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遺書 sideS

「諸君全員がわが騎士団に編入したことを感謝する」

 食堂に集められた俺たちに対して、ナイン騎士が放ったその一言から、初の騎士団任務が始まった。周りはいつもの学生服、左肩には9と書かれたワッペンが支給される。

「ドッグタグはのちに配布する、そのワッペンは代用品だ」

 ドッグタグは個人を認証するためにモノで、第9騎士団に編入したために第9騎士団用に切り替わるはずなのだが、余裕がないのだろう。

「わが第9騎士団はたった5人の騎士団である」

「絶望的では」

「そう思うならしっぽを巻いて逃げればいい」

 有無を言わせるつもりはないようだ。

「そのために敵を襲撃するのではなく、防戦一方で戦っていくこととなる。そのためにこれまでのように警戒を3小隊交代、これまで訓練を行っていた部隊を即応部隊としてスクランブル待機してもらう」

「それはいつまで」

「他騎士団次第だ」

「それまでの補給は」

「補給に関しては、ほぼないと思ってくれ」

 最悪だった。補給なしで敵と戦争するなんて。

「だが安心してくれ、敵はそれほど強くない」

「それは…」

 強くても強くないというので当てにはならないと思う。

「以上だ、ほかに何かないか」

「はっ」

「エム」

「補給ですが1か月分は余裕であり、また敵に滑走路を落とされない限りは向こう次第ですが補給を受けることが可能です」

「そうか」

 補給は届く、それだけでひとまず安心だ。

「ですが兵員に関しては補給は難しいと思ってください」

「と言う事だ、諸君死ぬな。そのために余裕があるものは訓練を施していく。また指令室の扉は開けておくから悩みがあれば来い。以上だ」

 それだけを言うとエムさんを除き、格納庫に向かっていった。

「それではみなさん、正式に騎士団に入ったので、初任務があります。これを配ってください」

 そう言ってレックスに紙の束を渡す。そしてその紙が回ってくる、ただの白紙の紙と封筒だ。

「初任務として、遺書を書いてもらいます。ジンクス的に書きたくないというなら別ですが、戦場では何が起こるかわかりませんので書いておいた方がいいですよ。書いた者から私に提出するように中身は確認しません。それでは」

 そしてエムさんも去っていく。

「遺書か」

 遺書と言われて、あたりは騒がしくなる。死が近くなるからだろう。

「俺には関係ないか」

 そう関係ない、次の日には死んでしまうような環境で生きているのだ。それに遺書と言われても、お金はあるが、残す相手はいない。

「サイ何書く」

「フェザーこそ」

「家族にお金わたるようにしない」

「そっか」

 彼女は書くことがあるようだ。

「はぁなんか書くか」

 そう言ってペンをとった。

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