夜戦2 sideN
モニターに目をやる、機体状況チェック。異常なし。戦術マップ確認、順調に接近中。奇襲してきた相手が待ち受ける中に奇襲するという意味が分からない状態になりながらも前に進む。駆動音もごまかすために最低速で行動する。じりじりと体力が削られる。だからそれを紛らわすためにトワに話しかける。
「N92」
『なんでしょう』
「プライベートに」
『了解』
通信をプライベートモードに切り替える。と言ってもただの個別通信なので秘匿性のためコールサインは徹底するが。
「学生連中の評価は」
『報告なら報告書に』
「出撃前に確認したけどさ、直接見た評価がほしい」
一応トワがあげた報告書には比較的良の評価が多く、5段階評価で3.5というくらいだ。一応ほかの小隊は第1が4.2、第3が3.1、第4が2.7という具合だ。評価方法は個人技が5、チーム力が5という感じで報告は受けている。受けているが報告書に書かれない情報が実戦では必要だ。たぶん。
『直接ですか』
「癖とかなんか」
『少しお待ち下さい』
というわけで30秒ほど待たされる。
『追加報告です、癖と言いますか隊における役割ですが、全員が射撃よりであります』
「てことは」
『ですがとっさの事態に弱い側面もあるようです、これは小隊長であるベリルが隊を仕切れないのが理由であると考えます』
「つまり有利に進めていれば戦力として期待できると」
『そうなります』
要するに戦えば戦うほど不利になっていく今の状態はあまりよくないが、せめてもの救いとして有利に展開できる可能性のある時に戦えたということか。
「というか敵の考えが読めない」
『……そうですね』
何回か言ったかもしれないが本気で落とすつもりなら、多数戦力叩きつけるか戦力の逐次投入を行えばいい。国を相手取れる組織なのだそれくらいは余裕だろう。
『N91に対してそれほどの脅威を感じていないとかでしょうか』
「やっぱりか」
知らない人が俺を見れば、正体不明の仮面野郎だろう。そんなよくわからない奴は強すぎるか、弱いかの二択であり。そんなところに戦力を叩き付けるよりはもっと有名な第1騎士のクレアなんかに戦力を叩き付けるべきだろう。もし正体を知っていれば口を開ける象徴なんか厄介にしかならないので真っ先に排除してくるだろうが。
『全機に通達、射撃可能位置です』
「了解、全機光学スコープ起動、補正は切れ」
そう通信し、コックピット上部にある備え付け型のスコープを引っ張り出し覗き込む、これはパイルガンの光学スコープと連動しており、精密射撃に使われるものだ。アクティブカメラを作動していれば、各種情報なども表示されるのだが、着けていない今は、暗視用のグリーンな風景の中にレイティクル、要は照準用の十字線、残弾、それと簡易式の戦術マップ、と言ってもオペレーターの予想する敵位置情報が表示されている。
『発見』
『方角修正します』
トワが発見し、戦術マップがわかりやすくなる。
『連動完了』
「よし各機斉射後自由射撃、戦闘を開始する」




