最終決戦16 sideN
サイに機体の操縦を預け、そのままコックピットに転がる。
『隊長、隊長無事ですか』
『動くなっす』
『救出完了、次は隊長の』
『お姉ちゃん助かったんだ』
耳に突っ込んであるイヤホンから通信が聞こえる。
『こちら第1騎士団敵の首が』
『そんなものか、王国最高の騎士団の力は』
だがそれに答える力が残っていない、パイロットスーツが血に染まる。腹部に違和感、と言うより熱。そしてそれを冷ます液体が流れていく感覚。土煙の中何かの破片によって傷ついたのだろう、だがそれでもなおここまで動くことができた、それだけはサボってはいたが日々の訓練に感謝する。
『サイは、サイはどうしたの』
『おいサイ、無理だ、バカ野郎早くにげろよ』
学生、たしかフェザーとアンドレアスだったかの悲痛な叫びが聞こえる。
『やれる、やれる、やれる、やれる、やれる、ヤれる、ヤレる、ヤレル、ヤレル』
それにも答えずわずかに残された武器で戦うサイの声が聞こえる。
『押せっ押すんだ』
『うわぁーー』
『どれだけいるんだ』
『第1、第8騎士長の救出を急ぐのじゃ』
指揮をとるシルビアとその指揮下に入る兵士の声が聞こえる。
『ここでやらねばこの国は』
『変えるんだ』
『ナカイ騎士のために』
戦っている敵の声が聞こえる。それぞれがそれぞれの思いを声にする。それはみんな誰かを、なにかを守ろうとしている兵士の思いの丈だ。そんな声を聞きながらも、思いの丈をぶつけながらも倒れていくものたちもいる。兵士である俺には倒れていくものを止めることはできない。
『できなくないのじゃ、やるのじゃ』
『止めないでください』
『もう無理だ数が』
『無理じゃないっ、サイ』
『くそっ、ここまでなのか』
動かない足を動かせ。
『死にたくない、死にたくない』
『死ねっ』
『ヤレル、ヤレル、ヤレル、ヤレル」
這いつくばってでも、よじ登ってでも見えるところへ行け。
『多勢に無勢か』
『貴様の首をとれば』
『無理っすよ、さっきの被弾で』
上りきる、戦場の中心で。
『隊長っ』