最終決戦11 sideN
生命維持も脱出装置も使えなくなる。そこまで削って稼ぎだしたのは。
「1歩分かよ」
そうわずかに移動しただけでもはや燃料がつきたのだ。機体が倒れる、衝撃で揺さぶられる。
「何度目だと思ってるんだ」
パイロットスーツについている通信機に声をかける。
「チバ、脱出する」
『無理ですそんな戦況で』
「仕方ねえだろう、走って逃げた方がまだ生存できる、トワにげるぞん」
変な語尾になる、それは仕方がなかった。後ろでトワが黒煙を吹いていた。
「おいっ」
体に刺さっているケーブルを引っこ抜く、どうせメインはすべて落ちたのだ問題はないはずだ。
「………………隊長」
「なんだよ、早く逃げるぞ」
「私をおいてってください」
いつか言われると思っていた言葉、命令であれば従う、それが兵士だ、涙を飲んででもそれには従うしかない。だが今は。
「断る」
上位存在である騎士だ、ついでに俺は隊長でこいつは部下だ。だから命令は聞かない。聞く気はない。シートに備え付けられたPDW、自分の身を守るための最後の武器を手にいれる。
「私をおいて」
「断るっ」
有無を言わさずトワを担ぐ、正直重い。だが動けなくなると言うほどではない。
「くそっなんで黒煙なんて出てんだよ」
「私が機、体のメインシステムを肩代、わりしていたので、焼き付いたので、しょう」
「ああもうめんどくせぇ、バカかよそこまでする必要ないだろうがもう」
最終手段である、緊急時用開放システムの用意をする。こいつはコックピットのハッチを吹き飛ばすようであり、ただただ火薬に点火するだけだ。
「私は戦闘用の試作型アンドロイドですよ」
「知るかよっ、お前はただの傭兵だ」
彼女はその名目で部隊に入った。
「捨てられたって」
「命は大切にしろよ、と言うか今さらだけどなんでこんなところで戦争してんだ、予定だと年金暮らししてるはずだろう」
こんなんでも英雄なのだ、退役軍人だろうがそれなりにはもらえるはずだ、と言うか貰いたかったのだが。
「なんだよ、生きてんのに何回葬儀されてんだよ」
なのに貰えるのは俺の死亡通知書ばかり、お金らしいお金など貰えるわけもなく、更に言えば死んでいるのでお給料も入っていない。いやナインとしては入っていたのだが、それもなくなった。
「それは」
「年金が貰えるように戦争するかもしれないから、そんときまでは生きてろよ、今はいきることだけ考えろ」
爆発、コックピットのハッチが吹き飛ぶ。
『ナカイなにやってんの、お姉ちゃんが』
「なら守れよ、ふざけんな」
もはや叫び声だ、トワを担ぎながら外に出る。激戦の戦場だ。踏みつけられる恐れや、流れ弾、ただの爆発でも死ねる、だが生きるためには。
「学生脱出しろ、逃げるぞっ」
『りょ了解』
また爆発、倒れていた学生が脱出したのだろう。
『守りたいけどこいつら、うざい』
「了解っ、聞いてたか学生、俺らを守って後退しろ」
後は1人の学生に託された。