第5話 悲鳴の理由
前回、その場の説明をもう少し書いた方が分かり易くなってよくなる、というアドバイスをいただきました。
なので、今回はそれを意識して書いたつもりです。
もしよかったら、その事を少し注意して見てもらいたいです。
今までと比べて、か〜な〜り短いですが、どうぞ!!
静かな夜。今夜は綺麗な満月だ。空には空気も澄んでいてためか、私達の頭上には満天の星空が広がっている。
辺りからは虫の音一つしない。
私の周りを照らすものは無く、唯一、明かりと呼べる物は窓から差し込んでくる月光だけだ。しかし、今はその明かりは月に雲が掛かってしまい、殆ど明かりと言えた代物ではない。
今私は学校の渡り廊下の上で恐怖のあまり身動きが出来ない状態でその場に佇んでいる。
その理由は、後ろから聞こえる『ドックン…ドックン…』という不吉な音と、時折聞こえる『グチョ…グシュ…』という気味の悪い音が聞こえてくるからだ。
そして、先ほど私の肩を何やら生暖かいものが掴んだ。
今や緊張は極度に高まり、全身から冷や汗が流れているのを自分でも分かる。
私は意を決してゆっくりと振り返る。
まず、最初に見えたのは私の肩を掴んでいる何やら生暖かいもの。 それは、どうやら人の手のようだ。辺りが薄暗いためハッキリとは確認できないが、人の手で間違いない筈だ。
更に私は後ろを今度は少し目線を上に上げつつ振り返った。そこには、顔の左半分は月の角度のためか暗くてよく見えないが、顔のもう半分は見ることが出来た。
間違いない。この人は人間だ。おそらく、学校の警備員の人だろう。大方、こんな遅い時間に生徒が学校をウロウロしているのを見つけたために注意しに来たのだろう。
私は極度の緊張から解放され、思わず安堵のため息が零れる。どうやら、人間では無いと感じたのは気のせいだったようだ。きっと夜の学校なんかにいるから、出てくるのは勝手に怖いものだけだと勘違いしていたに違いない。
人間だと気づけば何も恐れる事はない。
私は完全に後ろへ振り返り、その人と向かい合わせになるような形をとり、とりあえず謝ることにした。
「すみません。こんな遅くまで学校に居て……ちょっと生徒会の仕事が長引いてしまって……あの、友達が何処かに居るはずなんでその人を早く見つけて直ぐに帰ります」
実は、生徒会の仕事でこんなに遅くまで残っていたと言うのは、嘘。本当はヒカリが、今夜学校に行くと母さんと話しをしていたのを盗み聞きしていたのだ♪
とりあえずそれだけ言うと、私は頭を下に下げた。
「……………」
しかし、その人は無言のままだった。
私はそれを不思議に思い頭を上に上げる。
その時だった。
今まで月に掛かる雲の影響で見えなかった顔の左半分が、雲が動くのに合わせ、ゆっくりと姿を現した。同時に今まで気にも留めなかった、胴体の周りも顔が見えるのに合わせてゆっくりとその姿を現した。
私はその人の姿を見て、思わず息を止め、再び硬直した。
なぜなら……その人の顔の左半分は……体の左半身は………そして……胴体には………本来、人間の体を覆う“モノ”が無かったのだ……
つまり、その人の左半身と胴体には皮膚が無かったのだ。
そう、顔の左半分は本来見る事の出来ない細く無数にある筋肉がハッキリと露出し、眼球は飛び出し、その口には綺麗に並ぶ歯が唇が無いためにズラリと並んでいるのを確認することが出来る。更には、額の辺りから上は頭蓋骨が外され、ブニョブニョウネウネとした脳ミソをがハッキリと顔を出している。
胴体のほうはそれより更に酷い。胴体も本来覆っている筈の皮膚が無く、所々欠けた肋骨が顔を覗かせている。そして、欠けた肋骨の下からは、見ているだけで吐きそうになってしまう人間の臓器が所狭しと並んでいる。
ドックン……ドックン……
その臓器の中でも最も目に付くのが、私の耳に先ほどから届いていた音を出す箇所……人間の『心臓』だ。
動いてる………
私はいささかさっきまで聞こえていた音の正体を知って気分が悪くなってきた。
よく見ると、動いているのは何も『心臓』だけでは無いことに気が付いた。
目に見える範囲でそれを確認出来るのは『肺』、『胃』、『小腸』に『大腸』………どれも殆ど同時にウネウネと動き、その動きに合わせて『グシュ………グチャ………』という何とも形容し難い音も聞こえる………更には臓器と臓器の間から、不気味な液体も流れている………ハッキリと言おう………リアルだ………どれもこれも、リアル過ぎる………どこうをどう見ても人の内蔵にしか見えない………
私は驚きと恐怖の為に悲鳴を上げることさえなく、ただただ立ち尽くすのみである。
いや、強いて言うならば悲鳴を上げようとした。しかし、その悲鳴はまるで喉に詰まったかのように喉に引っかかり、悲鳴を上げることはおろか、声さえ出ない状況に陥ってしまっていたのである。
ギギギギギ………カシャン………
突然だった。
突如“ソレ”は私の方へ両腕をまるでゾンビの如く前に突き出し、私のもとへ一歩踏み出した。
途端に私の中の何かが吹っ切れた。
「キャーーーーー!!」
殆ど無意識だった。私は“ソレ”が一歩踏み出したのを確認した瞬間、悲鳴を上げて私の後へ向かって走り出した。
私の頭は最早恐怖で埋め尽くされている。何も考えられない………ただ、本能のままに走っている………
私は一心不乱に渡り廊下の端の別校舎へとつながるドアに向かって走った………
ギギギ、カシャン…ギギギ、カシャン…
走る私の右隣から、私と同じペースで音が聞こえてきた。
見てはダメ! 振り向いちゃ絶対に絶対にダメよ!!
しかし、そんな本能とも直感ともとれる危険シグナルが脳内で発令されるが、つい見てしまうのは人の怖いもの見たさという好奇心のせいなのだろう。
右隣横を見ると、言わずもがな、人に似た“ソレ”が、私と同じ速度で走っている。
すると、“ソレ”は私の視線に気が付いたのだろう、飛び出している眼球が、ギョロッ、と動いて私を見据え、唇の無い口を薄気味悪く、ニタッ、と歪めてきた。
顔は正面を向いたままなのに………
「ヒッ!!」
私の顔は自分の意志とは裏腹に乾いた口元が完全に引きつっている笑みを浮かべる。
そりゃもう、びっくりするぐらいピクピクと口の端が動いているのが解るくらい盛大に……
人というのは、本当に恐怖を感じたとき思わず笑ってしまうって言うけど……まさか、今それを自分が実際に体験するとは………
兎にも角にも、私はそんな正面を向いたまま眼球だけ、ギョロ、とこちらを見据えて、歯だけが見える異様な口で笑っている人が、いや、人の姿をした………そう、いわば妖怪のような者が横で走っているのを確認すると、更に走るスピードをあげた。
だって、普通そうよね?! 普通こんなのが隣を走ってたら、それも自分を追いかけるように、しかも、正面向いたまま眼球だけ動かす人間離れした、寧ろ人とは思えない動きをして、唇の無い口で、不敵に笑いかけて来てたとしたら………逃げるのは当然でしょ?!当然の行動よねぇ?! 当然だと思わない人がいるなら直ぐに出てらっしゃい!! 今すぐにでも変わってやる!!
私は只、我武者羅にひたすらに死に物狂いで走る。
そして、ついに渡り廊下の最終目的地点である別校舎へと続くドアが私の眼中に入る。
ハァ、ハァ………もう少し………もう少しで………
流石に息も上がってきた。全力疾走で、しかも恐怖に駆られながら約400メートルにもなる超巨大渡り廊下を走るのは、流石に堪える。
ていうか、約400メートルてどういうことよ!! 学校がデカイって言っても限度ってもんがあるでしょ!! 御爺様とパパと母さんのバカ、バカ、バカァ〜〜〜!!!
ドアはもう目と鼻先。
私は最後の力を振り絞って走る。
そして、ドアが開いた。
ん? 開いた?! 私まだ、ドアの所までたどり着いてないのに、独りでに?!!
いや、訂正しよう。ドアは独りでに開いたりはしていなかった………ドアの内側に居たのは………
「が、ガイコツゥゥゥゥウウウウ???!!!!」
ドアの内側には、びっくりするぐらいスカスカの人間のガイコツがアゴを、ガチガチと鳴らしながら立っていた。
余りの骨の白さに、窓から入ってくる月光を反射して、青白く光っている。
あは……私、このまま気絶しちゃってもいいわよね?
ここまで読んでいただき有り難う御座います!!
少しは分かり易くなっているでしょうか?少しでも分かり易くなっていれば幸いです!!
それにしても、今回は短くてスミマセン………
書いている途中で思ったんですけど、やっぱり更新を早くするには『量より数』ですよね!(←今更かい!!)
なので、今回からは『短く、たくさん』を目指して頑張りたいと思います!!
因みにですけど、次の話は今回の話と途中まで同じ所で書いていましたので、もう既に八割がた出来上がっています。ですから、二〜三日中には更新出来ると思います!!
それでは改めまして、ここまで読んでいただき有り難う御座います!!
是非とも、次の話も読んで下さい!