トラックの前に飛び込んだら転生に成功した
朝起きたらヒヨコだった。
『へ?』って思ったけど俺は賭けに勝ったんだと気づく。
と言うのは、俺は前世の最後に自殺を選んだからだ。
何時まで経ってもうだつが上がらず、50過ぎても底辺生活から抜け出せない。
だからこんな生活はもう嫌だと自殺を決意したんだけど、数週間ほど前に古本屋で見た漫画にトラックに撥ねられて異世界に転生するってのがあったのを思い出し、高速道路の金網を乗り越え偶々走って来たBBAが運転する大型トラックの前に身を投げ出したんだ。
前世の記憶を持ったまま転生できたんだから、ヤッタねって言いたいが此処は何処だろう?
朝ってのはなんとなく分かるんだけど、ただ1人……じゃなくてただ1羽で薄暗い部屋に閉じ込められている。
前後左右に上下からヒヨコのピヨピヨって鳴き声が聞こえてくるから、周り中にヒヨコがいるのは確かなんだろうけど。
此処何処なんだって思ってたら上側が持ち上げられ行き、明るい光に照らされた。
と同時にアームか伸びてきて身体が引っ掴まれる。
周りを見渡すと、前後左右にいたヒヨコたちも同じようにアームに引っ掴まられて、何処かに運ばれて行く。
アームが回転して股をおっぴろげられて総排出腔の形を調べられた。
調べた後、左右に置かれている箱の左側の箱に放り込まれる。
同じ箱に放り込まれているのは……何だよオスばかりじゃないか。
右側の箱に放り込まれているのはメスだけ……えぇぇ! も、もしかして、此処、鶏生産工場なのか?
って事は俺たちオスは、此れから粉砕機に放り込まれ短い一生を終える……のか?
周りにいるヒヨコたちは此れから自分たちが殺されるなんて事を知らず、ピヨピヨ、ピヨピヨと呑気に鳴いているだけだけど、俺は知っているんだ。
せっかく転生できたのに直ぐ殺されるなんて、嫌だー!
高速で回転している粉砕機の上で、アームに吊り下げられている前の箱が傾けられオスのヒヨコが粉砕機に投入されて行く。
続いて俺が入れられてる箱も傾けられ、俺は粉砕機の中に『嫌だー! 死にたくねー!』とピヨピヨ叫びながら落とされた。
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朝起きたらヒヨコだった。
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自殺した男は地獄の刑罰として人間だった頃の記憶だけを授けられ、繰り返し繰り返し何度も何度も、鶏生産工場で生を受けるオスのヒヨコに転生させられていたのだった。