2.スイカの親分
なっぱとしっぽくの字のくーたろうがスイカの親分のところに行くと、親分はいつもの指定席のゴミ箱の上で、いつもと同じように寝ていました。
寝息に合わせて鼻ちょうちんが、プクッと膨れては縮みプクッと膨れては縮みしています。
まずは、スイカの親分を起こさないことには、話なんてできっこありません。
「おい、なっぱ。お前がスイカの親分を起こせよ」
しっぽくの字のくーたろうが言いました。
「しっぽくの字のくーたろうさんが、話してくれるんじゃないんですか?」
なっぱは、泣きそうな声で言いました。
「話はするけど、起こすのは知らないよ」
こう言われてはしかたがありません。
なっぱは、スイカの親分を起こすことにしました。
「スイカの親分。スイカの親分」
なっぱは、スイカの親分が怖くて、こそこそネズミが鳴くような小さな声で言いました。
スイカの親分の鼻ちょうちんは、あいも変わらずプクッと膨れては縮みプクッと膨れては縮みしています。
「おい、なっぱ。そんな小さい声じゃ、起きっこないぞ」
しっぽくの字のくーたろうの言う通りです。これじゃぁスイカの親分どころか、耳のいい番犬でさえ起きっこありません。
「スイカの親分。スイカの親分」
なっぱは、さっきよりチョット大きな、けろけろカエルが鳴くような声で言いました。
スイカの親分の鼻ちょうちんは、一瞬膨らんだままふわふわ揺れましたが、結局は元通りにプクッと膨れては縮みプクッと膨れては縮みしました。
「おい、なっぱ。もっと大きな声じゃないと、起きっこないぞ」
しっぽくの字のくーたろうの言う通りです。これじゃぁスイカの親分どころか、用心深いスズメさえ起きっこありません。
「スイカの親分。スイカの親分」
なっぱは、今度はかーかーカラスが鳴くような大きな声で言いました。
するとスイカの親分の鼻ちょうちんが、パチンと割れました。
大きく口を開けてひとつあくびをすると、スイカの親分はじろりとこっちを見ました。
「誰かと思ったら、なっぱとしっぽくの字のくーたろうじゃないか」
「はひ」
なっぱは、スイカの親分が怖くて「はい」と言うところを「はひ」と言ってしまいました。それくらい怖かったのです。
「なにか用か?」
スイカの親分が聞きました。
なっぱは、スイカの親分が怖くて黙ってしまいました。
代わりに、しっぽくの字のくーたろうが言いました。
「オイラたち、顔のひろーいスイカの親分に聞きたいことがあるんです。知っていたら教えてください」
「なんだなんだ? 何が聞きたい。俺様が知っていることなら教えてやろう」
どうやら今日は、スイカの親分の機嫌がいいようです。スイカの親分に怒られなかったので、なっぱはほっとしました。
「顔のひろーいスイカの親分、ウサギの住み家を教えてください」
「いくら俺様の顔が広くても、ウサギの住み家はなんて知らないな」
しっぽくの字のくーたろうが聞くと、スイカの親分はちょっと困ったような顔をして言いました。
それを聞いて、なっぱはガッカリです。
せっかく仲間のウサギに会いに行こうと思ったのに、どこにいるのかわからなければ、会いになんて行けません。
「ウサギの住み家は知らないけれど、知っていそうなねこなら知ってるぞ。何しろ俺様は顔がひろーいからな」
スイカの親分が胸をはってそう言ったのに、なっぱは大喜びました。ひょっとしたら、ウサギに会いに行けるかも知れないのですから。
しっぽくの字のくーたろうが、聞きました。
「それじゃぁ顔のひろーいスイカの親分。ウサギの住み家を知っていそうなねこを教えてください」
「いいだろう。知っていそうなねこを教えよう」
スイカの親分が言いました。
「西のはずれの一軒家に、おばあさんがひとりで住んでいる。そこの家の飼いねこで、『いるのにおらん』というねこだ」
しっぽくの字のくーたろうとなっぱは、顔を見合せました。『いるのにおらん』なんて、変てこな名前です。いるんだかいないんだかわかりません。それに比べたら、自分たちの名前のなんと素敵なことでしょう。
「いるのにおらんは、おばあさんねこだ。俺様の10倍は生きている。この辺じゃ一番の物知りだ」
スイカの親分が言いました。
しっぽくの字のくーたろうとなっぱは、10倍と聞いてびっくりしました。
10倍といったら、それはそれは大変です。
よくわからないけれど、大変なことだけはわかります。
そんなに長生きのねこなら、何でも知っているに違いありません。
「顔のひろーいスイカの親分。教えてくれてありがとうございました」
しっぽくの字のくーたろうとなっぱは、声をそろえてスイカの親分にお礼を言いました。
「なーに、俺様は知っているから教えただけさ。いるのにおらんに会いに行くのなら、自動車には気をつけて行くんだぞ」
そう言うとスイカの親分は、また鼻ちょうちんを作って寝てしまいました。
またまた、おもしろいことになってきたと、しっぽくの字のくーたろうは思いました。
なっぱが行くと言うに決まっていると思いましたが、しっぽくの字のくーたろうは試しに聞いてみました。
「おい、なっぱ。ウサギの住み家を聞きに、いるのにおらんに会いに行くのか?」
「もちろん行きますよ、しっぽくの字のくーたろうさん。行くに決まってます」
しっぽくの字のくーたろうは、楽しくて楽しくてしかたがありません。
「それならオイラもいっしょに行くよ。なっぱひとりじゃ心配だからな」
「しっぽくの字のくーたろうさん、ありがとう」
なっぱはお礼を言いました。
しっぽくの字のくーたろうは、心の中でにゃひにゃひ笑いました。




