最終決戦9 sideN
「飛んでくるから気を付けろよっ」
話にだけは聞いていた、第1騎士団最終決戦部隊。コンセプト的には陛下に仇なすものの頭を狩るそれだけのための部隊だ。使い方は簡単だ、ブースターに火をつけ、後は推力任せで滑空し後方にいるであろう指揮官を狙う。それだけ言うのは簡単だが空中で方向の制御ができなかったり、ブースター自体がかすっただけで爆発したり、コックピット内のGがひどいことになっていたりとただの自殺兵器なのだが、乗り手の練度も高く最高の奇襲兵と化している、という評価を受けていると聞いた。実際の使用は今回初のようだ、だから何が起こるか分からない。下手したら火の玉が飛んでくるかもしれない。
「と言うか実戦訓練しとけよ」
「秘匿部隊のようなのであまり表だって訓練出来ていないみたいですが、かなり優秀らしいです隊長」
「なんだよその書類の上だけ優秀みたいな評価」
だが初めて見せる隠し玉のごとく効果は絶大のようで、敵の数をも気にせず頭上を飛び越え、それでもなお妨害してくる敵は空中という不利な状態にさせた上で、推力任せでぶったぎると言う荒業で処理していく。だからそれが通った後は。
「混乱してるからな、チバ救援要請、要救助者を拾ってから学生共々後退するぞ」
『了解しました、ですがもう通達済みです』
「勝手にするなよ」
まぁそんなことはどうでもいい、後は無事に逃げ切るだけだが、敵はもうすでに勇み足だ。
『すごい』
学生がそう呟くがすごくはない、ただ変に生き残ってしまっただけなのだ。けど体を休めるにはいい隙だ、備え付けられたドリンクを流し込む。
「なにか聞きたいことあるか」
せっかくなので学生とナカイとして話してみることにする。
『えっと』
「何でもいいぞ」
『あのナカイ騎士の逸話って』
「大半は実話だ」
『そうなんですか』
すごく興奮しているようだが、生き残ったやつらの逸話なんて似たり寄ったりだろう。
『あの戦争の宇宙戦闘の時って』
「あのときか、あの時は死ぬかと思ったな。と言うか戦闘に出る度に死ぬ思いして、安い給料に嘆いて、それでもなお戦闘して、全くなにやってたんだか」
そう考えると今でもなにやってるんだろうか、多少は給料は上がったので少し位はモチベーションは上がったが、上がったところで戦闘なんてしたいわけではない。
「決めてくれよ、騎士長」