非正規作戦4 sideN
「アレン特別学徒兵に敬礼」
「空砲構え、撃て」
戦死者が出た。
「以上解散、各員は通常シフトにもどれ」
いつかは出ると思っていたのだが、こんな早い段階で出るとは思わなかった。だがそんなことは一切顔に出さない、と言うよりも出す余裕がない。サトウが待つ、とある部屋に向かうために、ほぼ全員が揃っている滑走路を離れ、地下室へと向かう。もしかしたら学生のために何かしてやるのがいいのかもしれないが、ここは戦場でこれくらいは乗り越えられるようにならなくてはならない。ならないと言うよりも今は泣けても、その内にそういった感情が擦りきれる。それが人としてどうかとは思うが、兵士には必要なことだと思う。戦場に必要なのは死者を思う優しさではなく、他者の死の上でも生き残ろうと思う気持ちである。そんなことを考えていると、目的の部屋にたどり着く。
「隊長、そろそろ始めるっすか」
「まぁな」
そう言って、仮面の位置を確認して、軍服に備えついているナイフを抜き中に入る。中には1人の男が、木製の椅子に座らせられた上で猿轡をくわえさせられ、手足を縛られていた。こいつはサイを追跡していたトワに無理矢理捕縛させた、敵エース部隊の一員だ。少し無理させたかいがあった。そこまでやれるなら戦死者出すなと言われそうだが、さすがに奇襲かつ一撃必殺に対応するのは無理だ。まぁひとまず怒りをぶつけるのは後にして、こいつの尋問を始める。
「なにもしゃべらん」
「そうか」
猿轡をはずしてやると、開口そうそう、そう言って来る。分かりきっていた、ついでに言うと軍医でもなく、そう言った訓練を受けてない俺でも使える類いの自白剤も耐性などをつけて意味をなさないだろう。
「なら、こうするしかないな」
そう言って殴る。鼻をへし折る勢いで殴る。
「まあ昔ながらの方法でいこうか」
そう言って抜いたナイフで手のひらを少しだけ切る。
「捕虜ならこういったことはできないけど、こいつは脱走した上で襲いかかってきたから問題ないよな」
そう言って更に殴る。
「まあそっすね」
「だよな、逃げる敵を止めるために戦闘したんだからな」
更に殴る。そうやって建前を並べつつ殴る。意識を失いそうになるとサトウがそいつの顔に水をかけ目を覚まさせる。そうやって多分吐かないだろうが、吐くまで殴り続けることにした。




