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第15話 糸は漂う、ひらひらと


え、ええっと……


おっ、お久しぶりでs(殴


いや、なんと言っていいのやら……


あれです。とりあえずごめんなさいっ!!


春休み中にたくさん更新するといいながらせず、挙句およそ一ヶ月もの間更新すらせず、本当に申し訳ないです(ふかぶか


ど、どうか、こんな更新速度が激遅な、亀野郎を見捨てないで下さいっ(必死な形相でっ!


あ、あと、色々と書き方が変わっています。

おそらく、完結した際には全話を今回のような形に書き直すかもしれません。


それでは、拙い文ですがよろしくお願いします!

 未だ女の人が生み出し、私の手によって壊された無数の糸がそこ彼処に漂っている。

 それらは渡り廊下の窓から零れる月光の光を受け、きらきらと光り、実に神秘的で幻想的な空間を生み出している。

 他に動くものは何一つない。

 戦いの後、命の削りあいの後の静かな、それでいてどこか哀しい余韻が残る。

 それは言うなれば、ある種の喪失感。命を奪う、という焦燥感。互いにけっして交わる事ができない空しさ。――なのかもしれない。


 それはそうと、難しく言うって、なんだかおかしいですね。


 つまり私が言いたいことは、きっとそう。



 ――――無くした、といこと。



 これが一番合っているかな? 正直あまりよくわかりませんね。

 なにはともあれ、また一つ終わった事は確かだった。



 それが、今後、どのような結果を招くかは別にして。





「ハァ、ハァ、ハァ――」


 これで……終わりです……

 息が荒い。どうやら今まで無意識の内に息を止めていたみたい。

 肺が酸素を求め、体からは無数の汗が噴出し、無理をした両足がひどく痛み出す。

 私は両足の膝に手を着くと、息を整え始める。


「うぅ……」


 胸が痛い。

 見れば、そこには裂かれた服に赤い染み。けれど、それほど大したことはない。あの女の人の力を考えればよくこれだけで済んだなぁとさえ思ってしまう。


「けど……」


 なにか腑に落ちない。明らかにおかしい。

 あの女の人の力は確かに本物だったと思ってまず間違いないでしょう。今回のこの事件の犯人にも間違いはないと思います。そんな彼女に、私は確かに攻撃を加え、倒した。それも間違いはないと思う。

 けれど――


「――弱すぎる」


 そう。確かに彼女は弱すぎました。倒しておいてなんですが、正直拍子抜けです。

 そりゃ、あの攻撃をもろに加えられれば、それも当然かもしれません。現にさっきまでの気配は消え、今は他の不穏な気配を感じる事はないのですから。

 むしろ気は穏やかだともいえます。

 それでも、この腑に落ちない感じは何故か拭いきれません。


 第一理解できないことが多すぎます。

 あの余裕の笑み。悠然とした態度。あの言葉。そして、どんなに押し隠していても溢れ出していた、あの内に秘めた何か。

 わからない。なんだったんでしょう、一体。

 はっきり言って今の私の力では、勝つか負けるか、どちらに転んでもおかしくない、むしろ負ける確率の方が高かったものでした。

 そしてなにより――


「――なにより、初めて感じたときのあの感触。それがなかったなんて……」


 それが一番理解できない。

 あの時初めて感じた、あの冷たく絶望の淵に叩き落されたかのような身も凍る感触。

 それが、あまりにも――いえ、まったくあの女の人からは感じられませんでした。

 それこそ似たような感触は感じたものの、あの感触にはほど遠かったような気がします。


「おかしい。一体、どうなっているんでしょうか?」


 考えれば考えるほどわからなくなってきました。

 あの、女の人は一体……


「ヒカリ!」

「ひかりん!」

「ヒカリサン!」

「カッチカチ!」


 私を呼ぶ声に一旦、思考を止める。

 声がした方を見ると、嬉しそうに私のもとへ駆け寄ってくる人たちの姿が目に入ってきた。

 みんなそれぞれに満面の笑みを浮かべている。

 それぞれに、というのはもちろんそれなりの意味がありまして、真琴さんと雪ちゃんは文字通りの満面の笑みなんですが、残りの二人は明らかに恐怖をそそられる顔だったんです。

 なんせ、あの二人は人体模型とガイコツの模型ですからねぇ。ジン太君のあの、顔の半分がズル剥けの状態で目をぐるんぐるんと回されているのを見ると、恐怖しか生まれてこないですから。いえ、あれはもはや恐怖じゃなく気持ち悪い以外の何物でもないですよ。

 ガイ子さんなんて、もはや笑っているのかすら危ういし……いや、一応は笑っているみたいです。アゴ打ち鳴らしているし。

 うえ……なんだか気持ち悪くなってきました。


 私は込み上げて来る吐き気を何とか押さえ、何とも言えない苦笑を浮かべると、右手を上げ真琴さんたちの笑顔に答える。



 ――その時。



 私は自身の目を疑った。

 現れたのは、さっきまで見ていた、あの白い糸。

 その糸が真琴さんたちがいた側の渡り廊下の奥から、シュルシュル、という音とともに伸び、無常にも真琴さんたちを縛り上げた。


「キャァァアア、なんなのよこれ!!」

「うぇーん、ネバネバしてるよぉ」

「カッ カンセツガ ヘンナ ホウコウニ マガッ テマス!!」

「カチ?」


 その糸に絡め取られ、真琴さんたちは一斉に渡り廊下に倒れこむ。

 真琴さんと雪ちゃんは、そのネバネバとした糸から逃れようと、むやみやたら手足を動かし、ジン太君は関節を変な方向で縛られて身動きが出来ない状態。ガイ子さんに限っては、糸に縛られる事なく、その勢いによって体をバラバラにされて、何が起こっているのかわかっていないよ様子。

 その糸を見て、私は考えを改める。

 あの糸が、先ほどまで戦っていた女の人と同じもの? …………違う。あんなものとは、まるで比べものにならない。

 その力。その妖気。――――そして、その美しさ。

 格が違い過ぎます。……一体、なんなんですか……


 私は急いで、糸が伸びてきた暗闇を見る。


「だから言ったであろう、『あまい』、と」


 その言葉とともに渡り廊下の奥、暗闇の中からあの先ほど倒したはずの女の人が悠々と歩いてきた。


 ゾクッ


 刹那に蘇るあの感触。冷たく冷酷で、そして尚且つ残虐。あるのは死という簡単で重い一文字。

 ナイフが心臓へと突き立てられているみたい。


「どお……して」


 声が震えて上手くしゃべれない。声だけじゃない。身体も、そして心も震えている。この震えは寒さから来るもの。けれど、もちろんただの寒さからではない。普段の生活、生き方をしていればけっして感じる事ない寒さ。


「どおして、とな?」


 不敵に嘲笑うと、女の人は一言、私に向ける。


「簡単な事。そちが倒した者は真の我ではない。ただそれだけの事。どこも難しいところなどない」


 そう言うと、女の人は口の端を吊り上げわたしを見る。


「あれはわれが我が糸で紡ぎ、生み出した単なる糸の人形よ。……どうであった? あれはよく出来た人形であったろ?」

「……にん、ぎょう?」


 その通り、と女の人はせせら笑う。

 ――その一言は、あまりにも唐突で、私を堕すには十分すぎる威力を持っていた。


「そう。あれは我をかたどった大した力も持たぬ糸人形。そちはただ、我が人形を滅したにすぎぬのだ」


 そう言った女の人はそうも変わらぬ顔で私を見る。

 わたしは重い鈍器で殴られたみたいに視界が真っ暗になった。

 信じられない。信じたくない。…………けど、これでようやく合点がいった。

 なぜ、倒したのに納得がいかなかったのか。なぜ、さっきまでの女の人があんなに弱かったのか。

 ――なぜ、さっきまでとは比べものにならない妖気を持つ、瓜二つの顔をした女の人が姿を現したのか。


 それが解った途端、身体が動けなくなってしまった。


 女の人が再び歩き出す。氷のような冷笑とともに。

 それでも私は動けなかった。

 未だかつて、感じたことのない殺気が雹となって私を襲い、私を動けなくしてしまった。


 がちがちがち


 当てられる寒気に歯の根が合わない。

 手足は震え、目の前が暗くなる。

 けれど、そんな私を見ても顔の形を変えずに女の人は刻一刻と迫ってくる。

 このままじゃ危ない。

 そう思って体に力を込めようとするものの、身体はちっともいう事を聞いては聞いてはくれない。


「くっ」


 動けよ身体。お願いだ、動いてくれ! このままじゃ……このままじゃ、みんなあの女の人に殺されてしまう。


 けれど、無常にも体は一向に動いてくれる気配を示そうとはしてくれない。ただただ、体の震えが増すばかり。


 動け動け動け動け動け動け動け動け――――動けえ!!


 しかし、私がどんなに動こうと思っても、体が私の意志に反し、ピクリとも動けない。

 それはまるで一本の幹。足は地面に根を張り、けっして動く事を許さない。


「くっ…そ……!」


 冷たい冷や汗が顔と言わず、全身から溢れ出し、袴を濡らす。

 胸の痛みなど感じない。感覚が麻痺してしまった。味覚も触覚も聴覚も嗅覚も、まるで機能をしていない。

 唯一、かろうじで機能をしている視覚は、あの女の人しか見えていない。否。見れない。視線を外そうものならば、それはすなわち死を意味する。

 蛇に見込まれた蛙、とはまさにこの事かもしれない。そんなどうでもいい事だけが、脳裏をかすめる。


「まったく。こうして我が姿を見せるまで、我に気付かないとは……。神寺が聞いて呆れる」


 女の人は歩くのを止めると、目を細め落胆したような口調で私を見やる。

 その細めた目で、わたしを品定めするように、そして何かを試すように見ている。


 それに何故、わたしの名字を? まるで、わたしを知っているみたいに……


「不思議そうな顔をしておるな。何故我がそちの名を知っておったのか、であろう」


 私の考えを正確に読み取ったように、女の人は話し出す。口調は変わらぬものの、その目は鋭さを増した。


「忘れるはずがない。なにせ、その神寺という名は、我をこの場に封じ込めた、あの忌々しいあやつの名であるからな」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

 なんですか、それは。この女の人を封印した人? 一体、何を言っているんですか?

 些かめまいを感じて、頭がくらくらしてきた。

 もし、この女の人が言った事が本当ならば、それは何百年も昔の話になります。それに、その人にこの女の人が封印されていた? そんな話、今まで聞いたことがありません。

 ただ、一つだけ理解できた事は、そう言った途端女の人雰囲気が急変した、ということだけ。


 女の人は尚も言葉を続ける。まるで、そうする事によって、名前も知らないその人に対する憎悪を思い出すかのように。


「忘れてなるものか。あやつも。そして、その力も」


 女の人の口の端が吊り上る。


「その神をも使役する力は、あやつが使う力。そして、その力は古来より神寺使う力」


 女の人は右腕を払うと、その手の先の爪が伸び、鋭く尖って突き出す。


「嗚呼、思い出すだけでも憎たらしい。あやつのあの澄ましたような顔。我を見下し、その上我の力とともに我をあの下賤げせんな者どもと一緒に封印しよった」


 そう言いながら、あの女の人は再びこちらに向かって歩き出す。口元を薄っすらと歪め、更に細めたナイフのような目で私を見る。

 そう。その目はまさに、かつて己を封印した者が自分に向けていたように、私を見下していた。

 私と女の人との距離は残り僅か。

 動こうにも、未だ身体は私の言う事を聞いてはくれず、その場から一歩たりとも動こうとはしてくれない。

 また、さっきよりも増して頭痛が激しくなり、今にも意識を手放しそうになる。

 冷や汗が頬を伝い、地面へと落ちる。


「ほう。我が妖気をこれほど長く当てられ未だ正気を保っていられるとは。さすがはあやつの子孫、と言ったところか。

 じゃが、どうやらそれが精一杯で身体が思うように動かないとみえる。しかし、安心せよ。それは虫けら同然のそちらには仕方がないこと。それこそが、弱き人が取る正しき行動よ」


 女の人が私の目の前で、その歩みを止める。


「しかし、なんとも残念であるな。久々に我の相手をするに値する奴かと思っておったのに」


 それほどがっかりとしたような表情を浮かべずに女の人は私に言う。それどころか、口元を薄っすらと歪めたその表情は、まさに見も凍るような冷笑と言うに相応しかった。


「私を……どうするおつもりですか……?」

「ふっ、知れたこと」


 搾り出したその震えた声を聞くなり、女の人は笑い、その鋭く突き出た右手の爪で、私の大腿部へと突き刺す。


「くっ!」


 刺さった箇所からは血が溢れ出す。

 私はその痛みに思わず顔を歪める。


「残念な事にあやつはもはやこの世にはおらん。だが、そちはあやつの子孫であろう。なにせ、そちの気はあやつによくにておるからの」


 そう言いながら、女の人は更に右手に力を込め、その爪を私の大腿部の奥へと突き立てていく。

 思わず口からは苦痛に呻くが漏れ、爪が深く沈むに伴い、更に血が溢れ、下へと流れていく。

 私はその増した激痛とも言える、その痛みに耐えるように顔を更に歪める。


「あやつの変わりに八つ裂きにしてくれる。それで少しは気が晴れるであろう」


 心底楽しそうに私の耳の側で囁く。

 なすがままにされている自分に腹が立ち、私は強く唇を噛む。

 なんて情けない。こんな簡単なことに全く気がついていなかったのだから。

 私の中で、絶望という言葉が渦巻く。



 ――その時。




「――――やめて」


 突然の聞きなれた、けれど震えたか細い声が聞こえてきた。

 振り向けば、女の人の糸によって縛られた、美少年のような顔立ちをした彼女が目に映る。



 その彼女は、彼女にしては珍しく白く泣き出しそうな顔をしていた。



はい。という訳で、15話でした。ここまで読んで下さり有り難うございます(ペコリ


そして、改めておよそ一ヶ月間もの間更新しなくて申し訳ありませんでした(土下座


なんか、毎回毎回このパターンをし続けている気がしないではないですが、今はあえてスルーします(殺


誰も知りたくはない(てか聞いていない)と思いますが、あえて僕がこの一ヶ月間なにをしていたかを暴露しますと。

ズバリ!!


死んでました(どおーん


いや、ホントに(乾いた笑み

別に病気とかそんなのではなく、新学期でからなりドタバタしてまいた。

それこそ執筆することはおろか、他の先生方の作品を読む事も、あまつさえこの「小説家になろう」のサイトを開く事もできなかったですからねっ!(ダメ人間


あっ、でも聞いてくださいっ!!


実はこの話の他にあと2話書き終わってます(爆


だったら、なんで更新しねぇんだよ、て話ですが実は


昨日、完成しました(再び、どおーん


ええ、昨日、健康診断で学校が午前中に終わったので、深夜一時過ぎまでひたすら執筆していました。

まさに快挙。こんなに集中して書いたのは初めてです。


お陰でかなりの量を書くことに成功し、お決まりの文章力の無さで1話にまとめ上げる事に失敗し、見事3話ほぼ同時完成となったのです(わーい


他の2話は、3日後ずつ順に更新します。

ちなみに、現時点で戦闘は終わっていません(どぉぉぉん


ほんと、どんだけだよっ! 信じられねーよっ!


まっ、まぁ、とりあえずは3日後という事で、ひとまず失礼します。


では、また3日後の27日にお会いしましょう。



追伸。


〉ケンタ様


長い間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

今回の後書きでよい、とのことでしたが、あえて評価の方の返信コメントに返事を書きました。ご確認下さい。

今回の提案。実に天にも昇る思いでした。嬉しくてニタニタしてました(危ない奴


向こうにも書いたのですが、できればケンタ様の作品を読ませてください。

このなろう上で活躍されているなら、作品名を。他のサイトで書かれているのならば、そのサイトを。

とっても興味があります。


それでは、今後ともよろしくお願いします。

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