表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/21

11-1:共に守る

 それから私達はすぐにレインの治療を開始した。クラウドは気を利かせて部屋を退出してくれるようだ。

 彼や使用人達が部屋を去ってドアが閉まる音がして、それが合図だったかのようにアウリーが服の袖を捲った。


「じゃあ、治療を始めるよ。まずは僕の治癒の魔力を込めた指で魔力回路に触れてみる。レインの魔力に受け入れてもらえればいいんだけど……」


 アウリーが魔力を込め、優しい翡翠色に輝く細い指をレインの腹に這わせる。

 その時、レインの顔が歪んだ。「うう……!」と唸り始めてかなり苦しそうだ。それを見たアウリーが眉を顰める。


「アウリー、どう? 魔力回路に干渉できそう?」

「できると思う。レインの魔力は僕の魔力を無事に受け入れてくれたみたいだ。だけどレインの反応からして、本人はかなり苦痛を覚えるみたい。クレア、メイ。レインの片腕をそれぞれ固定できるかい? ライは両足を。少しでも僕が指を滑らせたらレインの魔力回路が切れてしまいかねない。レインが暴れないように頼むよ」


 アウリーのゾッとするような言葉を聞き、私はしっかりとレインの右腕を掴んだ。ライとメイもアウリーの指示に従う。


 レインの苦悶の表情に既に涙が出そうだった。

 この子の受ける苦痛を私が全て変わってあげることができれば……!! でもそれはできないのだ。


 今は私のできることをやるしかない。

 私は大きく深呼吸をして、レインの腕を抑えていない右手をアウリーの背中に触れる。


「アウリー、私の光魔法をあなたに捧げるわ。何時間でもあなたに寄り添うと誓う」

「ありがとう、僕の太陽ちゃん。君の息子は僕が絶対に救ってみせるよ」


 私の指先に熱がこもる。黄金の輝きを放ち始めた。私の光魔法の魔力がアウリーの身体に染みわたっていくのがなんとなく感じ取れる。


 ──魔法学園時代に発見したものなのだけれど、私の光の魔力に触れた者は限界を越える量の魔力を扱うことができるらしい。


 アウリー曰く私の魔力に触れると日光を浴びた植物の気分になるんだとか。だから彼はよく私を「太陽ちゃん」と呼ぶ。

 まぁ、そんな力を持っているからこそ当時スカー公爵家の当主であり、ヘイルの父親のシリウス様に目をつけられてあんなクズと結婚してしまったのだけれど……。


 でも、だからこそ私はレインと出会うことができたのよね。そして私とこの子は家族になれた! 運命って本当に分からない。


「うぅ……!」

「レイン……ッ!」


 苦しそうに呻くレイン。私はぎゅっとそのレインの細い腕をさすった。私が傍にいるとレインに伝えるために。


 大丈夫よ、レイン。もうすぐ……もうすぐ楽になれるわ。アウリーがあなたの魔力回路を治してくれるから。

 早くその小さな身体を抱きしめてあげたい。よく頑張ったわねっていっぱい褒めてあげたい。美味しいものをお腹いっぱい食べさせてあげたい。だからそのために私は──私の魔力でアウリーをサポートしてみせる!


 そう強く決意を固めていたのだけれど、レインの治療は私達の想像以上に長丁場になってしまう。




 アウリーが治療を始めて──()()()が経過した。


 


「うぅ! はぁ、はぁ……うぅううう!!」

「…………ッはぁ、はぁ!」


 レインの苦痛の声は止まない。長時間魔力を行使しているアウリーも酷く汗を掻いて、息を荒げていた。そんなアウリーの汗のふき取りや水分補給をメイが行ってくれている。

 アウリーに光の魔力を流しているだけの私でも汗を掻き、腕に力が入らず、鼓動が異常なほど早い。体温が異常に熱いのが自分でも分かった。そしてその状態が己の身体に非常によくないことだということも。


 でもここでやめればアウリーの魔力が尽きてしまうだろう。そうなったら今までの努力が水の泡になってしまう。私の光魔法を、止めるわけにはいかない!

 しかし身体が正直なもので限界がきつつあったのだろう。一瞬、眩暈がした。すぐに我に返ったけれど、激しい頭痛に襲われて再び気を失いそうになる。


 これは魔力切れの症状だ。今すぐに魔力供給をしなければならない。この五時間で私はこの魔力切れを何回か起こしていたが、アウリーが用意してくれた魔力供給用のポーションでなんとか今まで頑張って来れた。

 私はライに声をかける。


「ライ! お願い、魔力供給のポーションを私に飲ませて。限界がきたみたい!」

「は、はい! 承知しましたッス!」


 その時だった。


 レインが一際大きな悲鳴を上げる。同時にレインの心臓から激しい衝動波のようなものが発せられた。

 その場にいた全員がその波に部屋の壁へ押し出されそうになる。私は体が傾き、転倒しそうだったがなんとか踏ん張った。


「なに!? 今のはなに!?」

「レインの身体が限界みたいだ。身体が治療に耐え切れずに魔力の暴走が始まりつつある! 治療を、急がないと!」


 そんな!! ただでさえ限界なのにさらに治療を早めろと!?

 アウリーの身体も既にふらついている。きっと彼も立っているのがやっとだ。

 その上……。


「し、師匠! 今の衝撃波で、ポーションが全て割れてしまいましたッ!」

「なに!?」


 ライが悲鳴に近い声を上げる。慌ててそちらを見れば確かに魔力供給用のポーションの瓶が全部割れて床に散らばってしまっていた。

 ……ちょっと待って! それってつまり私達はもう魔力供給ができないってこと!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ