不定期四隊小会議
【登場人物】
癒月華月(27)
大和帝国特殊機動四隊参番隊隊長。
前隊長が病死した為、隊長になった人。
今回、彼が会議を取り仕切る模様。
小鳥遊英暁とは士官学校で奇妙な縁からつるむようになった。
興味のあることはひたすら実験・研究・解剖、興味のあること以外しない主義のマッドな軍医さん。
父親が北方の国のリエト人、母が大和人のハーフで、淡い紫がかった銀髪に瑠璃色の瞳を持つ容姿は全て父譲り。
生き別れた双子の弟がおり、彼もまた、マッドな女(装のお)医(者)さん。
小鳥遊英暁(27)
大和帝国特殊機動4隊弐番隊副隊長。
若くして少佐という階級に副隊長という肩書があるせいで羨望を集める一方で、謂れのない噂を流されることもある不憫なお兄さん。
ここ最近で流された虫唾の走る噂は、「小鳥遊少佐は弐番隊隊長の馬場大佐の愛人である」というもの。
勿論、そんな噂を流した奴は水責めの刑に処した。
前副隊長を決闘にて打ち破り、その座に就いたという戦闘民族。
中村勇
大和帝国特殊機動四隊壱番隊副隊長。
年齢は大体、孫がいるくらいの年齢。(ふわっとしか設定してなさ過ぎて、詳しい年齢はあまり想像したくない)
顔の感じは翁のお面みたいな。うん、この人は画力がなさ過ぎて絵にも描けないため、ふわっとした設定しかない。
気難しそうに見えて好々爺。近しい子供には飴をあげようとする飴配りおじさん。
藤崎正義、藤崎由自(27)
四番隊の双子の隊長と副隊長。
二人で一つの為、兄弟で隊長と副隊長をしている。
兄の正義が火と地の異能者で隊長、弟の由自が水と風の異能者で副隊長。
一卵性の為、姿かたちばかりか、性格まで似ている。
前の隊長・副隊長両名とも殉死の為、能力で自動的に隊長と副隊長となった。
――琉華19年2月。
美堂暁斗がまだ、特殊機動四隊に引き抜かれる少し前のお話。
特殊機動四隊地下会議室に、5人の男が集結していた。
「――というわけで、不定期開催4隊会議を始めます!」
上座を陣取って黒板の前に立っている、背中の真ん中まで伸びる淡い紫がかった銀髪を後頭部で纏めた美丈夫――特殊機動四隊参番隊隊長、癒月華月が声高に会議の開始を取り仕切る。
何故だろう、壱番隊隊長が不在のこの中で一番立場があるのは、壱番隊隊副隊長である中村勇の筈であるが……。
細かいことは気にしてはいけないのだろう。
「何で癒月が仕切ってんだよ。
つーか、ウチの隊長はともかく、壱番隊のジジイはどうしたよ?」
やはり、癒月が仕切っていることに疑問が飛んだ。
彼は弐番隊副隊長である小鳥遊英暁。
彼は精悍な顔に面倒くさそうな表情浮かべ、それを癒月に向けていた。
「伊集院中将なら、いつものヤツじゃよ」
「サボりやがったな、あのジジイ!!」
英暁に応えたのは、壱番隊副隊長である中村勇。
そう、壱番隊隊長がいないこの場では、会議を取り仕切らなければならない筈の人物であった。
隊長格が二人も会議をサボりとは、先が思いやられる。
ちなみに、弐番隊隊長である馬場正吉は怠惰な性格をしており、小会議をサボるのはいつもの事だった。
「ほらほら~、英暁くぅ~ん、そうカッカしなさんなよ~。
口縫い付けますよ」
「お前も人の事言えるか?」
キャンキャンと五月蠅い英暁ににっこりと笑顔を振りまく癒月。
その表情は笑顔……ではあるが、眼鏡の奥の深い海のような瑠璃色の瞳は一ミリも笑っていなかった。
何なら、本気で口を縫いつけられそうであるが、軽口を叩けるのは同期の英暁だけである。
そんな英暁の呆れたような言葉は見事に無視された。
「えーっと、今、大変困ったことになってましてですね。
今年の四隊への入隊希望者はともかく、引き抜きの方。
一人の美少年をめぐって、四隊内戦争勃発!
スカウトは早い者勝ち、少年の心を掴み取るのは誰だぁ!?――という事でですね」
そう、この会議の主題は、今期引き抜く予定のとある少年兵について。
彼の能力に着目した癒月が3ヶ月に渡る監察の結果、彼を四隊に引き入れてはどうだろう、と話を持ってきたのだった。
癒月の言葉に、英暁が前のめりになってやっと、会議に参加する体制になる。
「ちょい待て、知らない間に話が大きくなってるし。
っつーか何?お前らもしかして、特務隊の優等生狙ってたりすんの?」
「おーっと、英暁君が焦っています!
当然、今までの戦果、訓練の成績、素行……、このままいけば、今年中には中尉辺りの実力が身についている筈……が! しかし!
四隊以外の部隊はゴミカスの集まりに等しい組織だからね。
年功序列優先、手柄は殆ど上官に取られ、士官及び兵士は搾取される……、正当な評価もされずに……、彼の能力だって腐らせている無能集団!!
そんなゴミ溜めのような隊にいては、宝の持ち腐れでしょうが!
彼の輝かしいばかりの能力は、我が隊にいてこそ伸びに伸びるというモノでしょう!
17歳……、成人しているとはいえ、まだまだ可能性に満ち溢れた原石!
そんな彼、美堂暁斗君を、この僕が見逃すとでも!?」
他の組織に喧嘩を売るようなことを言いながら、美堂暁斗と言う少年を上げに上げまくる癒月はそろそろ他の部隊から暗殺命令が出ていそうである。
間違ったことは言っていないが、それを口に出さない品性は欲しかったところだ。
しかし、暁斗の能力を彼の上官が扱いきれていないというのは事実の為、誰も何も言わない。
「っつーかお前は、彼奴の異能歌が欲しいだけだろ」
「おや、バレました?」
「バレました?じゃねぇ……」との言葉は飲み込んで、英暁は次は、目の前に座る肆番隊の双子を見る。
彼らはそっくりの顔に同じ表情――期待に胸が躍ると言いたげな、今すぐにでも殴りたくなるような物だった――を顔に走らせ、英暁を見ていた。
「肆番隊も……、理由は同じか……」
参番隊は医療に特化した医療部隊。
有事の際は戦場を駆けまわり、戦いながら怪我人の治療に当たる。
肆番隊は後方支援・救援隊。
有事の際は国民を優先して救助・支援するのが仕事である。
つまりは両方とも、暁斗のとある能力を欲しがっていた。
「そして、我々は暁斗君を特務隊から救い出すことにしたのです、が!
そこで一つ、問題が浮上しまして!」
「問題?」
癒月の言葉に肆番隊隊長である藤崎正義 がキョトンと首を傾げる。
それと同時に、「で、ありますか?」と彼の双子の弟であり、肆番隊副隊長である藤崎由自も兄とお揃いの表情を顔に浮かべた。
「特務隊の暁斗君は、そこの脳筋馬鹿の従弟なのです……」
「えぇっ!?」
深刻な表情で衝撃の事実を告白するかのように言う癒月に、その事情を知らなかった双子は吃驚仰天。
二人の視線は、自然的に英暁の方へ向いていた。
話題の英暁はというと、飄々としたものである。
そんな英暁に中村は。
「よし、英暁。
お前今から、ちょっとばかし戦争中の国回ってこい。
両陣営落とすまで、還ってくんなよ」
「それ、俺に死ねつってる?」
「死ねと言っとるんじゃない、“お国の為に散ってこい”と」
「おんなじ意味だよ!っつーかいつの時代だよ?」
上官から間接的に「死ね」と言われた英暁は、頭を抱えたくなった。
何で自身の従弟を引き抜くのに、自分が死なねばならんのか。
まだ、孫どころか甥姪の顔すら見てないのに。あと20年は死ねんわ。
というより、その考え方は今は既に化石。
琉華もそろそろ20年経とうという時代に言うべきではない。
その考え方は1930年代――100年以上昔の考え方である。
「お前さんがいると、暁斗救済計画に支障が出るんだから、しゃーねーわな。
お前さんと暁斗の関係を公開する気はないが、知るヤツは知るじゃろうて。
そん時に“美堂暁斗は、自分の家の力を使って4隊に入った”とか言われて困るのは、お前さんよりも暁斗の方じゃろがい」
いつの間にか、「暁斗救済計画」と言う名前が付いてしまった。
何だこいつら、特務隊に親でも殺されたのか?とも思ったが、特務隊は、戦時中には特攻を仕掛けることで有名な部隊。
それで何人の命が今まで散ってきたのか。
それを思えば、彼のように特務隊へ嫌悪感が出ても仕方がないと言えばそうなのだろう。
何より、中村は暁斗を孫の様に可愛がっている。
それならば尚の事、思うところもあるのだろう。
「いや、そりゃそうだけど……」
「それとも何か?
お前はあの将来有望な金の卵をごみ投棄所に放置しておく気かの?
老害しかおらん故に実力も認められず、満足に戦えず、年功序列の保守派の年寄りばかりのあの空間で、疲弊した暁斗が絶望して海外に渡るのを指を咥えて見ておくのか?」
「彼奴、そんな繊細な奴じゃないんだよなぁ」
遂に「ゴミ投棄所」呼ばわりである。
それになにも言わず、英暁は遠くを見るように翡翠の瞳を細めた。
こいつらにもう、何を言っても無駄である。
暁斗への期待値が大きすぎる。
「君みたく、図太い子でもないでしょう?」
「どんだけ会ったことも話したこともない暁斗に夢見てんだよ、お前は?」
「僕にはわかる、あの輝きは繊細君のそれ」
「お前が暁斗の何を知ってんだよ?」
英暁の言葉は尤もであるが、癒月は何一つ英暁の話は聞こえていない。
まだ見ぬ原石たる“暁斗君”への期待で胸を膨らませるばかりである。
それはさながら、有名人へ、または尊い者へ想いを馳せるかのようだった。
「とにかく! 暁斗君は4隊にて保護する!
英暁君と暁斗君の関係については、まぁ、追々考えていこうじゃないか」
「結局、先延ばしかよ!」
「じゃあ、他に何か案があるのかい?」
英暁の言葉に癒月が彼へ眼鏡越しの視線を寄越してくる。
その視線に居心地の悪さを感じた英暁は後頭部を掻いて、投げやりに言った。
「あー……、あんまやりたくないけど、暁斗をまずは准尉で迎え入れて、そこからはそれこそ実力至上主義だろ。
暁斗の昇進には他の人間よりも目標を高く設定して、それを達成できれば昇進、これで良くね?」
「英暁君、君は鬼か……!?
自分の従弟にそんな茨道を歩かせようなんて……!」
「何と言う従兄じゃ」
「大佐……鬼畜すぎます」
「自分の従弟なのに……」
英暁の提案は非難一色だった。
英暁の言葉はつまり、可愛い弟と遜色ない従弟を自ら崖へ突き落すと言っているようなもので、これについては英暁自身も思うところはある。
が、しかし。 なんだ、この彼らの反応。 これでは、英暁が悪者である。
中村から咎められる分には、彼は家族ぐるみで付き合いがあり、暁斗のことも可愛がっているからまだ、分かる。
しかし、他の反応は何だ。
そんなに、まだ見ぬ弟分を気に入ったのだろうか? 何処にそんな要因が?
「あ!? それしかねーがろーがよ!
暁斗を四隊に引き抜いても、他の人間を実力で黙らせる。
実力さえあれば、暁斗の階級は身内贔屓でも何でもねぇって分かるヤツは分かんだろ。
分からん奴は暁斗が実力行使で分からせればいい」
「これに反論できない自分が悔しい」
「まぁ、確かに一理あるわな」
「元々、暁斗君はウチの基準では少尉から中尉くらいの実力はありますからね。
彼が自分の実力に見合った階級になるのもすぐでしょうし……」
英暁の言葉には説得力があった。
彼がそこまで言うのなら、“美堂暁斗”と言う子は、本当に身も心も強い子なのだろう。
そうであれば彼の言う通り、実力で周りを黙らせればいいだけの話なのだ。
“自分の実力は見込まれた通りなのだ”と。
「多少崖から突き落としても大丈夫だよ、彼奴は。
すぐに乗り越えてくるんだから。
ガキの頃からそうだったしな」
そう言った彼の声には、暁斗への信頼が窺えた。
英暁の脳裏には、自身を「兄さま」と慕ってくれる少年兵の姿が掠めて何処か感慨深い。
「じゃあ、暁斗君については、半年以内に引き抜く方向で」
――そして、暁斗は特殊機動四隊小会議の結果、厳しい条件を付けられて引き抜かれた……。
彼らが暁斗を何番隊に入れるのかで勃発した小競り合いはまた、別の話。
ちなみに、世界観的には2030年、現実世界で言う令和~近未来的な感じの時間軸という事で。




