「駿馬痴漢を乗せて走る」ということわざがツボにはまってしまったお嬢様の単元
「お嬢様、今日は『ことわざ』を学びましょう」
「結婚式で『切れる』とか『分かれる』とか言っちゃいけないこと?」
「それは『忌み言葉』です。なんでわざわざ難しいほうからアプローチしてくるんですか。今年は午年ですから、馬にちなんだことわざを探してみましょう」
「馬のケツ!」
「いきなり下品なうえに、ことわざじゃないのが来ましたね。でも、近いものはありますよ」
「どんなの?」
「『尻馬に乗る』ということわざがあります」
「ちょっとお変態さんな意味かしら」
「違います。『他人の馬に乗る』転じて、考えなしに他人に同調して軽はずみな行動をとったりすることです」
「ワールドカップのときに渋谷で起きたサッカー応援中の連続痴漢事件みたいなもの?」
「その通りです。『尻馬に乗って尻を触って逮捕』素晴らしいですね」
「そういうのなら私も知っているわ。『馬の耳に念仏』」
「まさにお嬢様のためにあるようなことわざですね」
「あら、そうかしら。そんなにほめられると、ちょっと恥ずかしいわ」
「お嬢様、意味はご存知ですか?」
「馬の耳に念仏を書いておくと、亡霊から姿が見えなくなって簡単にゴーストバスターズ!」
「何か、色んなのが混じってますね」
「いいわ次!」
「それが『馬の耳に念仏』の意味ですね。人の言うことに耳を貸さないとか」
「もっとセクシーなものはないの?」
「お嬢様、ことわざや故事にセクシーさを求めるのは無茶ですよ。あ、お嬢様が好きそうな単語が出てくるのはありますよ」
「お変態さん?」
「『駿馬 痴漢を乗せて走る』です」
「すばらしいわ! 先生、これはブックマークものよ! 痴漢がばれて現場から自宅までタクシーで必死に逃走する中年サラリーマンが脳裏に鮮やかに浮かび上がるわ」
「まあ、痴漢がばれて逃げるという意味ではないんですけどね。続きもあるのですよ。『巧妻常に拙夫に伴うて眠る』」
「先生、そんなに私と一緒に眠りたいの? 仕方がないわね。どうぞ」
「勝手にそこで寝転がっていてください。さて、意味ですが、立派な馬が愚か者を乗せて駆け、良妻は往々にして凡夫と結ばれる。転じて、釣り合った相手に出会えないとか、世の中うまくいかないという意味です」
「両方とも男が阿呆なのね」
「このことわざはそうですね。逆に女性限定なのもありますよ」
「例えばどんなの?」
「『悪女の深情け』とかがありますね」
「私は悪女じゃないから関係ないわ。きっと私は良妻になるから、私と先生が結婚すれば、巧妻常に巧夫に伴うて眠るになって完璧よ」
「はいはい。将来『馬脚を現したな!』とか言われないように頑張ってお勉強しましょうね」
「そろそろお昼の時間だよ!」
「お嬢様の『馬耳東風』にはとっくに慣れました」
こうして迎えるいつものお昼時。




