夜戦3 sideN
『敵移動を開始』
「遅い、アクティブ」
モニターを叩き、各種センサーを起動するアクティブモードに変更する。覗いでいるスコープに様々な情報が表示される。
『連動しました』
「第2小隊は」
『はっはい』
「はいじゃ」
わからないと言いかけてやめる、彼女たちはあせっているのだ。余計にあせらせるわけにはいかない。
「まぁいい落ち着いていけ、N92敵は」
『数は多くないものの、練度が少し上がっている気がします』
「そうか、なら無理に接近させる訳にはいかないな」
敵の数は減っていく、だが前の時とは違い動きはいい、とはいっても新兵で実戦経験後というくらいであるが。だから簡単に。
『敵機1、動きがいい』
「どれだ」
『マーク』
『連動、戦術マップに表示』
トワが動きがいいという相手がスコープの中で赤く、って。
「こっちを狙ってやがる」
スコープを弾き上げる、通常戦闘モードに移行する。そしてそいつと向かい合う。
「うわっ」
そいつは黒いカラーリングに黒いマント、そして肩には5という数字の上にバツが。
『狙いは貴様だ、ナイン』
ちょっとダサいなと思ったのはさておいて、剣を抜く。
「第2小隊はくるな、こいつ」
危機を感じ、とっさに横に跳ぶ。
『ほう今のを避けるか』
「なんで通信つながってるんだよ」
『今かい』
『オペレーターはこちらの方が優秀らしいな』
通信が切られ、そいつとつながる。
「なっ」
『われわれナカイ騎士団のために死んでくれ』
「死ねるか」
頭の中にやばいという声がアラームのように鳴り響く。
「N92第2小隊をつれ残りの雑魚を仕留めろ」
『了解』
『雑魚とは言ってくれるな、まぁ否定はせんが』
前の戦争での経験が、これまでの戦いが、今のおれの力となるかのように、攻撃が把握できる。だからよけられる。だがそれだけだ。反撃する余裕はない。
『反撃もできないほどにも弱いのか』
戦術マップを確認、トワたちは合流し、ほかの敵を殲滅していく。その場所から離れるように、どんどんと距離をとる。
『ナカイ騎士様より弱いな』
「戦ったことがあるのか」
『いやない、だがあれだけ高貴なことができるのだ、彼は強いのだろう。だがそれを軍が認めず、切り捨て処刑した。それは軍という独裁体制が悪だ、ならばそれと似通っているこの国はどうだ、悪そのものではないか、だからナカイ騎士に成り代わり我々がその象徴である、騎士並びにシルビアを断罪する』
いやいやいやいやいやいやいやいや、そんなに高貴じゃあなければ強くもない俺は小隊の中で1番弱いのだ。と言っても聞いてはくれないだろう。こいつも自分の掲げるセイギノミカタに酔っているのだろう。
『だからさっさと』
「N92やれ」
時間は稼いだ、敵の数は減らした。だから俺は彼女を、仲間を信じる。
『くそ、手勢が弱い』
パイルガンが奴の後方から飛んでくる。だが奴はそれを持っていた剣で切り裂く。なんて反応速度だろうか。
『不意打ちとは貴様それでも騎士か』
「騎士だ」
完璧に不意打ちだったのだが、ここでとどめを刺さなければ、だから剣で。
『ちっ』
「あまっ」
剣が甘く入り、左腕を切り飛ばすだけで終わるとっさに横によけると。そこに追撃に放ったであろうパイルガンの流れ弾が、よけた方向に飛んでくる。
「なっ」
それを剣で受けると、奴がフラッシュグレネードの直後にスモークグレネードを放ち、カメラがどちらも機能しなくなり、機能が回復すると奴は消えていた。
『すいません逃がしました』
「しかたないか、周囲に敵は」
『通信回復、敵はそばにはいません』
「了解、ちょっと休む」
ヘルメットを外し、固いシートに体を沈めた。




