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世界を支配する者。  作者: 投げるラー油。
第二章 轢死事件~Murder~
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第十話 最高の地位に立つ男

絶対能力者レッドゾーンのおじさん!」

 その身体は外から見た感じでは特に大きな怪我はないようだが、内側はかなり大きな傷を負っているようで彼は苦しそうにしている。

「おじさん、か。こうみえても二〇代何だがな」

 彼は無理しているように苦笑する。

「俺の名前は桜空時宗おうそらときむねだ。桜空と呼んでくれ」

 絶対能力者レッドゾーンのおじさん、という呼び名が気に入らなかったようで桜空は自己紹介する。

「で、能力は『空間交換ステートチェンジ』だ。もちろん絶対能力者レッドゾーンだ」

 すると桜空は黙り、神谷の顔を見た。

「あ、俺か。すまない。俺の名前は神谷陽斗、能力は『時間延長ロングタイム』の低能力者ブルーゾーンです」

「えっ―――」

 神谷も反射的に戸惑うが、どういう能力かが分からなかったのかな、と解釈して。

「あ、ちなみに『時間延長ロングタイム』は珍しい方の能力で、周りの時間を遅くできる能力です」

 すると、桜空はポカーンとした顔を笑い顔に変え。

「はははは!低能力者ブルーゾーン絶対能力者レッドゾーンに挑んだのか!自殺行為だぞ!ははは!」

 桜空は笑い続ける。

「で、でも。俺はアイツを追い続け―――」

 しかし、桜空は神谷の言葉をさえぎるように。

「でも、俺は勇気のある奴は好きだぞ」

 といい、神谷の肩に手を置いた。

 やがて肩から手を離すと同時に表情を変え、話を変える。

「それで、神谷くん。君は屋上に行くのかね?」

 神谷の本心はイエスなものの、事実上足を引っ張りそうで三秒間黙るが。

「はい。俺はアイツを追い続けていましたし」

「そうか」

 桜空は短く答え。

「知ってるか?神谷くん。彼ら対能力者用戦闘部隊マスタートループスの中には意外にも二人しか絶対能力者レッドゾーンはいないんだ。一人は『一刀両断アブソルートリー』、もう一人は『位置交換フィールドチェンジ』だ」

 神谷は少し疑問を持つ。

「え、そいつらの能力はよくわからないが、エクスパルジョンを捕まえられないのか?」

「もし捕まえられるんだったらとっくに捕まっているよ。『位置交換フィールドチェンジ』はあまり強くはないからわかるが、『一刀両断アブソルートリー』は対能力者用戦闘部隊マスタートループスでリーダー的存在だ。しかし、それも飽くまで物理的な攻撃なため、当たらないのなら意味はない。とにかく、対能力者用戦闘部隊マスタートループスにはアイツは倒せないんだよ」

 そうか―――。

 神谷は少し落ち込むが、目の前には桜空時宗という名の絶対能力者レッドゾーンがいる。いや、でも、しかし、彼は事実上エクスパルジョンに負けている。それが、彼にも奴には勝てないという事実を証明している。

 しかし、桜空は神谷の心を読んだかのように。

「でも、俺の能力ならアイツはすぐに捕まえられる」

「えっ。でも、負けたから今、こうなっているんでしょ?」

「いや、俺もできるだけ傷つけないように手加減したのが原因だ。それに、牢屋へ空間交換しようにも場所がわかんないからね。いや、そもそも絶対能力者レッドゾーンの犯罪者の牢獄は一般には公開されていない。ま、俺の敗因はこんなもんだろうね」

 すると神谷はある思い込みと事実の違いを思い出し、話は変わるが。 

「あれ、そういえば桜空さんの能力って、『瞬間移動テレポート』じゃないんですね」

「え、ああ。確かに人の位置がかわってたからね。確かにそう言う使い方はあるけど、正しくは空間の入れ替えだね。『瞬間移動テレポート』は物体の位置を変えるけど、『空間交換ステートチェンジ』は空間の位置を変えるから、物体の形は変わらない、という法則はないんだ」

「ってことは―――」

「ああ、アイツの身体から心臓を取り出そうと思えば能力を発動するだけで可能ってわけだ。まぁ、死刑は避けられない者だとしても勝手に殺せば殺人犯になっちゃうからそれはしないけど」

 意外と惨いこと言うんだなぁ、と神谷が思っていると。

「でも、『瞬間移動テレポート』でも侵入禁止エクスパルジョンを殺すだけなら随分何だよ」

 神谷は耳を驚く。

「だって釘を一本、アイツの身体に埋め込めばいいだけだ。それに、かなり強い力を持つ『瞬間移動テレポート』の超能力者マスターなら、これも身体の臓器をとりだすのも可能だよ」

 神谷の頭の中が『驚』という文字で埋め尽くされる。

「つまり、アイツは弱いんだ。彼自身は自分を最強だと思いこんでいるが、実際は少なくとも十何人かは国内に倒せる者はいるんだ。ただ、そいつらに勇気が無いだけだ」

 ふーん、と神谷は考える。

「それじゃ、俺たちは行くとするかな」

「いや、桜空さん。ちょっと待って下さい」

 神谷は行こうとする桜空を止めた。

「え、どうしんだい?」

「いや、俺の知りあい―――っていうのかな?天斗っていう超能力者マスターを呼んでおきたいんだ。あ、あの時に俺の隣にいたあの人です」

 桜空は少し考えてから。

「理由は分からないけど、いいよ。でも四五分ごろにはこっちに来いよ」

「分かったよ」

 すると桜空が能力を発動し、放送局の中に居たはずがいつの間にかに放送局の入口に立っていた。そとを見ると、理不尽な好奇心を持つ住民らが集まり、高い位置に張りつけられているモニターを視線を集めていた。

 モニターへ視線がいって、神谷たちには気づいていないよう。

 神谷も住民たちの近くへ行くと、モニターを見た。すると、そこには屋上に立つエクスパルジョンが映されていた。どうやら撮影はスタッフを脅して撮らせているのだろう。

『誰もこねぇのか?』

 奴は左手で頭をかきながら、大きくあくびをする。

『つまんねぇなぁ。ちょっと昼寝すっか』

 剛という名の彼はフェンスを背もたれにして目を閉じた。

「もう少し待てば、お前はあっという間に牢屋いきだ」

 神谷は呟くと人ごみを去った。

「俺はここで待っているからなー」

 桜空は人ごみの中で神谷に手を振って言った。


 とりあえず、神谷は公園に向かってみたものの、やはりそこに天斗はいなかった。他を探すといっても家も分からないのでは探しようがない。

 そうだ、と神谷は右ポケットから携帯電話を取り出し、地図を開いた。そして『マスタートループス』とうちこむと、一瞬にして平央区の対能力者用戦闘部隊マスタートループス関係の施設に逆三角形の印がついた。

 ついた。ついたのはいいものの、印が多すぎて何処にいるかが特定できない。

 特定できればそこにいる可能性もあっただろうが、これではいるとしてもそこへたどり着くのに時間がかかりそうだ。

 神谷は仕方なく携帯を左ポケットへ入れた。右ではなく、左に。

 すると、神谷の手になにか紙のような物触れた。

「なんだ?」

 神谷はその紙を取り出し、ポケットに携帯を入れてから四つ折りにされた紙を見た。

「あっ」

 神谷はすっかり忘れていた。

 ズボンのポケットに入れられていた紙は、天斗から預かった電話番号の書かれた紙だった。

 よし、と神谷は再び携帯を取り出すとその電話番号を打ち込んだ。プルルルル、プルルルルと電話が鳴る。

 呼べなかったら仕方なく天斗がいないところで奴を捕まえることにしようと思ったが、どうやら上手くいきそうだ。

 すると、電話が繋がり。

『もしもし、どちらですか?』

「俺。神谷だ」

『あ、なんだ。アンタか。で、なんのようだ?こんな時間に』

「エクスパルジョンを捕獲できそうなんだよ!」

『え―――』

 天斗は信じられない、というように呟いた。

「来い!あの絶対能力者レッドゾーンのおじさんが捕まえられる、と」

『わかった。すぐ行く。どこに行けばいい?』

「おまえんちテレビねぇのか?日本テレビの放送局だよ」

『わかったすぐに行く』

 そこで電話は切れ、ピーピーと鳴った。

 どうやら天斗は直接放送局へ向かうようなので神谷もそちらへ向かうことにした。

 やがてたどり着き、桜空と再開した。

「戻ったぞ」

「あ、思ったより早かったな」

 桜空はモニターを見たまま言った。

「それで、アンタのお友達は?」

「今からこっちへ向かう、とだけ」

 しかし、桜空はモニターから視線を動かさない。

 どうしたんだ?と神谷もモニターを見た。

 すると、エクスパルジョンは。

『もう一回言う。あと一〇秒カウントするうちにこいや。来なければ待つのも面倒だし、日本の支配を始めるぞ』

 それを言うと、剛はカウントダウンを始めた。

「どうやら、君のお友達を待つ時間はなさそうだ」

 そういうと、桜空は能力を発動した。

『八、七、六―――』

 瞬間、機械から聞こえていた剛の声が現実世界のものとなって耳へはいる。気がつけば、そこは放送局の屋上だった。

「四、三。お?あらあら勇気のある勇者様が現われたじゃありませんか、って……」

 神谷と桜空を確認すると、彼は大笑いし。

「おめぇら、まだ懲りねぇのか」

 一つ大きく息を吸うと、女性司会者の真似をしたような声で。

「残念ながら皆さん。彼らは勇気だけの力なき者たち。期待はしないほうがいいですよー」

「なら、お前は思い込みだけの力なき犯罪者だな」

 桜空がボソリと言った。

「ああ?」

「そうさ、お前は最強ではない。なぜなら、こいつ《おうそら》が真の最強だからな」

『第二章 轢死事件~Murder~』 ―完―

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