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第19話 ある意味お約束?

「ぶははは。おっ、お腹イタイ。よ、よじれ……ぷぷぷ、ぷはははは、ゲホゲホ、あはははは――」


 はっと気がついて最初に聞こえたのは、愉快そうに笑う笑い声。

 それもかなりの爆笑で、時々笑い過ぎてせき込んでいるのがわかる。

 どうして笑っているのかは知っていますが、なにもせき込むほど笑わなくたっていいじゃないですか。


「うぅ……」


 ……痛い。それもかなり。特に頭部と顔面が痛くて溜まりません。

 しかし良かったですよ、本当に。なにせさっき自分自身を見下ろしていると知ったときは、流石に死ぬかと思いましたからね。

 いや〜、それにしても、一体私は何度、それも敵でない味方であるはずの真琴さん達に殺されかければいいのでしょうね?

 よくよく考えれば、たった一晩で軽く三度は向こう岸を見ましたよ。

 もう、あんなのは今後しばらく拝みたくありませんね。


「ハァ、ハァ……」


 私の頭上から誰かの荒い息遣いが――って言うまでもないですね。

 私のちょうど頭上で、真琴さんが今し方激しい運動をしてきたかのように荒々しく息遣いしている。

 そんなにイヤだったんですかね?


 ……そんなことよりもいい加減に起きなきゃいけませんね。そして早く止血をせねば。


 起き上がろうと両腕に力を込める。ああ、頭が割れそうです。ぐわんぐわんします。本当に久しぶりですね、こんな重い一撃を食らったのは。勘弁して下さい。


「いたたた……」


 顔もすっごく痛い。特に鼻なんて、先っぽがへし折れているか、へっこんでいるんじゃないかと思うほど痛いです。


「……ふぅ」


 体を起こすと正座で座り、一息。そっと後頭部を触ってみたら、大きな突起が三つ。どれもこれも触った瞬間に鈍い痛みが走る。しかも、その内の一つは未だ熱を帯びていた。


 ……このケガ、全部真琴さんのせいですよね?


「……まだ、起き上がる力があるのね」


 その時、地獄の底から聞こえてきたのではないか、と凍えるほどの鋭い殺気を滲ませた低音が、ちょうど私の頭上から響いてきた。

 途端に蘇るあの絶対零度の冷気。

 さ、寒すぎて凍りそうです!

 べっとりとした脂汗を全身から滲ませながら、私は顔を上に上げる。


「……すぅ」


 うわっ! 左半身で腰を落として構えていますよ。しかも、呼吸まで整えて気を溜め始めましたね! そんなに私が言ったことが不味かったんですかぁああ!?


「え〜と……」


 正座の状態のまんま、視線をさまよわす私。飢えた猛獣のようなギラギラとした眼光を放ち、私を亡き者とせんという勢いで見下ろす真琴さん。そんな私たちを爆笑やら珍しいものを観るような目で見ている学校のお化けトリオ。


 ……すんごいカオスだ。


「ぶひゃひゃひゃ、お腹がこ、こわははは、壊れる〜」


 さっきから一体いつまで笑い転げているんですか。軽い殺意が湧いてきましたよ。

 まったく、顔をものすごく赤くして、イモムシみたいな状態でところ構わず転がらないで下さい。はっきり言って気持ち悪いですよ。

 それに元はと言えば、あなたのせいでもあるんですよ? そんなところで無責任に笑ってないで、ちょっとは私を助けて下さい!

 ちょっと視線に力を込めて、SOS信号を三人トリオに送る。速くどうにかしてくれ、と。私にはどうにも出来ないんですよ、と。

 その視線に気がついたのか、床を転げまわっていた雪ちゃんが動きを止める。そして、私を見る。


 ニヤリ


 雪ちゃんは口元の端を不敵に釣り上げ、私をしげしげと見詰めてきた。それもかなり意味ありげな顔で。

 この瞬間、私は彼女に対して純粋な殺意が芽生えたのは言うまでもありません。

 そんな私の思考を読んだのか、はたまた露骨に表情に出ていたのかは私には分かりませんが、より一層雪ちゃんは顔一杯にニヤニヤとした実に憎たらしい笑顔で私を見始めた。


 ……そんなに私が絶対絶命なのが楽しいのかっ。


「ヒカリ。覚悟は出来た?」


 出来てません出来てません出来てません、出来てませーん! そんなの出来ているわけないじゃないですか!!

 また視線を真琴さんに戻す。彼女はさっきと変わらぬ姿で私を見下ろしていた。嬉しい事にさっきと違い全身から『準備満タン、いつでもれるわよ』みたいな声なき声が発せられている気がしてなりません。わぁーい、感激で泣きそう。

 急いで真琴さんから視線を外して、雪ちゃんを見やる。ありったけの力を込めて、視線で助けを求める。もう、『見やる』とか言うレベルではなく『凝視』。ええ、もう『凝視』です。それだけ本気で助けを求めているんです!


「なに、よそ見しているの?」


 ばっ、と再び真琴さんを見る。『覚悟は出来た?』と真琴さんの目が語っています。だ、誰かぁああ!!


「ほらほらまっこん」


 そんな時、思わぬ事から救いの手が。か、神はまだ私を見捨ててはいなかったんですね!

 脂汗を拭いもせず、私は声の発した方、やっと笑うのをやめグルグル巻きにされた状態のまま、身体をこちらに向けている雪ちゃんを見る。

 彼女は見るからに、やれやれ、といった感じで口を開く。


「痴話喧嘩もいい加減にしないとダメだよ? そりゃ見てるこっちは、もう愉快で愉快でたまんないんだけどさぁ〜。流石にもう、アツアツでお腹一杯だよ!」


 ……やっと助けてくれたかと思えば、なに言っちゃってんですか、このお化けさんは。


「なっ、なっ、なっ――」


 ほら。そんな事いうから、真琴さんの顔からまたマグマが噴出していますよ。

 

 ……え? 私ですか? ちょ、ちょっと体とか顔から火が出そうなほど熱いですが、全然恥ずかしくなんかないんですよ? ホントですよっ!


「そんなバカみたいな事、この私がするわけないじゃない!! 私はただ、ヒカリが――」

「はいはい、まっこんはそんなことしませんよねぇ〜。よぉ〜く、知ってるよ」

「私をバカにしてるの! いい? 言っとくけど私は、ヒカリのことなんてなんとも思ってないんだからね!」

「あっ、自分で墓穴掘ってやんの♪」

「ち、違う! 違うのよ、今のは――」

「はいはいはいもう十分熱いのはわかったって。ちょっと落ち着いて」

「だから、私は――」

「はいはいはいはいはーい、はい! まっこんのことはわかったから。も〜十分わかったら、ね? と言う訳でさー、ひかりん」

「は、はい!」

「無視するなーーーー!!」 


 なにやら横で喚いている真琴さんを華麗にスルーすると、雪ちゃんは私のほうへ視線を向けた。


「いい加減に、この鬱陶しい糸束をほどいてよ! 結構きつきつで痛いんだよ?」


 まっこんだけ解いてズルイ、と雪ちゃんは拗ねたような顔をする。


 ……そういえば、真琴さんのはいつの間に解けていたんでしょう?


 やっぱり、私がさっき真琴さんに術を施したときかな? なら、気がついてもいいんだけどなぁ。

 とにもかくにも助けてあげないと。いつまでもそんな状態にしておくわけには行きませんしね。


「分かりました。ちょっと、待っていてくださいね」


 そう言って私は立ち上がり、学校のお化けトリオのもとへ行った。









 糸を解こうとしたとき、ふいに雪ちゃんが話しかけてきた――


「ところでさ。ひかりんはまっこんのことどう思っているの?」

「は、はい?」

「いやね〜。ひかりんは、まっこんのこと、どう思っているのか、な〜、って」

「ななななにを突然言い出すんですか!」

「いや〜、ちょぉ〜と気になってね。で、どう思ってるの?」

「そ、そりゃ、その、真琴さんは強いですし、頭も良くて、運動や他の事も同じ高校生とは思えないほどすごくて、ものすごく優しくて、私なんかの友達にもなってくれて。だ、だから、私は真琴さんがすごく好きで。あっ! いや、好きと言うのはですね、別に友達として好きなわけで、あの、その、異性としては、その……」

「ふ〜ん。ひかりんもかー。なんて言うかさー、二人ともベタ過ぎるよね。今時、ここまで予想通りのわかりきったセリフを聞く機会のほうが少ないよ。ていうか、べた褒めだね♪ それだけ、むっちゅー、てことかー」

「ななななななんなんですか、一体!!」

「ん〜ん。べっつに〜。これ自体には、そんなに深い意味はないよ。むしろ、わかりやすいぐらい浅いと思うよ。主に反応とセリフが」

「だ、だから、それの意味がよくわからないですよ」

「そのセリフは、顔を赤くして動揺している人が言うセリフじゃないと、あたしは思うんだけどなぁ。そうは思わない? それに第一、ひかりんがまっこんのことをスキとかキライとか訊いた覚えないんだけどなぁ」

「――――っ!!」


 しまった、と思ったときには既に時遅し。

 ニタニタと実に憎らしいほど清々しい笑顔で雪ちゃんは続けざまに口を開いた――


「だってさ――――まっこん♪」


 ――私の背後にいる真琴さんに。

 そこで私はようやく真琴さんの存在を思い出した。

 さー、と血の気が失せ、同時に今度は、だー、と汗が噴出してきた。体と顔もかなり熱い。

 私は、首をぎちぎち鳴らしながら、背後にいるであろう真琴さんのほうを振り返った。


「――い……」


 胃? いやいやいや、何考えているんですか、私は。そんな親父ギャグ、今時まったく笑えませんって!

 ええ、わかっています。もちろんわかっています。今のはただの現実逃避なんだってことぐらい。

 ああ、真琴さんが顔を真っ赤にさせて、肩で地震が起きています。

 哀しきかな。この状況を見ただけで、次、何が起きるか分かってしまうなんて……


「――い、いいから……」


 ああ、ほんの数分前にこの世に戻ってこれたばかりなのに。もうこんな展開はごめんだと、ついさっき思ったばかりでしたのに。

 そもそもこの展開は何度目なんですかね。いい加減に辛いものがありますよ。色々な意味で。でも、こうなってしまったのは、仕方ないと受け入れるしか私には選択肢が存在していないんですよね。

 そう思った私の頬を伝ったのは、体の熱による汗なのか、それとも、諦めの涙なのか。


「――さっさと、その糸をほどきなさーーーーい!!」


 真琴さんのしなやかで、それでいて強靭な、とても細い右脚が、カカト落としのときと同等かそれ以上の白い霧を伴って、私の横腹へ飛んできた。

 ――今度こそ。グッバイ、現世。


「ぐほおっ!!」


 まもなく、強烈な回し蹴りが私の横腹へめり込んで、私は吹き飛ばされてしまった。

 い、痛い、です。な、何故、こんなにも強烈なんです、か。しかも、だんだんと、威力が、上がってきてますって。

 宙に舞いながら朦朧と私は思った。

 これ以上これ級の攻撃を受けてたら、確実に天に召してしまう、と。

 真琴さん。ツッコミにも力の限度というのを考えてくださいよ。本当に。

 一見、何事もなくしゃべっていますが、それは既にいろいろとヤバイからなんですよ? そこらへん、そろそろちゃんと理解してください。


「あはは。まっこんたら照れちゃって。かあいい。この小学生男子め♪」


 ――――本当に、いや、切にし理解してください。お願いしますから、これ以上火に油を注ぐような事は、もう言わないでください。そのとばっちりを、私は文字通り体で受けなくてはならないのですから……



 そして、私はまた地面にくしゃりと落ちた。もちろん、だれも助けに来てくれなくて、荒い息と笑い声だけがまた、まっくらな渡り廊下に響いていた。


みなさま。どうも、お久しぶりです。


え、え〜と、あの、その……本当に遅くなってすみませんでした!!


最後に更新してから、およそ二ヶ月強。しかも、以前の僕ことkimiは「あと一話くらいGW中に更新できるかも♪」とか調子ぶっこいて、この結果。

いや、もう本当に申し訳ありませんでした。


あ、お気づきの方も既におられるかと思いますが、ペンネームを変更しました。もっとも『キミ』自体は変わっておらず、他の言葉を増やしただけなんですけどね(汗


まあ、遅れた理由はないこともないので、一応言います。というか宣伝します。

実は僕、二作ほど七夕小説企画の小説を投稿しました。

そのうち連載の方は、あらすじがあれな感じになっていて、ジャンルをファンタジーにしていますが、ファンタジーなんかよりも、恋愛色の強いラブコメとなっています。

もしもよろしければ、一度目を通してみてください。そして、メッセージでも感想でもいいので、一言でも何か感想をいただければと切に思います。


……すみません。話が脱線してしまいました。


ところで、今回はどうだったでしょうか。

本音のところ「またこのオチかよ!」と思われた方も少なくはないのでしょうか。

ええ、ぶっちゃけますと僕もそう思います。しかも、かなり。


だって、だって、本当はこんなオチのはずじゃなかったのに!!(と叫んでみる/笑


一体、どこでこうなったのやら。当初のオチとしては、ヒカリがメリーさんに弄り倒されて自爆する――という、よくあるパターンだったのですけどね。真琴も自爆していますし(笑


ま、まあ、このパターン「☆★妖魔封印物語★☆」のある意味お約束のオチということで!


もう、気にせず行きましょう!!(←超開き直り


……やっぱり、ダメ、ですよね。そうですよね。考えます。


で、でも、あの三人がいけないんだっ!!(と、また叫んでみたり



いつものごとく長くなってしまいましたが、この辺で。

次回更新するまで、どれほどの時間が空くかどうかわかりませんが、どんなに遅かろうと僕は最後まで書き上げますので。


では、今回の話を読んでくださって、ありがとうございました!!


次回もどうぞよろしくお願いします。

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