最終決戦15 sideS
なにかが起こっている、俺は。
「パイルガン弾3発ってなんだよ、方向角度全部知らせろ、ああもうくそっ早く援護来いよ」
コックピットにはもう座っておらず、そこら辺に転がされている、そしてコックピットには誰かが座っている。あれは。
「くそっくそっくそっ、目が霞んできやがる」
そこには騎士のように気高いわけでもなく、カッコいいわけでもない。愚痴りながらも、カッコ悪くとも、ただただ生きようとしている兵士がそこにいた。
「まだなのかよ」
その兵士は完璧に死ぬような状況で、動けない自分を守りながら戦っている。戦っているのだ。モニターにはなにも写らず、コックピットハッチは吹き飛び外から丸見え、そして。
「ああくそっいてぇ」
腕から、いや身体中を血に染めながら戦っているのだ。
なのに俺は、俺は。
「弾こっちも切れた、早く次寄越せ次っ」
「…………………………ぁの」
「っ、目覚ましたか、早くにげろ学生」
やはり学生と呼ばれる、違うそうじゃない、戦場に立つ以上守られている学生ではない、戦う兵士なのだ。ならばこう言い返すべきだろう。
「この機は、俺の機体だ」
「だからなんだよっくそっ次から次へと」
「俺の機体なんだっ、そこを退いてろロートル」
「老けてねぇよっ」
「退いてろよ、俺はフェザーの、アレンの仇を、そしてこの国を守るんだよっ、こいつで」
そう叫ぶ。
「…………………勝手にしろよ、サイだったか」
そう言って彼は席から離れる、そしてその席に俺が収まる。そのわずかな隙を敵は逃さない。だが関係ない。敵は見える、見えるんだ。俺には見える。敵の機体が出す駆動音で、わずかばかりの実戦とそれよりは多い訓練で、見えるんだ、見るんだ、見えないものを、見るんだっ。できなければ、死ぬ。