最終決戦13 sideN
「ああっもうくそっくそっくそっ、帰って寝たい、軍人やめたい、英雄なんだからその自叙伝でも書いて印税で暮らしたいっ」
走る、走る、走る。トワを担いだまま走る。一応は正規軍人なので学生よりは少し速いが、体力の減りも早い。
「サイ、強い」
「脇目を振らずに走れ学生、死ぬぞ」
そう見もせずに叫ぶ。そう今の状態は簡単だ、そこら中のやつらが戦争してるなかを生身で走り抜けているのだ。
「奇襲はうまくいってないのかよ」
とは叫ぶが、奇襲がうまくいったとしても起こせるのは少しの混乱だけで、すぐに命令系統を回復されるはずだ。この点はほとんどの軍が同じで指揮官が死んでも、すぐに別の者が上に立てるように階級があるのだから。
「隊長私を」
「本気でおいてくぞ、くそっ」
「ええ構いません」
「くそっ、なんでお前はそんなに覚悟できてるんだよ」
余裕はないのにトワはおいてけという。言われれば言われるほどその気持ちが強くなるのがわかる。それだけ自分の命を守るので精一杯なのだ。トワを置いていけば今より速く走れる、今より体力の減りが遅くなる。だが。
「置いてけるかよ」
重い銃を捨て、ヘルメットを捨てる。少しでも軽くするためだ。
「学生先に行けるか」
「これで、全力、です」
学生は息が切れかかっている、鍛えろよと叫びたいが、学生なんてそんなものだ、俺だってにたようなものだった。むしろ彼女よりひどかったような気もする。
「ああっくそっ」
だが走って逃げるにせよ、学生がなんか動きがよくいい援護ができているにせよ。限界はある。
「サイっ」
学生が叫ぶと共に、味方が倒れる。操作ミスや燃料切れではなく足の切断だ。どこからともなく現れた黒いのに足を切られたのだ。
『くそっ、守るんだよ俺は』
いつのまにかスピーカーに繋がっていたのかその機体から声がすると倒れながらにも、持っていたヒートスティックで敵のコックピットを破壊する。だが見ていられるのもそこまでだ、ただでさえ機体は重く、足に簡単に踏みつけられるのだ。倒れてきたりなどしたら。
「離れてふせろっ」
さすがに機体に挟まれる位置にはいなかったのだが、飛び込むように伏せる。と共に轟音に包まれる。機体の中では絶対に起こり得ない、土煙のなかに呑まれた。