輸送品 sideN
敵に囲まれ、銃で撃たれる。1発1発は怖くないのだが、敵の数は多く、バランスを崩せばチェーンソーでコックピットごと切り裂かれるだろう。だが反撃する余裕はなく、避け続けることしかできない。それだけに神経をすり減らし疲弊していく。限界まであと少しだろう、なんとなくだがそれは分かった。なので救いの手を求め、トワに通信を入れる。
「752まだか」
『隊長、起きてください』
「へぇっ」
飛び起きる、そこは戦車の狭く堅いシートとモニター群ではなく、広く柔らかい執務用のいい椅子と頑丈そうな執務机がある執務室であった。
「なんだ夢か」
『ナイン騎士例の物資が届いたようです』
「やっとか」
仕事に追われ、いつのまにか寝てしまっていたようだ。
「って物資」
と言う事は今は1200であり、寝坊していた。
「誰か起こしてくれよ」
とは言ってみるが、どうせ今日の仕事は物資と追加の兵員を受け取るだけだ。主なのは追加の兵員だ。
「どんな人材がくるんだってか着替えないとまずいか」
座ったまま寝てしまっていたので軍服が皺くちゃになってしまっている。
「けどまあいいか」
どうせ受け取るだけなのだ、少しくらいはいいだろ。
『隊長』
「エム俺隊長じゃなくて騎士のような気がするんだか、まぁいいか今いく」
『了解、だらしない恰好だけはやめてね』
「はいはい」
とはいっても仕事の時に邪魔になっていた仮面をするだけで着替えを済ませ、輸送機の着地予定地点に向かった。
「………………………………………」
黙る。
「……………………………………………」
輸送機が来て、追加の兵員がいないのでまず黙り、かといって運ばれた輸送品が予備パーツだけであるのはいいとしても、その中に更なる問題に気づいてしまった。
「……………………………………で」
問題をどうにかしようとも輸送機はもう出ていて、引き戻そうとも大事にしちゃいけない問題なのだろう。
「ナインなんなのじゃ、妾の顔をじっと見つめて」
「……………はぁ」
問題そのものがそう言ってくる。
「で、このことは」
「ふっ妾を舐めるんじゃないのじゃ、クリスにも言ってないのじゃ」
「はっ」
「クリスにもライラにも言ってないのじゃ」
その2人は第1、第2騎士だ。要するに女王の腹心の部下だ。その2人に言っていないのなら誰にも言ってないのだろう。
「つまり誰にも言ってない」
「ふっそうなのじゃ」
頭が痛くなる。
「で今は何をしてるのじゃ」
「頭を痛めてます」
「ナインは体が弱いのじゃ」
無視する。
「エム」
『はい』
「本部につないでくれ」
『へ』
「ナイン女王の名に銘じて黙ってるのじゃ」
「……………なんでもない、訓練を続けてくれ」
『了解』
「ナインよく言ったのじゃ」
「はぁ、でも後で報告だけはしますからね」
胃が痛くなってしまう、交代の兵員ではなく厄介なものが来てしまっていた。
「えぇー」
「えぇーじゃないどんだけ厄介なんだよもう。はぁひとまず執務室に案内するのでついてきてください」
「わかったのじゃ」
「本当にどうしよう」