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ケージ:エスケープ  作者: 猫だるま
私立城南学園編
5/8

盗賊遊雨、立ちはだかる死神

皆さんは、ストレスどのくらい溜まってます?


私は、かなり溜まってますよ!!


カラオケで発散したのですが、私情で行けません。


まぁ、来月には行きますよ。


色々と歌って、ストレス発散させます。

 工具室を出た遊雨たちは、高等部校舎を出て中等部校舎を目指して、外を走っている。

 当然、体育館は爆発したからといって、外にいる全ての化け物が死んだわけではない。

「右から人面犬四匹」

「僕がやるよ。遊雨、正面」

「任せろ。片桐さん」

「おうよ」

 右から走ってくる四匹を翔彩が二丁のハンドガンで撃ち殺して、前方にいたワニとブタ二匹を遊雨がブタ二匹を即座に斬り殺し、ワニの攻撃を片桐が完全に防ぐ。

 片桐に噛み付こうとしたワニだが、走り抜くと同時に安藤がその首を刀で切り落とした。

 また、針で攻撃してくるハチは二階堂と綾太が排除していた。

 紗千は翔彩が仕留めきれなかった人面犬を槍で薙ぎ払う。

 このフォーメーションで、遊雨たちは立ち止まることなく走っている。

「もう中等部校舎だ。俺と安藤と紗千で入るので、片桐さんと翔彩は最後尾の二人の援護を」

「分かった」「了解だ、リーダー」

 そう指示すると、遊雨たち三人は先に中等部校舎へと入って、片桐と翔彩は綾太と二階堂がくるまで援護するために入口付近で援護する。

 校舎に入ると、ワニ二匹とムカデ六匹とブタ三匹がおり、見つけると襲いかかってくる。

「私の出番ね」

 数の多い左側からの敵に向けて紗千はショットガンの銃口を向けると、構えてトリガーを引いた。

 すると、紗千にもの凄い負荷がかかると同時に、散弾が化け物に向けて発射された。

 ワニ一匹とムカデ四匹が一撃で死に、後方にいたブタ二匹は無傷で構うことなく襲ってくる。

 反動で腕が痺れてしまった紗千だが、安藤が左の敵の残りを片づけに向かう。

 そして、遊雨は紗千からショットガンを取ると、飛びかかってきたムカデ一匹を蹴り飛ばすと同時にリロードし、そのまま銃口を敵へと向けて撃った。

 しっかりとした構え方で撃たなかったので遊雨は反動で後ろに倒れるが、敵は全て仕留められた。また、遊雨が右側の化け物を倒す少し前に、安藤もブタ二匹を刀で斬り殺していた。

 視界に映る敵は全て倒し終わり、残りの四人も無事に中等部校舎に入ったところで、ドアを閉める。

「大丈夫か?」

「ありがとうございます」

 尻餅をついた遊雨は片桐に手をかしてもらい、立ち上がる。

 そして、起き上がって彼は校舎内の状況を確認するとあることに気がつく。

「………人の死体がない」

「確かにないわね。一早く避難したのかもしれないわ」

「なるほど。中等部からの方が、体育館は近いですしね。自分は二階から避難しましたし」

「おまけに、建物は三階建てだ。避難するのも、高等部よりは早かっただろうな」

 そんなことを話ていると、ムカデ二匹が角から出てきた。

 一早く気がついた二階堂が撃ち殺して、襲いかかってくる前に倒せた。

「とりあえず、進もうよ」

「安藤の言う通りだな。行こう」

 遊雨を戦闘に、先程と同じフォーメーションで一階の廊下を慎重に歩いていく。

 校舎内を歩いていると化け物には遭遇するが、人の死体は全く見つからない。

 十分な武装があるので、遊雨たちは余計な戦闘をすることなく、最短距離で二階へと続く階段に向かう。

 だが、肝心の階段で問題が起こった。

「なるほどね。そういうことだったの」

 水戸野を含める七人が一階に死体がない理由を察した。

 二階へと続く階段は防火シャッターによって完全に塞がれており、一階から二階に上がることはできなかった。

「中等部の連中は頭いいな。まぁ、俺たちからすればいい迷惑だが」

「片桐さんの言う通り、面倒ですね」

 片桐の言葉に遊雨は同意すると、長剣で防火シャッターを刺す。

 しかし、防火シャッターの後方にもなにかが積まれているようで、意味がない。

「どうやら、防火シャッターだけじゃないそうだね。困ったなぁ」

「皆さん、そろそろ戻りましょう。ここじゃ、戦いにくいですし」

 綾太の意見は的確であり、狭い階段付近で七人もいれば動きにくく、戦闘になった場合に犠牲者がでる確率が急激に増加する。彼の発言で他の六人もそれに気づいて、防火シャッターをどうすることもできずに、一行は一階へと下りて安全地帯を探すことにした。

 階段を下りて右側にある職員室に翔彩が目をつけて、室内へと入った。

 中にはムカデ四匹しかおらず、倒すのに苦労はしなかった。

 七人は、職員室のカギを閉めてココで一旦休憩することになった。

「にしても、完全に立てこもっているとなると、ヤギとカメレオンはいないんじゃねぇか?」

 ムカデの死体を部屋の端に寄せ終わると、片桐が遊雨に言った。

 それに対して、二階堂が答える。

「それは違うよ。もし、立てこもっても三階にヤギかカメレオンがいたら全滅していてもおかしくない。だって、カマキリであそこまで強いならきっと他の二体も強いよ」

「自分もそう思います」

「まぁ、あのシャッターどうにかしないと確かめようがないけど」

 安藤がそう言うと、皆黙り込んでしまった。

 他の生存者どうであれ、七人はこの封鎖された学園からの脱出を目標として行動している。そのためには、カマキリの他にあと二体の化け物を倒す必要がある。

 ココで中等部の二階と三階を確認しないのは、彼らの目的の達成を左右する。

 それが分かっているからこそ、彼らはなんとか突破する方法を考える。

「非常階段を使うのはどうかしら?」

「僕は無理だと思うよ。多分、そこも塞いでいるよ」

「あぁ、そうだな。それに、非常階段に行くには外に出なきゃならないからな。何度も外にいったら確実に誰か死ぬだろ」

「外の方がアクシデント起きやすいですからねぇ」

「片桐くんの言う通りだね。外って対応が難しいから」

 六人が色々と話ている中で、遊雨は一人ある物を探していた。

 ソレはすぐに見つかり、遊雨はそれを手に取る。

「ん? 遊雨、消化器なんて持ってどうかしたの?」

「これがあるなら、防火シャッターを一瞬で壊せるぞ」

「はぁ? 谷原って消化器の意味分かっていいないでしょ? それは火を消すためのものでしょうが」

「そんなこと分かっているさ。コレと一緒に使う」

 そう言って、遊雨は手榴弾を取り出した。

 さすがに、ソレを見てやろうとしていることが分からない者はいなかった。

 爆破である。

 消化器は、火事になるのを防ぐための措置として使用する。

「谷原、俺は賛成だ」

「ちょっと待って、もし僕らと上にいるかもしれないヤギとカメレオンがすれ違いになったらどうするつもり?」

「なら、一階の階段付近で待機する班と二階に上がる班の二つに分けるか。どうせ、出口は一つだ」

「谷原先輩、分け方はどうします?」

「二階に行くのが四人で、残るのは三人でしょ? そうしたら丁度いいし」

 安藤の言った意見に誰も異論を唱える者はおらず、分け方は話合っても決まらなかったのでじゃんけんで決めることになった。

 そして、その結果二つの班が決まった。

「じゃあ、俺と片桐さんと綾太と二階堂先輩が二階に行くので決定だな」

「僕らもなにかあったら、駆けつけるよ」

「よし。じゃあ、二手に分かれるか」

 遊雨はリーダーらしく合図を出すと、七人は二つの班に分かれて行動を開始した。


 

 /////


 

「………行くぞ」

「おう」「はい」「うん」

 防火シャッターを手榴弾で破壊してから消化器で消火した遊雨たち四人は、二階へと侵入する。

 すると、そこには異様な光景が広がっていた。

「「「……………」」」

 誰も声を発することもできずに、綾太と二階堂は嘔吐して遊雨と片桐の吐き気を(もよお)す。

 原因は、廊下が赤く染めている血と、大量の死体。

 その死体は全て生徒と教師であり、胴体を切断されている者から撃ち抜かれている者まで様々である。また、教室のドアは全て破壊されており、中にいた人間も全て死んでいると思われる。

 外や高等部校舎とは比較にならないほどの死体と、惨状。

 二分ほどその場で脳がこの光景に少しでも慣れように、立ち止まる。

 深く息を吸って吐いた遊雨と片桐は、今もぐったりとしている綾太と二階堂の代わりに調べ始めた。

「リーダー、コレって人間が殺ったと思うか?」

「違うでしょうね。ここの足跡見てください」

「ん?」

 遊雨の指差した方を片桐が見ると、そこには人間でもこれまで遭遇した化け物のものでもない足跡が残っていた。

 そして、その形はひづめを連想させる。

「おいおい………ヤギってことか」

「それも、人間が撃たれているということは銃火器を持っていますよ。コレは、本格的にヤバイ」

 そう言って、遊雨は二人のところへ戻ろうとした。

 途中、壁の銃痕を見てあることに気がついた。

 相手の持っている銃は、

「マ、マシンガン」

 中学生の頃に、一度だけ銃にハマった時期がある遊雨は穴の大きさと線を描くように続く弾痕を見て気がついた。

「どうした、リーダー?」

「マシンガンですよ。ヤギの持っている銃は」

「う、嘘だろ」

 素人でもその脅威は分かる。

 肉体を強化されても遊雨たちは人間。

 銃弾が当たれば致命傷になり、ましてそれがマシンガンともなれば圧倒的に不利になる。

 場合によれば、一瞬で殺されてジエンドである。

「谷原君、どうやら状況は最悪みたいだね」

 まだ気だるそうにしているが、二階堂が遊雨と片桐も元へと歩いてきた。

 その後方から綾太も「最悪ですよ」と言いながら向ってくる。

「えぇ、状況は最悪で ――――――― ッ!!!」

 遊雨は即座に、近くにいた片桐と二階堂の二人を両手で抱えるようして左横の教室へと飛んだ。

 すると、綾太も危険を察して教室に隠れようとする。

「アアァ…ブハッ!!」

 だが、彼の身体には数発の弾丸が撃ち込まれて、膝を折って床に座り込み吐血してから頭を撃たれて死亡した。

 死体となった小西綾太は前のめりに倒れる。

 一瞬の反応の違いで、四人が三人になった。

 確実に綾太が死んだと察した遊雨は、敵との距離を確かめるために少し顔を出すと、その後銃弾が飛んできた。

 間一髪で引っ込めた遊雨は、一応敵の姿は見た。

「(黒いレインコートを着たフードを被ったヤギ。おまけに、左手には予想通りサブマシンガンを持っていて、右手には大きな鎌を持ってやがる)」

 敵との武装の差を実感した遊雨は、取り乱していた。

 カマキリとは違い人間サイズ。

 しかし、単体での脅威はそれ以上である。

 人間の特権かと思われた銃を敵が所持している。

 ただでさえ人間離れした化け物が、より一層強くなったのだ。

「た、谷原君………小西君は」

「やめろ、二階堂。今は俺たちが生き残ることが最優先だろうがッ!!」

 動揺を抑えられない二階堂を片桐が叱咤する。

 片桐は遊雨の判断を聞こうとするも、彼は「と、盗賊のスキル……ダメだ、ダメだ。アイツが持っているのはサブマシンガンだぞ。盗る前に撃たれて殺される」と一人で呟いており、完全に冷静さを失っている。

 そんな状況の三人は、カタカタという足音を聞く。

 ヤギと遊雨たちのいる教室は両極端だが、一分もあればたどり着ける。

「ま、マズイ。でも、アイツに勝つ術がない」

「しっかりしろッ!! 落ち着け、谷原遊雨ッ!!!」

 片桐の叱咤で混乱していた遊雨の頭が正常に戻った。

 同時に、二階堂も冷静さを取り戻す。

「俺が盾になっている隙なら、奪えるか?」

「………やってみます。二階堂先輩は援護を」

「わ、分かった」

 方針が決まると、片桐が盾を構えて飛び出る。

 その後ろに隠れるようにして遊雨も続いた。

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダッ、という音と共にサブマシンガンから大量の弾丸が片桐に向けて撃たれる。

「くッ!!」

 大半は盾で弾けているが、数発が肩と足に当たり屈強な身体の片桐も苦痛で顔を歪ませる。

 だが、そのかいあって、遊雨の盗賊の力で目視したヤギのサブマシンガンを盗ることに成功することができた。

「二階堂先輩、片桐さんを」

「任せて」

 二階堂は遊雨の言葉を聞くと、外に出て負傷した片桐を教室へと引きずって入れようとする。この時間を稼ぐために、遊雨はサブマシンガンを撃とうとするがトリガーを引いても弾は出ない。

「(まさか、盗る前にサブマガジンを抜いたのか)」

 サブマシンガンに弾倉が装填されていないのに気がついたときには、ヤギは大鎌を持って遊雨たちへと襲いかかってきていた。

 仕方なく、サブマシンガンを後方に投げ捨てて、腰の左右の鞘から長剣を引き抜いて走り出す。

「(鎌は決まって大振りになる。よく見れば避けるのは可能だ)」

 ヤギの鎌が当たる範囲までくると、人間の身体を両断する大鎌が上から斜め下へと振られる。その動きを完全に見切った遊雨は懐に入って、腹部へと二本の長剣を突き刺そうとする。

 だが、ヤギは鎌を高飛びの棒のようにして遊雨の頭上を飛び越えた。

 当然長剣の突きは回避されて、すぐさま振り向いて斬ろうとする。

「ッ!! クソが」

 遊雨が振り返ったときには、大鎌が振り上げられており、彼は咄嗟に両手の剣を頭上でクロスさせた。

 その対応で振り下ろされた大鎌は防げた。

 しかし、その後が問題である。

 ヤギの方が遊雨よりも力が強い。

 鎌の刃は少しずつ遊雨へと近づいていき、押し返そうにも力が足りない。

「クソオオオオォォォォォォォォッ!!!」

 叫びながら全力で押し返すが、刃が迫るばかりである。


 バンバンッ!! バンバンッ!!


 銃声が四回聞こえると、ヤギの背中に四発の銃弾が命中した。

 力が弱まった隙に遊雨が後方に下がると、二丁のハンドガンを構えた二階堂がいた。

「メェメェ」

 ヤギは鳴くと、大鎌を捨ててレインコートに隠れていた二本のサバイバルナイフを引き抜いて構えながら二階堂へと走り出した。

 遊雨がヤギを追いかけようとするも彼よりも足が速く、追いつけない。

「私だって、殺れる」

 そう言って二階堂は二丁のハンドガンのトリガーを引く。

 だが、ヤギは両手のサバイバルナイフで計四発の弾丸の内、急所当たる二発をナイフで弾いた。

 弾丸の速度から考えて、もはや人間離れした芸当だが、二階堂には驚いている暇はない。

「ひッ!!」

 自分よりも圧倒的に強い相手が迫ってくる恐怖から、彼女はトリガーを引けない。

 確実に殺されそうになっている二階堂だが、ヤギが教室の横を通り過ぎようとしたときに、化け物は急にバックステップで下がった。

 理由は、横から長剣を持った片桐が突きを放ってきたからである。

 また、片桐の銃痕はなくなっていた。

「殺るぞ、谷原ッ!!」

「分かりました」

 二本の長剣を構えながら走る遊雨と、横から出てきた片桐に挟まれたヤギはその場で止まって、二人を待ち受ける。

 片桐の斬撃を片方のナイフで弾いて、遊雨の双剣のうち一本を空いている手のナイフで防いでから、残りの一本を足で蹴る。

 左手の長剣を飛ばされた遊雨だが、右手の長剣を逆手持ちに変えて斬りかかる。

 だが、右脇へと蹴りを入れられて体勢を崩してしまう。

 そこへ追撃して仕留めようとしたヤギだが、片桐の投げた短剣を回避してしまったので、遊雨を殺すことは叶わず後ろに下がった。

 片桐は長剣を構えて、ヤギへと走り出す。

 だが、一対一になった途端に防戦一方となり、片桐は守るので手一杯となる。

「片桐さん、横に飛んでッ!!!」

 遊雨の言葉通り、片桐は右に飛ぶ。

「メェッ!!」

 片桐がどいたことによりヤギは、しゃがんサブでマシンガンを構える遊雨に気づいた。

 だが、もう間に合わない。

 サブマシンガンのトリガーが引かれると、ヤギの肉体に数十発の弾丸が撃ち込まれる。

 遊雨はヤギが床に倒れるまで撃ち続ける。

 銃声は弾切れになって止んだ。

「はぁ…はぁ……はぁ」

「や、やったよ。勝ったよ、谷原君ッ!!」

 嬉しさのあまり二階堂は遊雨へと抱きついて、涙を流す。

 抱きつかれた遊雨は疲れのあまり、この状況に頭が追いついていない。

 そんな光景を見て片桐は「はぁ……俺も女子に抱きつかれたいぜ」と言って、壁に寄りかかって座り込む。

 片桐は座ると、視界の端の画面に『特別報酬』と書いているのを見つけた。

「なんだ?」

 意識を画面に向けると表示が変わる。そこには『二体のボスを倒したので、特別報酬として職業の追加(基本職のみ)を差し上げます』と書いてあった。

 そして、以前職業を選択したときと同じ画面が表示される。

「………武人だな」

 片桐がそう言うと同時に、職業に武人が追加されて『身体強化が大へと変化』と表示された。

 同じことに遊雨と二階堂も気づいて、職業を選択する。

「リーダーと二階堂は、なに選んだ?」

「俺は武人です」

「私は、魔術師。『応急処置』と『煙幕』って魔法を貰えたよ」

 遊雨たちは互いの選んだ職業を教えると、立ち上がって終わった戦場を見渡す。

 多くの生徒の死体。

 仲間の死体。

 強敵の死体。

 それらが転がっている場所に立つ三人の表情は複雑だった。

 彼らはしばらく眺めてから、一階へと向かった。


 

 /////


 

「おい、誰もいないぞ?」

「桜木君たちどこに行ったのかな」

 三人が一階にたどり着くと、翔彩たちは待機しているはずの場所にはいなかった。

 話声も聞こえない。

「片桐さん、どう思います?」

「アイツらが俺たちを置いて逃げ出したとは考えにくい。となると、なにか逃げざるおえない理由でもあったのかもしれねぇな」

「そうだね。探してみようよ」

「えぇ、そうしましょう」

 遊雨たちは消えた翔彩と安藤と紗千を探し始めた。

 だが、一階に三人の姿はなく手掛かりになる物もなかった。

 完全に行方不明となった翔彩たちを探すのは、かなりの時間とリスクがかかると遊雨が思っていたときに、なにかが落ちる音が数回外から聞こえた。

「なんだ?」

「ア、アレ」

 二階堂が指さした中等部校舎と高等部校舎の間にある広間に、制服姿の女子生徒三人が飛び下りたようだ。

 女子生徒たちの中には足を折った者もいたが、全員で中等部校舎へと必死になって移動している。ただ、足の折った子の頭部に矢が刺さり死んでしまった。

 矢はどんどん残った二人の女子生徒へと放たれていく。

 だが、少しして矢は放たれなくなった。

 代わりに、人面犬などが二人へと寄ってきてしまった。

 怪我している二人では、戦うこともできない。

「クソッ!!!」

 先に片桐が飛び出して、遊雨と二階堂が後に続く。

 二階堂と遊雨が女子生徒二人に近づく化け物を排除して、片桐が二人を担ぎに近寄る。

「あの、優香がッ!! 優香がッ!!」

 比較的外傷の少ないショートヘアーの女子生徒が、もう一人の女子生徒の身体を抱えながら片桐にすがる。

 だが、その子を見た片桐は歯を食いしばってショートヘアーの子だけ抱きかかえて走り出す。

「待ってくださいッ!! 優香は、まだ生きていますッ!!」

「残念だが、あの子は死んだ」

 それだけ言うと、片桐は中等部校舎へと入って遊雨と二階堂も近づいてくる人面犬とハチを排除してから中へと入って、ドアを閉めた。

 校舎ないに化け物が残っている可能性を考慮して、片桐たちは女子生徒を職員室へと連れていく。

 必死に優香の元へ戻ろうと暴れる彼女を抑えながら片桐は、二階堂がカギを閉めるのを確認すると、床に下ろす。その直後、外へと走り出した女子生徒の手首を片桐が掴んで止める。

「離してッ!!」

「離したら、あの子のところへ戻るだろうが。いいか、優香って子はもう死んでいた」

「うぅ………優香ぁ……うぅう」

 女子生徒は泣きながら床に崩れ落ちてしまった。

 そんな彼女を二階堂がそっと抱きしめて、遊雨と片桐は少し離れたころから辛そうな表情で見ていた。

 彼女は泣き止むと、現実を受け入れたのか外に出ようとはしなくなった。

 そんな女子生徒に、遊雨が声をかける。

「落ち着いたか?」

「………はい」

「辛いと思うが、一つ質問したい。どうして、飛び下りたんだ?」

 彼女が泣いている間、遊雨と片桐は小声で彼女たち三人が飛び下りた理由と射たれた矢がなんなのか考えていた。矢を扱う化け物は存在せず、カメレオンである可能性もあるが、同じ人間である可能性も捨てきれない。

 遊雨の問いに、女子生徒はしっかりと答える。

「逃げてきたんです」

「逃げてきた? 化け物からか?」

 片桐がそう確認すると、彼女は首を横に振って否定した。

「男子生徒たちからです」

「どうし……いや、もう少し落ち着いてからでいい」

「いえ、大丈夫です。なにがあったのか話ます」

 逃げてきたという点から酷い目にあったのではないかと察した遊雨は、女子生徒に配慮したが、彼女は話てくれる。

「私は元々化け物から逃げるために部室棟に隠れていました。部室棟には、百人くらいいて、生徒会長さんたちがそこにいた化け物を倒してくれたので、かなり安全でした。私も化け物を一度だけ倒していて、脱出条件のことを知っていましたが、外に出ようとはしませんでした」

「生徒会長たちもそう判断したのか?」

「はい。そうしてしばらくは平和でした。でも、十一人組の男子生徒が外から部室棟にやってきて状況が変わりました。彼らを中に入れた生徒会長が突然殺されて、そこから男子生徒や女性生徒をどんどん彼らは殺して、十人くらいの女性生徒を脅して高等部校舎へと連れていきました。そこで………彼らが」

「もういい。大丈夫だ」

 辛そうな表情になった女性生徒を気遣って、遊雨が止めた。

 その話を聞いた三人の表情は、暗かった。

 同じ人間であり被害者を殺して欲のままに行動する者が十一人もいるのだ。

「多分、水戸野さんたちも連れて行かれたのかもね。でも………」

「そうだな。相手が人間っていうのが、な」

 片桐はそう言うと拳を強く握りしめる。

「(十一人………平気で人を殺す奴がそんなにいる。おそらく助けに行ったら………いや、確実に殺し合いになる)」

 つまり、その女性生徒たちを助けるということは、遊雨たちは間違いなく相手を殺さなくてはいけなくなる。

 化け物相手に一歩も引かない片桐と二階堂でも、相手が人となれば話は変わってくる。

 人殺しになる覚悟。

 それは、想像以上に難しい。

 それでも、

「片桐さんたちはココで待っていてください。俺が一人で行きます」

「ちょっと待て。行くなら俺も行くぞ」

「そうだよ。谷原君だけ行かせられない」

「二人は、人を殺さない方がいい。それに、武術の心得がある俺なら気絶させるだけ済むかもしれません」

 遊雨がそう言いうと、片桐と二階堂は悔しそうな表情で黙る。

 二人は気づいている。

 自分たちに人を殺す勇気はないと。

 化け物になった者ならともかく、完全に見た目が人間の相手を殺すことはできない。

 故に、二人はついて行きたくても「行く」と言えない。

「いいんですよ。元々、俺には先輩方みたいな優しい人といる資格なんてない奴ですから」

 遊雨は二人に悲しそうな笑顔で言うと、ドアを開けて外に出た。

「それってどういう」

 片桐がそう言ったときには、すでに遊雨はドアを閉めていた。










どうしたか?


前話に比べて苦戦することもすくなく、よかったですよ。


ただ、プロットの大幅な変更によって色々と計画が狂ってしまいました。


まぁ、なんとかします。

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