表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

12-1:最大の信頼

 暗闇からゆっくりと意識が浮かび上がる感覚がした。

 目を開ける前から身体が重く、魔力を長時間流し続けた両腕は筋肉痛がひどいことが分かる。


 誰かに手を握られている。この大きな手は……。瞼を上げるとそこにいたのは、案の定。


「クラウド」

「クレア! よかった、目が覚めて……!!」


 まただ。またあの真紅の瞳が私を優しく見守ってくれている。

 クラウドは私と目が合うなり、安堵したように息を吐いた。周りをよく見れば、ここは別邸の私の部屋。


 クラウドに握られている手が温かい。きっとずっと握ってくれたから彼の体温が移ったのかも。

 あの怪力の彼がこんなに優しく私の手を握ってくれる。それが彼にとってどんなに難しいことか。大事にされている感じがして胸が熱くなる。


 ……って、ときめいてる場合じゃない!


「クラウド、レインは!? レインはどうなったの!?」

「待っていてくれ、すぐに連れてくる」


 連れてくる? ということはレインも目を覚ましたの?

 私が尋ねる間もなくクラウドは部屋を出て行った。焦る気持ちを抑えながら彼を待っていると、またドアが開く。クラウドが「少し驚くかもしれないが」と前置きを置いて部屋に入ってきた。


 驚く? 私がレインに? 一体どうして?

 訳が分からず首を傾げると、私は数秒後にその意味を理解する。


「…………レイン?」


 思わず石になってしまった。見惚れてしまったのだ、レインに。

 何故ならレインの灰色(ダークシルバー)だった髪が雪のような白銀に、瞳が満天の青空のような色に変わっていたから。髪はともかく瞳は……ブルースカイ家を象徴する青空色へと変わっていたのだ!

 

 私が驚いてパクパク口を開閉させていると、レインはゆっくり私に近づいてくる。そして震えながら私の手に触れた。

 我に返った私はその小さな手をしっかり握り返す。その手から確かな体温を感じて、心の底から安堵した。


「レイン、もう大丈夫? どこも痛くない?」

「はい、大丈夫です」


 そう、よかった。私が笑顔でそう言うと、レインの大きな瞳がみるみるうちに潤っていくではないか。


「どうしたの!? やっぱりどこか痛い!?」

「い、いえ、ちがいます。……ながいゆめをみたんです」

「夢?」

「はい。クレアさんやクラウドさん、あとはアウリーさんがぼくのちりょうをしてくれているところを、ぼくはベッドのそばでみていたきおくがあるんです」


 それって……。私はふとあの幼い少年の声をした青い人影のことを思い出す。

 レインは私をまっすぐ見つめて、眉を下げた。


「ごめんなさい」

「ごめんなさい? 一体どうして?」

「ただでさえクレアさんにおおきなおんがあるというのに、ぼくはまたクレアさんにごめいわくをおかけしました……。ほんとうにごめんな──」


 レインが「ごめんなさい」をいう前に私は強くレインを抱きしめる。私の腕の中で彼の身体がふるりと震えた。


「レイン。私はごめんなさいよりありがとうが聞きたいわ。家族に貸し借りはないし、誰も迷惑だなんて思っていない。もう謝らないで」

「…………!」


 レインは私の腕の中で驚いたように私を見上げてくる。大きな目がパチパチ瞬きを繰り返していて、とても可愛らしい。

 しばらくするとレインの瞳からまた涙がこぼれそうになっていた。慌ててその涙を指で拭ってあげると吸い込まれそうな青空色の瞳が私をまっすぐ貫いて。


「ぼくをたすけてくれて、ありがとうございます。……その……お……お──()()()()()


 その瞬間。私はまた石になってしまった。

 レインの言葉の意味を理解した時には既に私の瞳から涙がこぼれていた。子供に「お母さん」と呼ばれることは子供からの最大の信頼にほかならない。


 レインと出会ってから喜びや悲しみ、感動……スカー公爵家で失った──私が人間として持っていたはずの大切な何かを次々取り戻していくようなそんな感じがする。

 この子は本当に私の宝だ。心からそう思う。


 でも──


 ──『親がいないお前が立派な母親になれるわけないのにな!』


 しつこいくらいにヘイルの言葉が頭をよぎった。呪いにも近いこの言葉にずっと胸を痛めつけられている。

 私なんかが本当にこの子の信頼を受け取ってもいいのだろうか。少しだけ怖くなった。


 ふとクラウドと目が合う。クラウドは微笑んで、小さく頷いてくれた。

 ……不思議ね。彼のその仕草一つだけで、私はようやく呪いを打ち払ったような気分になれる。


「あの、おかあさんと、よんでもよかったでしょうか?」


 黙り込んでいる私にレインは不安げな様子だ。

 私はより強くレインを抱きしめる。


「──なにいっているの、当たり前じゃない! 私はもうあなたの母親なんだから! ああもう、レイン、大好き! 可愛いっ!」

「うわっ」


 感極まってレインにぐりぐり頬ずりすると「それははずかしいです」と、か細い声が聞こえてきた。

 でも頬を離すと、少しだけ残念そうに上目遣いをするレイン。うーん、この世で一番かわいいっ!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ