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格差恋情  作者: 桜華
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お付き合いにいたるまで1

「お付き合いしよう」



何故か100%の自信とともに告げられた言葉は、響子のなかで理解されることなく素通りしていった。


「え…えっと…?」


状況についていけず思考停止状態に陥りながらも、告げられた言葉の余韻を残したままの沈黙の空間がとても恐ろしくて、響子は意味のない言葉を発する。…がその後を続けることが出来ない。


今聞いた言葉はナニを意味するのだろう?

いや、そのままの意味なら人生初の告白。私にもやっと定番の青春イベント発生なのね、となるところだが…。


おかしい、よね…?


ともすれば、17歳の女子高生にとってオイシいシチュエーションに、理性ではなく軽率な感情が顔をにやけさせるのを必死でおさえつつ、真っ白な頭に現実を認識させようとする。



だって、あり得ない。


目の前にいるそのセリフを告げた彼は、この高校の生徒会長で。

学年どころか学校外にもファンがわんさかいるぐらいの、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、性格良し、家柄良し、の正にどこの少女マンガのヒーローそのものというテンプレな人で。


もちろん、生徒会といっても何の職務にもつかない定期会合及びイベント時のヘルプメンバーのような存在でしかない響子とは、ほとんど挨拶以外の言葉を交わしたことなどないし。


3年間一度もクラスが一緒になる幸運を享受したことなどないし。


はたまた響子が彼の目を引く程の女性かというと、残念ながら美人でもなければ、人脈の広い人気者でもなく、むしろ人見知り気味の暗めな普通女子なわけで。


響子は、何で冒頭のような発言が彼の口から出てくるのか、全く理解できなかった…。







しかも、あの自信はなに?

まあ、彼の告白を過去に断った猛者などいないだろうけど、それでも響子の気持ちを聞くわけでもなく、交際のお伺いでもなく、なぜに、受け入れるのが当たり前のような提案の形なのだろうか…。


と、ここまで考えて響子は一つの可能性に思いあたる。

すなわち、



私に言ったわけじゃなく。たまたま側にいた私の耳に入った。

うん、それなら十分納得できる。

それならば、彼が本来告白したかった人物が響子の後ろにいるはずで、完全なお邪魔虫のこの状態をなんとかしなければならない。

さっさとここから立ち去るのがスマートな対応であろう。


くるり、ときびすを返した響子は、自分が本当にパニックを起こしていたことを知る。

そう、ここは生徒会室で。

会合のない今日は完全に二人きりの状態だったのだ。それは響子が知っていた事実。

再度くるり、と生徒会長へと向き直る。

彼にとって響子のパニックなど完全に想定内であったようだ。

にこにことした笑顔は、先ほどの台詞を告げた時とまったく変わらない。ただ、瞳に宿る光が響子の反応を面白がっていることを表しているのみ。


視線が合った瞬間、響子の脳は先ほど言われた言葉を理解する。理解した瞬間、真っ白だった頭は湯が沸いたかのように沸騰し、その熱は響子の顔を朱に染め上げた。


「な、…なん、で…?え、えっと?え…」


おたおたと狼狽をあらわにする姿を見ながら、先ほどの表情を変えない生徒会長の様子に、響子は頭のすみの声がだんだんと大きくなってくるのを感じた。


…これって、冗談だよね?ただからかわれてるだけ。

だったら、狼狽している状態を見せるのはマズイのでは?

後で影から見ている誰かに、いいネタ提供するだけ。


じゃあ、響子は冷静にならなければいけない。

暗めな普通女子が、実は心の底でこんな夢見る乙女の状況を望んでいたなんて誤解でもされたら、非常に屈辱的である。

身の程知らずなどと思われるのは、はなはだ心外である。


だから、この場合の正解は「なんか、冗談にうまくのれなくて、すみません」だろう。

普通の顔をして立ち去るのが一番。

うん。


急速に熱の冷めていく頭のなかで、この事態の解決方法までいくと、響子は口を開いた。

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