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今日は金曜日、明日はお休み。おやすみ。
何も無い。
好きなだけ寝れるね。
退勤時間をさすアナログの壁掛け時計に目配せを送る。あなたもいつもお疲れ様。
同僚がすぐに席をたつ。早くお家に帰りたい?良いパパ、家には子供がいて奥様が夕ご飯を作って待っている。理想の家庭、羨ましくて欠伸がでる。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。鍵は閉めるので、お先にどうぞ」
ニッコリと微笑む。早く行って私を1人にしてね。
静まるオフィスに青白い蛍光灯の光。
あぁ疲れた。お金を稼ぐのって大変、大変。
早く真っ暗闇のワンルームへ帰らなくっちゃ。
「2番線に電車が到着します、黄色い線の内側へお下がりください。」
わかったわ。
ちゃんとみんなで電車を待って、降りる人を先に通して、席は空いてないね。まぁそうか。みんなで早くお家へ帰ろう。
最寄り駅につくと人混みをかき分けて降りる。到着、到着。
駅前はいつも通り、ほのかな明かり、良い街ね。
あの角を曲がれば私のお家。
真っ暗なワンルーム。
「わぁ、」
びっくりした。
穴が空いてる。
真っ黒。
「え?」
男の人の声、驚いた様な声を聞いてその方向を見ると、おじさんが穴に落ちていった。もう一個空いてたみたい。
スマホ見てたからかな?不注意な人。
マンホールくらいの穴はぽっかりと口を開けてそこにまだある。
危ないなぁ。
マンホールなのかな?蓋はどこにいったんだろう。
プルプルプルプルプルプルプルプルーーーー
また角のところにある公衆電話がなっている。うるさいな。
「はい。もしもし?」
「あら、またあなた?」
「そうだけど、うるさいから何度もかけてこないでよ。」
「つれないのね。週末だから少し話したくなったのよ。ほら、華の金曜日じゃない?」
「明日はお休みね。」
「そうよ、嬉しいわね。」
「うん………。」
でも、楽しい予定は何も無いよ。
休めるだけ良いか。
「寂しい?」
「わかんない。」
がちゃん。
うるさいな。電話を切る。もう家に帰ろう。
「お姉さん、だれに電話かけてたの?その公衆電話、使えたんだね。使ってる人初めて見たよ」
「わかんない」
電話をきると、すぐ側の飲み屋で飲んでいたようなサラリーマンが急に話しかけてくる。気をつけないと穴に落ちちゃうよ。
「わかんないって。彼氏にでも電話かけてたの?」
「かかってきただけだよ」
「へ?公衆電話に電話がかかってきたの?」
「そうだよ、だから知らない人。私はとっただけ。」
「へぇ………」
「おい、絡むのやめろよ、ここ住宅街だろ~」
「あ、あぁ」
もう1人オジサンがやってきて、オジサンを回収していった。穴に落ちるかなとおもったけど、さっきのマンホールみたいな穴はもう何処にもなかった。変なの。落ちていった人は大丈夫かな。
「おやすみなさい」
私はお別れを呟いて家への道に向き直る。
電話、すぐ切っちゃったけど、もう少し話しても良かったかな。
寂しいの?
寂しいかもしれない。
家には、誰もいないし。
話すこともない。
「ただいま」
「おかえり」
壁にかけているポスターの少女が笑いかけてくれる。
今週も疲れたな。
週末はどうしようか?
何度もかけてこないでなんて言ってしまったけど、また話したいな。
だって、話す人なんていないから。
寂しいの?なんてバカにしたみたいに聞くから、切っちゃたけど。
もう掛けてこないでって言っちゃった。また話せるといいな。
寂しいよって言えば、笑うかな?それとも遊びに来てくれるかも?
「うふふ。」
仕事では、電話番だからクセですぐに電話にでちゃうけど、営業さん以外と話すことって、久しぶりだな。
今度は寂しいから、遊びに来てって、お願いしてみよう。
あれは誰だったかしら?




