も真琴さんが危険な目にあっているに違いない!! たとえ真琴さんが、どんなに一般人よりも強いとはいえ、相手は人外の存在。そんな存在に襲われてしまったら、一応多分一般人だと思われる真琴さんといえど、どう足掻いたって到底太刀打ち出来るはずがない!!
私は胸の中に沸き起こる不安を抑えて走る。頭の中にはどうしても最悪のシナリオが流れてくる。そして、そんな嫌な考えを振りほどくように頭を左右に振ってみるも、不安は募る一方だった。
ようやく渡り廊下の終わりである別校舎のドアが見えるくらいの場所に到着した。
もう既に、真琴さんの悲鳴が聞こえてから随分と時間が経っている。
私の中で焦りの色がより一層深まるのを感じた。
真琴さんは無事だろうか………
だが、そんな心配をしている時間など有りはしない。今は一刻も早く真琴さんのもとへ行かなければならない。
たとえその先にどんな結末が待っていようとも………
バカか私は!! 最悪なんて起こらない。私がこの手でなんとしても起こさせたりはしない!!
真琴さんはこの手で護る!!
私はそう新たな決意を固めると、疲れて走るスピードが鈍った自身の体に鞭打ち、またスピードを上げる。
―――その時だった………
「イヤァァァァァァァァァァァアアアアアアア!!!」
真琴さんの悲鳴が月明かりに照らされた渡り廊下に響き渡った。
私はその悲鳴を聞いた途端、驚きの余り足を止め、一瞬目の前が真っ白になった。
間に合わなかったのか………いや、まだ間に合う。絶対に助けるんだ!!
私は止まっていた足をすぐさま動かし、必死で走る。私の頬を嫌な汗が伝い、私の脳裏には絶え間なく最悪のシナリオが駆け巡る。
バンッ!!
「真琴さん!!」
息を切らせながら、力いっぱいドアを開いて中に入る。
すると、目の前には普段の真琴さんからは想像もつかないほど弱々しくうずくまっていた。
その体は常に小刻みに震えていた。
「真琴さん!! しっかりしてください!!」
私はすぐさま真琴さんの傍に屈みこむと、その見るからに弱々しい肩に手を置いた。
すると、彼女は一瞬体を硬直させ、下を向いていた顔をゆっくりと上に上げた。
その顔は酷く青白く、唇も真っ青。瞳も心なしか揺れているようだった。
「……ヒ……ヒカリ……なの……?」
その声からは普段の明るく強気な感じが一切見られず、とてもか細く今にも消えてしまいそうだった。
「はい、そうです! すみません、こんな危ないところで真琴さんを独りにさせてしまって……」
「ヒカリ!!」
私の謝罪の言葉が終わるや否や、突然真琴さんが私の胸に飛び込んできた。
「えっ、ああああの真琴さん??! どどどどうされたんですか??!」
「うるさい!! 一体今まで何処にいたのよ!!」
私は私の胸に抱きついている真琴さんから、確かに彼女の震えを感じ取った。
それと同時に真琴さんの微かな温もりと、女性特有の柔らかな甘い香りが私の鼻腔を通り抜けていく。
そして、こんな状況に置かれているにもかかわらず、私の心臓が大きく高鳴る。
傍から見ればおそらく美少女二人が抱き合った、なんとも絵になる感じであり、男どもの目の保養になること間違いなしの光景であったに違いない。
しかぁーーーし!しかしながら私は男です!! お忘れかも知れないが、青春真っ盛りの健全な(?)一応男子高校生なんですよ!!(ありがたいことに、高校では理事長の彩花さんの配慮によって、私が男であることは生徒の間では秘密にされています)
再度繰り返すようですが、どんなに女性だと間違われる女顔であろうと、どんなに女物の制服やら何やらを着ていようとも、学校の理事長が承認しようとも!!
私は身も心も純度100%(?)の、O・TO・KO、『男』なんですよぉーーー!!
ですから、女性の、しかも学校一の美少女と謳われる真琴さんに、抱きつかれれば当然心臓が高鳴る訳ですよ!!
そんなこんな言っている間にも、更に私の心臓の鼓動が高まり、狂ったように鳴り響く。
火照る身体…
上がる心拍数…
そして、やかましく鳴り響く心臓のビート…
私はまるで自身の身体の中で大太鼓を打ち鳴らされているような錯覚に見舞われてきた。
どうしようどうしよ!! こんなに心臓がドキドキいってたら、真琴さんに聞こえちゃうよぉ〜!! なんか、とっても恥ずかしいよぉ〜〜!!
しかし、ここでヒカリの心理とは全くかけ離れた心理が真琴の中で起きる事となる。
それは………
真琴の耳には確かにヒカリの胸の鼓動がハッキリと聞こえてきていた。
そして、普段の彼女ならこれを使ってヒカリをおちょくったに違いない。
だが、今の彼女は、つい先ほどヒカリの胸の音と同じ『音』を聞いていたばかりなのだ。
そして、更にはその『音』を出す、内臓剥き出しの妖怪みたいな者に追い掛け回され、恐い思いをしたばかりなのだ。
だから、当然のように、ヒカリの胸の鼓動を聞いた瞬間、彼女の脳裏にはあの恐ろしかった記憶が蘇ってきた。
「……いっ……」
「いっ?」
ヒカリは本能的に何やら危険を察知したのだが、とき既におそし………
「イヤァァァァァァァアアア!!!」
「ゴフッ!!」
ヒカリの腹のど真ん中に、現高校生最強の真琴の手加減なしの全身全霊を込めたストレートパンチが炸裂した。
ヒカリはそのまま、つい先ほど自らがくぐったドアを通って、渡り廊下の方向へ後ろ向きに、文字通り吹っ飛んで逝った。
あ、あれ? 私、お空を飛んでるよ! わぁ〜、すご〜い、一面お花畑だぁ〜〜♪ あっ、あっちではチョウチョさんが仲良く飛んでるぅ〜〜♪ それに綺麗な小鳥さんの声も聞こえるよ♪ なんだかまるで暖かな春のお花畑にいるみたい♪ あははははは♪♪♪
ドンッ!! ガタンッ!! ドカンッ!! ゴロゴロゴロゴロ!!
ヒカリはしばらくの間、空を飛行した後、頭から廊下の上に落ち、何度かバウンドして、ゴロゴロと転がった後、
「……うっ……ううぅ〜〜〜……ガハッ……」
チーーーン♪♪♪
むなしく伸ばした右手は、力なく降りる。
ヒカリが飛んだ飛距離はおよそ四メート。
ヒカリは、何処からか自分を呼ぶ声と自分のもとへ駆け寄ってくる音を聞きながら思った。
あんなに力一杯、イヤだといわなくったって………いいじゃない……です……か……
それを最後に、ヒカリは自らの意識を手放した。
ここまで読んで頂き有り難う御座います!!
とりあえず、ヒカリに合掌(いや、別に死んでませんけどね)
それにしても、ここまで読んでくださってる読者の方々、本当に有り難う御座います。こんな物語ですが、今後とも温かい目で見てやってください。
180度話しは変わりまして、つい先日、総アクセス数が1000を突破しました。
なにをそれ位と思われる方もおられるかも知れませんが、この数字は僕自身にとって大きな数字です。
本当に読んでくださる皆様に感謝します。
それでは、長々とすみませんでした。
これにて少し早いですが、明けましておめでとうございます!!
来年もどうぞよろしくお願いします!!