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格差恋情  作者: 桜華
2/16

お付き合いにいたるまで2

「響子さん、昨日教室で玲香と僕のこと話てたでしょ?」


響子がまさしく冗談のネタとなることを回避するための捨て台詞を吐こうとしたその瞬間だった。

生徒会長が爆弾を落としたのは。


「へ…?」


そのときの会話に、大いに心当たりのあった響子は、情けない声を上げてまじまじと生徒会長を見る。

背中にいやな汗がうかび、心臓が鼓動をとめる。


そんな響子の様子に気づかないのか、彼は視線をそらす。

頬は赤く染まり、年相応に照れた様子の彼をファンが見たならば、卒倒するものが出そうだ。


「嬉しかったなぁ。まさか響子さんと相思相愛だなんて、思ってもみなかったもんだから、そのまま教室に乱入しようかと本気で思っちゃったよ。

まあ、そんなことしたら玲香になにを言われるかわからないし、ぶち壊しにされそうだから、必死で耐えたんだけどね。

やっぱりさ、告白のときは二人きりがいいし、ゆっくり話したりするには、邪魔のはいらないところがいいじゃない?

今日臨時会合がコアメンバーであったんだけど、必死でリスケしちゃったよ。」


生徒会長の日ごろのクールで優しげな表情はどこにいったのか、口はにやけ表情が緩みまくっているのがわかる。

まさに恋する男子の素直な喜びの感情の発露である。

首筋をがしがし掻いているのは、照れ隠しのそぶりなのか。


ま、まずい…。


響子はますます、いやな汗が背中をぬらすのを感じる。


昨日の放課後の会話。

それはいわゆる玲香から持ちかけられた「恋バナ」というやつで。

生徒会副会長というこの学校のツートップの一角を占める響子の親友は、美人で明るい人柄で人気があるにもかかわらず、非常に恋に落ちやすいキャピキャピした性格をしており、彼氏が途切れることなく交代していくまさに青春を100%謳歌している人物で。

そんな玲香の大好物といえば、新しく発見してきたかっこいい男子の話であったり、自分の恋の話であったり、自分以外の恋の話であったりする。


響子も始めは玲香に好きな人なんかいないと、つっぱねていたのだが、それで納得するような玲香ではなく。

ありとあらゆる機会に追求されるその状態に耐え切れなくなった響子は、ついに生贄を差し出すことにした。


つまり、特に強い恋心をいただいていたわけでなく、ただ普通に「かっこいいよね」と好感をもち、他の女子とともに観賞させていただいていた生徒会長をターゲットにしたのだった。


生徒会長をターゲットにしたのは、理由がある。

その最もたる理由が「絶対に成就しない」自信があったところである。

つまり、ありとあらゆる女子から狙われているような生徒会長を自分の恋の対象とすることで、接近(あのファンを押しのけて?)、観賞(その他大勢にまぎれてしまえば、めだたないよね)、告白(いやいや、絶対に無理でしょ。振られるだけだって)などなど、女子高生の恋愛において求められるいろいろな行為を時には理由をつけて拒絶し、時にはゆるーく行い、玲香の「恋バナ」欲求を満たすいいターゲットとさせてもらったわけである。


もちろん王子様な彼を相手に、いろいろな夢を玲香と語るのは楽しかったし、きゃぴきゃぴ言いながらも現実生活に全く影響を与えることないその状態は響子にとって、とても心地のよいものだった。


それに恋というジャンルにおいて尽きることのないネタをもつ玲香と話す場合、90%ぐらは彼女の話を聞いてればいいわけで、響子はその話を聞くだけで、自分の学生生活の恋愛部分を満たされているのを実感していた。


そんなターゲットを1年の夏ごろに早々と玲香に贈呈し、淡い恋心とも呼べないようなほよほよした感情を、玲香の望むラッピングで包んで提供し、3年の春まで過ごせた響子は、誰かにその「恋バナ」を聞かれるという状況を全く想定していなかった。


いや、別に聞かれてもいいかな、とは思っていた。思っていなければ、あんな教室などという無防備なところで、声を落としていたとしても話はしない。

どうせ誰かに聞かれても、生徒会長へ恋する女子など全く珍しくないわけで、まあ多少「野崎さんて思ったよりもミーハーだったんだね」ぐらいに思われる程度だろうとわかっていた。

その情報がたとえ学校で共有されようと、本人の耳に入ろうと、全く響子の学校生活に影響を及ぼすことはないと、確信していたのである。


それなのに、なぜだろう。


生徒会長のこの反応は、響子の想像を超えた、全くの異常事態であった。

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