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格差恋情  作者: 桜華
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お付き合いにいたるまで5

櫂くんの言う「お付き合い」とは、どのような行為をさすのだろうか。

それはどうにかして、他の人に隠し通すことができるのだろうか。


響子は現状を考える。


「お付き合い」に返事した覚えはないけれど、あのテンションの櫂くんだったら、おそらく承諾したようになっている気がする。

その認識を覆すような身の程知らずの「お断り」をするような度胸は響子にはない。

それならば、彼のテンションが下がり、響子に「失望」するか、他の誰かに恋するまで、なるべくおとない「お付き合い」をしていくほうが簡単な気がする。


ただし、それは誰にも気づかれないという前提のもとでだ。


あの絢爛豪華な過去の「彼女」たちのリストに自分の名前が加わるかと思うと、響子の胃はズーンと重くなる。レベルが違いすぎて、自分の名前が悪目立ちすること間違いなしだ。

一度リストに加わってしまえば、おそらくは卒業するまでその件で噂されることは逃れられない。

もちろん噂とは風化するものであるが、どれくらいの期間で風化するかもわからないし、一度埋まった地雷がいつ再び爆発するのかとびくびくしながら学校生活を送るのも、あまり好ましくない。


「お付き合い」の状態について、櫂と話あう必要があることは明らかだった。


明日、朝一番で話そう。


櫂の携帯番号やメールアドレスなど、もちろん知らない。

問題は、櫂の呼び出し方だが、玲香に頼めば問題ないだろう。

日常的に生徒会のことで呼び出したりし合っている玲香ならば、全く目立たないし、その玲香に金魚のフンよろしくくっついている響子も普段と別段変わらない風景だろう。


そうなると、玲香には今日のうちに根回ししておいたほうがいい。

明日教室で話そうものならば、恐ろしいテンションで皆の注目を集めてしまいそうだ。

もちろん玲香は響子のいわゆる「片思い」が成就したことを、喜んでくれるのだろうが、その喜び方を思うと響子の背中に再びいやな汗が浮かぶ。


だが、どう話を通したらいいのか。

玲香に今日の件を話した時点で、櫂くんを人前で呼び出す権利を響子が獲得したとみなすだろうし、人前でいちゃいちゃすることは嫌いな玲香だが、恋人同士である事実を隠すのは嫌いな彼女の主義は響子がよく理解するところである。

そもそもそんな「彼女の権利」などいらない響子の心情を話すには、玲香と今まで行ってきた「恋バナ」を否定しなければならない。

それは玲香との友情を壊すことになりかねない。そんなのはいやだ。


「恥ずかしい」などと理由をつければ、玲香は堂々と櫂くんの教室で「あんたの彼女が話しあるって~」などと大声を上げかねないし(というか、他の友達のときに、それをやったのを知っている)、手紙を託すなどということは、手紙という物証が残る時点で候補から消える。


やはり、櫂とお付き合いすることになったことを打ち明けた後、その事実を公表するのをタイミングを計りたいなどと理由をつけて口止めし、メールアドレスと電話番号を舞い上がってお互いに交換するのを忘れた、とでも言えば問題ないだろうか。

まあ、交換するのを忘れたという事実は確かだろうから、問題ないだろう。


電話番号ゲットしたら、この件について、櫂くんと話し合いを行うのがベストだろう。

学校で玲香に呼び出してもらう危険を冒すよりも安全な気がする。

うん、これ以上櫂くんのテンションの暴走も怖い気がするし、ちょっとテンションを下げる方向でなんとか話せないだろうか。

あの嬉しさ全開の照れた表情を見なければ大丈夫な気がする。


それでも、なんだか勇気がでなくて、玲香への連絡を夕飯後にしようと、響子はリビングへ行くことにした。

ご飯を食べながら作戦の詳細を考えるのが一番だ。



…その選択を2時間後に激しく後悔することになるのだが。


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