学園 sideS
2話目です
燃え盛る炎、響き渡る轟音。何気ない日常が、一瞬で戦場に変わった。通信端末の振動は感じている、たぶん呼び出しだろう。首都で行われた王女に対するテロ。学生である俺も呼び出されて当然の事案だ。だが動けない。何てことはない、怖いのだ。この中に戦闘要員として飛び込むのが。炎に囲まれ熱いはずなのに、体はガタガタと震える。そしてその時が訪れる。王国の通常二足歩行兵器、Army、に似た、機体が2機。肩には751と752の数字が刻み込まれてた。その2機が、戦場の中を駆け抜ける。それをみた俺は、ただ、すごい、としか思えなかった。その機体が後のナカイ名誉騎士であると知ったのは、大分後になってからだった。
「それでは、明日からの」
周囲を見渡す。ここはあの戦場ではない。ただの学園だ。いつのまにか寝ていたらしい。学園、正式名称王立軍事学校、とは小中高大が一体となった、軍事専門の学校である。専門と言っても、高校に値する学年までは一般的な授業も行っている。この学園ができた理由は知らないが、俺ことサイが入った理由は単純明快だ。盗みをして捕まり、刑務所に入れられる代わりにここに放り込まれた。それだけだ。
「軍務で少し遅れるようだ少し待っていろ」
教師が出ていく。そこで後ろの席の男から話しかけられる。
「なあなあサイなんだと思う」
「知るかよ」
その男はアンドレアス、オペレーター志望だ。
「サイはいつもそうだよ、少しは回りに興味もったらせっかくの学園なんだし」
「食い物にしか目がいかないアランには言われたくないね」
そこにアランが混ざる。
「食べ物以外も目がいってるよ、例えばさっき教師が話した実習とかね」
「実習、何それ」
「おいおいサイ聞いてないのかよ、実習だぞ実習、実際の騎士に実地訓練をするんだよ、いいよなぁ騎士団美女揃いで」
「1〜7まではな」
「まっ名誉騎士はともかく第9はねぇよな」
「ナインさんだっけ」
「あの人だけ実績ないんだよなぁどうしてなんだか」
「おっサイでも知らねぇとなると、俺にはさっぱりわからん、それに男に興味ないし」
「あの人はともかくサイの騎士好きは異常だよね、だって名前だけでなく実績とか戦闘パターンとか全部覚えようとしてるんだもん」
「それにナカイの映画に何回付き合わされたか」
「いいだろう、好きなんだから。それにあの映画面白いだろ」
「まっそれはそれで置いとくとして今年は誰だと思う」
今年、要するに俺たちの実習を担当する騎士は誰と言う話題となる。この学園は高校3年に当たる学年で本物の騎士と共に基地ひとつを貸しきり訓練を行う。そのときに目をつけられるのが1番の、騎士の近道だとされている。なのでその騎士の好みが。
「はっ、お前らみたいなスラム出身者や平民の落ちこぼれどもが騎士になれるわけないだろうが」
「何を」
「だいたい落ちこぼれが、なんで俺と一緒のクラスに」
「席につけ」
クラスメイトと口論になりかけたが、知らない声に止められる。その声がする方を見る。そこには白いマントに腰に下げた剣、騎士の象徴を身に付けてはいるが、そこにさらに拳銃、顔にはマスクをつけた男がそこにいた。それに気づき、席に戻る。
「今回の実習担当騎士となったナインだ、よろしく頼む」
ナインの脇には拳銃を大量にぶら下げた美女がいた。多分騎士付きの護衛だろう。それは置いておくとして、その声でクラス全体が静まりかえる。
「さて明日からの実習にあたり説明を行う、ロワ」
「はっ、それでは説明します明日0700までに必要最低限の生活必需品を持ち、学園格納庫に集合。以上」
「諸君らは元気がいいようだが、実習終了時にその元気を維持できることに期待している。以上解散」
それだけ言うとナインは護衛をつれ去っていった。これから実習が始まる。